病院を発展させたコンサルティングの力―医師への選択、医師の選択【第41回】

著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

 
質問:病院の発展にコンサルティングは不要でしょうか?
※編注:質問に対する「私的結論」を次回掲載します。

わたしは医師としての人生を消化器外科医としてスタートしました。そして、外科医としての腕を磨いていたころは、一人前になるには最低10年の修業が必要だと教わりました。最近、どの分野でも1万時間トレーニングすると一人前になれるという研究結果が出ているようですが、手術など外科医としての実技に関するトレーニングも、一日3時間、1年365日休まずに行うと、約1000時間。そして10年で1万時間となります。

この一人の医師としての修業時代。この研修時代には、医局だったり、病院の先輩医師だったりから、ある時はマンツーマン、ある時はカンファランスなどで、様々なことを学びます。外科医でしたら、メスの握り方や組織の剥離の仕方、さらには術前術後の管理など、学ぶことは山のようにあります。これらを昼夜問わず、学んでいくわけです。

そして、一医師としての技能が備わってくると、次はチームとしての医療上の力を進歩させる必要が出てきます。その時には、それぞれの構成員がチームの一員として力を発揮するように努めるとともに、チーム全体の戦略を確立していかなくてはいけません。この時に強い味方となってくれるのが、外部の力、たとえばコンサルタントだと思います。もともと、日本の医療界ではコンサルタントが活躍する土壌はほとんどありませんでした。しかし、最近、病院機能評価などを多くの病院が受審するようになり、コンサルタントの力が必要になってきました。また診療報酬の改定のたびに、病院経営は難しくなり、かつ変化が求められますが、それに適切に対応していくには、その道に詳しい人の力を借りる必要が出てきます。ですから、現在は病院経営をする時には、いわゆるブレーンを、常に確保しておく必要があるように思います。

“プロ選手”にはプロのコーチが必要

個人の技能、チームとしての力、いずれも一流のものにしていくのには、一流のコーチが必要なのではないでしょうか。ちょうど野球を始めた少年が、最初は父親をコーチとし、次には、その学校の監督などがコーチとなり、そしてプロになった後は、そのプロのコーチを必要とし、そして大リーグで活躍していくには、そのステージにふさわしいコーチを必要とするように。庄内余目病院では、後から振り返ると、この一流のコーチを、コンサルタントとして得ることができました。それが、大きな成功に結びついていたのです。次回、詳しくお話したいと思います。

野末睦(のずえ・むつみ)

初期研修医が優先すべきこと1―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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