病院事務職のキャリアパスとは?─10年後に後悔しないための働き方

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病院事務職として、「自分の“市場価値”はどのくらいなんだろう?」と疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。いま、医療のあり方は転換期を迎えています。そして医療機関の生き残りをかけたこの変革のキーパーソンが、事務専門職と言われています。変化をとらえ、希望する働き方を叶えるには、まず自身の立ち位置を客観的に把握することが大切です。病院事務職の役割やキャリアは、どう変化していくのか。キャリアマップをもとに、エムスリーキャリア株式会社のコンサルタントが解説します。

病院事務職の役割は変化している

2025年とその先を見据え、全国の医療機関には診療報酬改定や地域医療構想をふまえた経営戦略が求められています。これからは地域の医療ニーズをふまえて機能分化や連携を進め、計画的に集患しなければ、医療提供体制を維持すること自体が厳しい時代になりつつあるのです。

こうした動きの中で、事務職の役割も変化しています。与えられた業務を漫然とこなすのではなく、組織の中の課題を見つけ出し、院内全体を巻き込みながら解決に導くことのできる人材が求められているのです。特に重視されるスキルは、以下の3つです。

これからの事務職に求められる3つのスキル

(1)経営戦略力
診療報酬改定など医療行政の動きから自院の立ち位置を見定め、具体的な企画・戦略に落とし込むスキル
(2)改革実行力
たとえ前例のないプロジェクトでも、必要なことは学びながら現場を巻き込み、着実に実行していくスキル
(3)コミュニケーション力
分断されがちな職種間の橋渡し役となり、一体となって運営にあたれるよう連携体制を構築するスキル

事務職の存在感が増す一方で、まだ後進の育成が十分に進んでいない医療機関も少なくありません。事務職の業務を外部委託していた病院では特に、院内にスキルやノウハウをもった人材が不足している現状があります。いわば“人材の空白地帯”が生まれているのです。既存スタッフが業務範囲を広げていく必要があると同時に、ハイスキル人材のニーズが急速に高まっています。言いかえれば、事務専門職として自分なりの強みを持つことが、キャリアアップのための大きな武器になるということです。

病院事務職のキャリアプラン、どうやって描けばいい?

事務職のキャリアパス

「そもそも、事務職のキャリアってどう考えればいいの?」という方も多いのではないでしょうか。事務専門職は業務内容が多岐にわたる分、キャリアパスも人それぞれです。明確に定まったルートはありませんが、一般的には上図のようになります。

まず、飛び石的に様々な業務を経験します(STEP1)。ネクストステップとして、スペシャリストとして専門性を高めるか、ジェネラリストとして広範なプロジェクトに携わるか、の2タイプに分かれて経営課題に直結した業務を担うようになります(STEP2)。傾向としては、総務や人事といった院内全体に関わる業務を担うジェネラリストタイプの方が、経営上層部へ進むことが比較的多いです。

マネジメント範囲が拡大するにつれ幅広い知識・経験が必要になるので、将来的に事務長や事務長候補を目指すのであれば、専門領域にこだわりすぎないことが大切と言えます。たとえば施設基準管理の業務では専門的な知識はもちろんのこと、周囲を巻き込む能力が重要になります。自分は特にどの領域で結果を出せるのか、という点を意識しつつ、バランスよく経験を積むことが重要です。

事務職キャリアパス事例(1)

事務職キャリアパス事例(2)

医療の変化に伴い、事務職のキャリアパスもより多様に

医療ニーズの変化に伴い、機能・形態の異なる医療機関へのキャリアチェンジも、徐々にではありますが増えています。たとえば急性期でのベッドコントロールなどの経験を活かし地域包括ケア病棟転換プロジェクトに携わるなど、それまで培ったスキルやノウハウによって、異なる施設形態でキャリアアップを果たすケースもあります。

ただし、慢性期と急性期では業務内容や働き方が大きく異なります。たとえば、急性期では平均在院日数が短いため全般的にスピード感が求められます。一方、慢性期では平均在院日数が長いので、業務のスピード感というよりは、退院患者が出た場合に臨機応変に患者を獲得し、安定したベッド稼働率を維持しなければなりません。未経験の業務も出てきますから、主体的に学び吸収する姿勢が求められます。また、慢性期→急性期へのキャリアチェンジの場合、現職と同じポジションで入職することは難しいでしょう。年収など条件面も含め1からのスタートになる可能性が高いため、ご自身の中で何を優先するのか、あらかじめ整理しておく必要があります。

自分の市場価値のはかり方

まずは客観的に自分の業務の振り返りを

将来のキャリアを考えたとき、自分が現職で適正に評価されているのか、もし転職するならどのような選択肢があるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。そんなときは、まずご自身の業務と上司の業務を照らし合わせてみると、現在の立ち位置を把握しやすくなります。自分はどの仕事を担当していて、その業務は部署全体の何%を占めているのか、という視点を持つだけでも様々な気づきがあるでしょう。

とはいえ、客観的に自分の業務レベルを認識することはなかなか難しいものです。たとえば他院の事務職仲間との会話の中で、「自分がやっていることは他の病院だと部長クラスの仕事のようだ」「幅広い業務をこなしているつもりだったけど、自分の実績として言えることが意外と少ないのでは」などと気がつくきっかけにもなりますから、職場の外で情報交換できるつながりを持っておくことは大事です。また、人材紹介会社のカウンセリングを利用してみるのも一つの手でしょう。

評価される事務職の専門性とは

前述したように、事務職としてキャリアアップするには幅広い業務を担うとともに、自分なりのアピールポイントを持つことが武器になります。重要なのは、職歴ではなく実績ベースで強みを語れるか、という点です。

具体例

△「前職で地域連携室長として2年間務めたので、集患に関しては高い専門性があります」
〇「地域連携室で〇〇という取り組みを通して病床稼働率〇%増、年間患者数〇人増に貢献しました」

事務職の専門性としては、「何年経験があるか」といった職歴よりも、「どの程度の成果を上げたのか」という実績が評価されます。定量的に示すのが難しい場合でも、たとえば電子カルテ導入プロジェクトを主導した実績があれば、「現場職員に受け入れられるよう院内各所に説明するのは大変だっただろうな。院内調整力に長けていそうだ」などと働きぶりが伝わり、高評価につながります。「ルーティーンをこなして終わり」ではなく、その業務が院内で果たしている役割や、どういった結果に結びついているかを俯瞰できると、ご自身の強みや課題がみえてくるのではないでしょうか。

事務職としての市場価値を高めるには

ミクロな目標達成の積み重ねがマクロな目標達成に結びつく

それでは事務職としての市場価値を高め、キャリアアップするためには日々どんなことを意識すればいいのでしょうか。言うまでもないですが、まずはいま任されている業務に、全力で取り組むことが重要です。注意したいのは、受け身で漫然と業務をこなしているだけではなかなか次のステージに進めない、ということです。与えられた業務の中で結果を出すにはどうすればいいか、経営に貢献するためどんな打ち手が必要かを考え、能動的にアクションを起こすことが大切です。小さなことでも目の前の課題に一つ一つ対応していく中で、ご自身にとってのネクストステップやゴールも明確になっていくでしょう。

また、異なる環境下でも成果を出せる人材は非常にニーズが高いです。想定外の異動で自身の希望しない業務を任されることもあるかもしれませんが、それをチャンスと捉え成果を出せるようにしていくことが、ステップアップにもつながります。一方で、「明らかに労働環境が劣悪」「ポストが満席で、昇進も異動も難しい」など客観的にみて自身のキャリアにプラスにならないことが明白なら、自分から求める環境に行くことも考えたほうがいいかもしれません。タイミングを見極めてキャリアチェンジを図るのも選択肢です。

視野を広げるとキャリアも広がる

「このままではいけない気がするけれど、なにから始めればいいのかわからない」という方は、日常的に視野を広げる機会を持つといいでしょう。「私はこの領域しか知りたくない」「この業務だけやっていたい」と視野を狭めてしまうと、チャンスも狭まってしまいます。たとえば書籍やセミナーで経営や医療について学ぶ、医療経営士などの資格を取得する、他院の事務長でロールモデルとなりそうな人を探してみるのも一つです。自分や自院を俯瞰することで次のアクションのヒントが得られますし、モチベーションアップにも効果的です。中には他業種へのキャリアチェンジを果たされる方も。固定観念にとらわれず視野を広げていくことが、結果的には自分らしいキャリア・働き方にもつながっていくと思います。

<協力:原田祐貴、浅見祐樹、雪竹舞子/文・角田歩樹>

浅見 祐樹(あさみ・ゆうき)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
法政大学卒業後、事業系NPO法人にて地域活性化や災害救援に従事。「現場が第一」をモットーに、地域ニーズに合わせた事業開発を行う。その後、エムスリーキャリアに入社し、事務職紹介グループのリーダーとしてサービス改善と新規サービス開発に従事。
原田 祐貴(はらだ・ゆうき)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
大学卒業、ITベンチャー企業に就職。複数の事業を兼任しながら、新規事業の立ち上げを経験したのち、エムスリーキャリアに入社。現在は経営支援事業部の事務職紹介グループにて関東エリアリーダーとして従事。事業に関するメンバーのマネジメントやKPI管理、チーム施策の企画や立案の他、グループの集客を担当している。
雪竹 舞子(ゆきたけ・まいこ)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。

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