安心感を生み出すカギは「人」の顔? 保険・自費診療を提供する御所南はなこクリニックの情報発信-病院マーケティング新時代(20)

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本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材します。

著者:小山晃英(こやま・てるひで)/病院マーケティングサミットJAPAN Academic Director
京都府立医科大学 地域保健医療疫学
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター 社会医学・人文科学部門

今回は、碁盤の目のような京都の街の中心部・田の字地区の「御所南」にある「御所南はなこクリニック」を取材しました。

田の字地区は、近くには鴨川が流れ、大文字の如意ヶ嶽が見える風光明媚な場所として知られています。平安時代には公家の邸宅や呉服問屋などが建ち並び、今でも暖簾を守り続ける老舗が少なくありません。また御所南は、京都市内屈指のブランド学区。2002年に文科省が最初の「コミュニティ・スクール」に指定した小学校があり、コミュニティ・スクール開校以来、校区内の児童数は約2倍になったそうです。

そんなエリアに位置するクリニックの院長・山内華子先生と、ゼネラルマネージャー・渕野信也さんに広報戦略について伺いました。

医療法人御所南はなこクリニックの山内華子院長

「自費診療で治療の選択肢を広げたい!」と開業を決意

――御所南はなこクリニックを開業された経緯を教えてください。

山内院長:私は大学卒業後、皮膚科に入局し、長く病院勤務をしていましたが、皮膚科領域での治療の幅の狭さを感じていました。にきびやアトピー性皮膚炎の治療で皮膚科を受診される方はいらっしゃいますが、治療後のにきび跡や、アトピー性皮膚による色素沈着を保険診療に適応することはできません。しかし、自費診療なら治療法の選択肢がぐんと広がります。保険診療の枠にとらわれなければ、個々の症状に適した治療法を見つけて、症状の悪化を防ぐことも可能になるのです。

保険診療に自費診療の選択肢を取り入れ、皮膚科領域、美容領域のオーダーメイド治療を実践するために、御所南はなこクリニックを開業しました。患者さんに多くの選択肢を示すことは、開業医の私の役割だと思っています。

――どんな患者さんが多いのですか。

山内院長:成人の患者さんは、女性が多いですね。皮膚科を受診するお子さんも多く、親子で通われるケースもあるので、2階に大きなキッズスペースを用意しています。おかげさまで最近はエリア外からのお子さんの受診や男性の美容皮膚科の利用も増えてきました。

御所南はなこクリニックのキッズスペース

集患施策はアナログからデジタルまで幅広く

――集患に関して、どのような取り組みをされていますか。

渕野:印刷物では、駅構内の看板、地方情報誌や新聞への広告掲載をしています。デジタルでは、SNS(LINE、Facebook、Instagram)とホームページ内の院長ブログの発信、リスティング広告(※)などです。

※Googleなどの検索エンジンの検索結果に、ユーザーが検索したキーワードに連動して表示される広告

――地下鉄で、はなこクリニックの看板見たことがあります! 情報発信ツールは広く使われていますね。手応えを感じるツールはありますか。

渕野:リスティング広告ですね。広告を出すエリアも設定できますし、流入の変化を数字として確認できます。

――広告を出すエリアの設定は、位置情報を用いたジオターゲティング(※)の活用ですね。以前、医学部の学生に、受診するクリニックをどのように探すのか聞いてみたところ、診療科をキーワードとして検索し、サイトで表記されたものを上から選ぶか、地図アプリで近くて口コミの良いクリニックに行く、という学生が多くて驚いたことがあります。

※パソコンやスマートフォンでインターネットに接続する際の位置情報をもとに、ユーザーの現在地に特化した広告・情報配信を行うマーケティング手法

渕野:リスティング広告ではキーワードやさまざまな設定も可能ですが、AI機能があり、自動設定で運用できるので、手間が少ないことも利点です。Facebookの広告なども試してみましたが、Googleなどの検索エンジンの広告の方が流入数は多く、成果が出ていますね。オンラインショップ用のウェブサイトもありますが、そちらもリスティング広告の成果が出ています。

――印刷物の広告効果はいかがですか。

渕野:印刷物は地域に根差した情報発信となりますので、一定の効果はあると思いますが、集患につながるか効果測定しにくいところがあります。また京都という土地柄か、利用者さんの紹介で来院される方もいらっしゃいます。特に美容診療を受けられる方に多いです。信頼に根ざした“人のネットワーク”が集患につながっています。

――地域に根差すには、口コミも大事ですね。患者さん・利用者さんの満足度などの調査はされていますか。

渕野:過去には患者さん・利用者さんへアンケート調査をしましたが、粗品プレゼントなどのインセンティブを用意したため、課題の発見や不満の早期発見といった役割を果たすことができませんでした。現在は、いったん取りやめています。

情報発信戦略の肝は、全員が意見を出すスタッフミーティング

――情報発信はどのように戦略を練るのですか。広報専属のスタッフはいらっしゃいますか。

渕野:デザインを担当するスタッフはいますが、広報専属のスタッフはいません。情報発信の方針決めは、月に3時間ほどみっちり時間をとって実施するスタッフミーティングが肝となっています。経営上の指標などを一方的に報告する場にならないよう、全員が意見を言える環境作りを意識しています。

具体的には、クリニックの課題、課題解決のアイデア、新しい取り組みの運用ルールなどについてディスカッションをします。患者さんの満足度調査を行っていないため、スタッフミーティングで一人ずつ意見や発見を共有することが重要なんです。情報発信の内容とデザインなども、この場で話し合います。

ウェブサイトはWordPressで構築しており、自分たちで更新しています。ブログは毎日院長が更新し、ウェブサイトは、デザイン担当がデザイン作成・構成を担っています。

スタッフミーティングの様子

――スタッフミーティングはクリニックの成長のためにも重要な時間になっているんですね。SNSはどのように活用されていますか?

渕野:SNSは、予約など患者さんと1対1のコミュニケーションツールではなく、情報発信ツールの一つとして運用しています。スタッフが頻繁に記事を投稿しており、季節ごとに出てくるお肌の悩みに寄り添った情報は症例画像を掲載するなど、伝わりやすさを意識しています。患者さん・利用者さんの美容診療の情報源として活用してもらえればと考えてのことです。

美容診療を安心して利用してもらうために…スタッフの“顔”を発信!

――クリニックとして、保険診療と自費診療を併用するメリットはありますか?

山内院長:保険診療で受診し、その後、美容診療を希望される方はいらっしゃいますね。信頼感が形成された上で、美容診療を受けていただけるのは強みだと思います。

御所南はなこクリニックの受付

――一方で、美容診療へハードルを感じる方もいらっしゃいますか?

山内院長:そうですね。不安に感じる方もいらっしゃると思いますので、ご納得いただいた上で実施できるように、施術前に十分な時間をとってカウンセリングをしています。美容診療のリピート率が高いことからも、受診した方には、満足していただけていると感じます。また、どのようなスタッフが働いているのか知っていただくことが安心感につながると考え、Instagramでは、勉強会やスタッフミーティングの様子などを発信し、院内でのスタッフの姿も積極的に発信しています。

――最後に、今後の抱負をお願いします。

山内院長:美容皮膚科の世界は、どんどん新しい器具や薬剤が開発されます。正確なジャッジをして、患者さんに本当にお勧めできるものを提供するために、しっかりと勉強していきたいと思います。

<取材をしてみて>

取材の際、クリニックには、子供から大人まで幅広い年代層の患者さん・利用者さんがいらっしゃいました。クリニックの立地の良さや建物の綺麗さはもちろん、それ以上にスタッフの方の温かみある対応が魅力だと感じました。

保険診療の実施が自費診療への安心感を与えているだけでなく、Instagramでの院内の勉強会やスタッフミーティングの様子の発信もカギだと感じます。御所南はなこクリニックのホームページには、スタッフの顔が出てくる写真が多いです。やはり安心感を与えるのは、「人」なのでしょう。

一度来たら、もう一度来たいと思わせるクリニックです。次は利用者としてお伺いしようと思いました。

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