3次救急への問題意識 在宅クリニックで解決―医療法人おひさま会 山口高秀氏(前編)

在宅医療を展開するクリニックで課題となりがちな、24時間体制の構築や地域連携。多職種が連携しながら、医療・介護従事者の負担を減らすモデルとして、おひさま会(神戸市垂水区)が編み出した「おひさまネットワーク」に注目が集まっています。3人のスタッフで2006年に開業し、現在関西・関東で1400人の在宅患者を受け持つほどに成長した同会。
そのノウハウを他院にも広めようと活動している理事長の山口高秀氏に法人設立の経緯、「おひさまネットワーク」の概要、マネジメント論について聞きました。

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3次救急の最前線から在宅医療の世界へ

―そもそもなぜ、在宅医療に取り組もうと思われたのですか。

11414964_876729412403405_1737753460_oわたしはもともと救命救急センターで働いていました。3次救急患者の命を救うため、交通事故の外傷治療に取り組んでいましたが、ある時期から搬送患者に、3次救急の対象とならないような高齢者が増えてきたんです。日本全体として交通事故件数は年々減少していますが、救命救急センターは、けが人が待合室を占めていた風景から、肺炎や、重症化した慢性疾患を抱えた高齢者の姿で埋め尽くされる風景へと変わっていきました。本来であればかかりつけ医のもとに向かうはずが、連絡がつかないからと搬送されてくる高齢の軽症患者もいて、「これは正しい姿なのだろうか」という疑問が募りました。

さらにわたしが問題意識を持ったのは、たとえ救急で対応したとしても、患者さんを引き継いでくれる医療機関がないことでした。あるとき、わたしの祖母が窒息を起こして、救急搬送されてきたことがありました。早い段階で蘇生を行えたので一命は取り留めたものの、困ったのはその後で、後遺症が残った祖母を引き取ってくれる医療機関が近くになかったんです。わたしたちは祖母を在宅で療養させることにしました。当時は在宅療養のための基盤が整っていない状況で非常に苦労しましたが、祖母の看取りを自宅で行ったことで、在宅医療に手ごたえを感じるようになっていきました。

一連の経験から、在宅で医療を受けられるような基盤を自分がつくれば、救急現場で感じていた問題意識を解決できるかもしれないと考えるようになりました。「いつか在宅医療をしよう」と考えていたころ、国が在宅医療を推進し始めたんです。

「ないない尽くし」からの開業

―当初から開業するつもりだったのですか。

理事長の山口高秀氏

理事長の山口高秀氏

最初は勉強もかねて、雇われ院長として在宅クリニックで働くつもりでした。しかし、内定していた法人の分院開設の話が入職前に立ち消えになってしまいまして。その法人の事務長とは意気投合していたのですが、わたしが勤務しないことになったと伝えたら、なんと彼もその法人を辞めて一緒に在宅医療に取り組んでくれることになりました。そして2006年、わたしが32歳の時に開業しました。

普通だったら、看護師やケアマネジャーを採用したり、医療機器も揃えたりした上で開業するのかもしれませんが、開業当初、クリニックにいたのは、わたしと事務長、それから医療事務スタッフの計3人。この体制で患者さんに満足のいく医療を提供するには、工夫が必要でした。

こんなに早く開業するつもりはなかったので、最初は戸惑いましたが、今思えば、あれだけ何もなかったからこそ諦めがついて、次の打ち手を考えられたのかもしれません。

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