診療エリアは四国に匹敵!北海道から見る地域医療構想の風景

医療機関の機能分化を目指して実現が進む地域医療構想。多くの病院が、地域における自院のポジション策定や、医療・介護資源との連携を模索しています。
しかし、医療機関が少ない地方では、1つの医療機関がさまざまな機能を担わざるを得ず、機能分化が進めづらいという声も―。今回は、四国に匹敵する広大なエリアで地域医療を展開している、名寄市立総合病院の和泉裕一氏に話を伺いました。

170キロの距離を運ばれてくる心筋梗塞患者

―名寄市立総合病院の特徴はなんでしょうか。

nayoro_1全国でも有数といっていいほど、非常に広範な地域から患者さんが訪れることだと思います。

当院が位置するのは、上川北部医療圏=地図中緑エリア=ですが、道北には医療機関が限られており、北隣の宗谷医療圏から170キロかけて心筋梗塞患者が運ばれてくる事態も珍しくありません。町が点在している分、広い地域に人口が分散しているというのも、この地域の大きな特徴と言えるでしょう。
隣接する医療圏からの搬入を踏まえると、当院がカバーしている地域の面積は、四国と同等と推計されます。

地域医療構想にも限界

―病院としての展望を教えてください。

周辺環境も鑑みると、救急に力を入れなければならないと考えています。ただ、一方で気になっているのが、地域医療構想が今度どのように進むのか、です。

当院が急性期に特化していくのであれば、他院には慢性期など、ほかの他の機能を担ってもらい、連携しなければなりません。
しかし、「急性期医療は当院に集約させなければならない」という制度の都合で、数十キロ離れたところから患者さんが外来受診するような事態は、そもそも現実的ではありません。逆に「名寄市の患者さんが療養生活を送る際には、慢性期に特化した遠く離れた医療機関にまで移動しなければならない」という体制にも、名寄市民の理解が得られるかどうか―。
もちろん、広大な面積に分散する患者さんを支えていくためにも、医療機関同士の連携は必要不可欠です。しかし、連携を考える前に、この地域における医療機関の配置は、考慮すべきだと思います。

―地域医療構想で掲げられているような医療機関の機能分化と連携は、医療圏が狭くて資源が集中している地域の方がうまく行きやすいモデルなのかもしれませんね。

nayoro_2そう思います。当院が位置している北海道北部の場合、機能分化と連携を推し進めていくためには、医療機関を結ぶ循環バスや公共交通手段の整備といった、交通インフラも整えたほうが良いでしょう。北海道の行政としても、今回の地域医療構想を通じた一連の取り組みを進めながら、この地域に足りない公的なリソースを見極めていきたいという考えはあるようです。

当院としてもこの距離感を埋めるような取り組みを進めなければならないという問題意識は大きい。2013年からは、診療情報を各医療機関と共有し遠隔診断をサポートする「ポラリスネットワーク」を稼働し始めるなど、独自の取り組みも進めているところです。この地域の特徴をよく理解した上で、この地域に合った形の医療を追求していきたいと思っています。

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