2014年度診療報酬改定で明暗!在宅医療は今…

著者:木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)

2014年度の診療報酬改定では、在宅医療にかかわる点数の「適正化」がなされました。「在宅医療は厳しい局面をむかえた」という方もいるようですが、さまざまな工夫によって減収を避けている医療機関も多いようです。在宅医療分野で今、何が起こっているのか。解説します。

2014年度診療報酬改定後、明暗が分かれる結果に

中央社会保険医療協議会(中医協)で発表された調査結果によると、2014年度の診療報酬改定後、「訪問診療に係る収入が減った」と答えた割合は、診療所で41%、病院で40%。一方、「減っていない」と答えた割合は診療所で39%、病院で37%と、明暗が分かれる結果となりました=下グラフ参照=。

Q.2014年度診療報酬改定後、「訪問診療に係る収入が減った」という設問への解答

訪問診療に係る収入が減った」という設問への解答

(2014年12月24日 中央社会保険医療協議会資料より作成)

2014年診療報酬改定における変化

2014年の診療報酬改定で特に大きな影響を及ぼしたのが、同一建物の複数患者に対する点数の大幅引き下げです。同一建物には、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅といった介護系施設などが当たります。

catch1例えば、在宅患者訪問診療料は、通常であれば833点なのに対し、同一建物の場合は特定施設で203点、特定施設以外で103点と大幅減少。在宅時医学総合管理料も通常であれば5000点なのに対し、同一建物の場合は1200点と、4分の1にまで減少しています。

こうした減算の背景には、高齢者集合住宅などの運営業者からの紹介で、複数患者の訪問診療を一度に行い、報酬の一定額をキャッシュバックする“患者紹介ビジネス”の影響が大きいと言われています。施設をまわって効率よく在宅医療を展開していた医療機関にとっては厳しい改定内容となり、介護系施設運営者からも、「この改定を受けて施設向け在宅医療の担い手が減ってしまうのでは」という懸念が声高に叫ばれました。

こうした厳しい状況を打開するために、現場では新たな取り組みが始まっています。

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在支診の間で「地域包括診療料」算定の動きが活発化

地域包括診療料

厚生労働省「平成26年度診療報酬改定の概要」より=クリックで拡大=

2014年度診療報酬改定では、医療機関の「主治医機能」に対する外来点数として、地域包括診療料の算定が始まりました。機能強化型の在宅療養支援診療所(在支診)であれば条件を満たし、月に1度1503点が算定できます=要件は右図参照=。
現在、在支診がこの地域包括診療料を算定するケースが増えています。介護系施設の間でも、付き添いで外出可能な患者であれば、地域包括診療料を算定している診療所へ外来受診させるという動きが出ているようです。

catch32014年の診療報酬改定は、全体的に見渡すと在宅医療にとって逆風が多い内容だったかもしれません。ただ、上記のような工夫によって減収を避けることもできるようです。
厚生労働省は、2014年12月24日の中医協総会で、施設への訪問診療から撤退した医療機関の存在も確かに報告されているものの、必要な医療は確保できていることから、2014年度の報酬改定による在宅医療提供体制への影響は軽微だと報告しています。
こうした結果を踏まえ、2016年度の診療報酬改定においてどのような形で在宅医療が推進されていくのか―。引き続き動向が注目されます。

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木村憲洋(きむら・のりひろ)
武蔵工業大学工学部機械工学科卒。国立医療・病院管理研究所病院管理専攻科・研究科修了。神尾記念病院などを経て、高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授。
著書に『病院のしくみ』(日本実業出版社)、『医療費のしくみ』(同)など。

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