病院事務職が成長する糧は「医療スタッフの生の声」 ― 千葉西総合病院 事務部長 中野 康広氏

国内トップの心臓カテーテル治療件数を誇る千葉西総合病院(千葉県松戸市、608床)。
徳洲会グループの一員として、2010年には社会医療法人にも認定されるほどの“優良病院”ですが、以前は赤字により苦境に立たされていました。その立て直しに奔走したのが、事務部長の中野康広氏です。徳洲会グループの生え抜きとして育った中野氏が30年間のキャリアで身に付けてきた、病院事務職の考え方と日々の動きについて聞きました。

病院事務職人生を決定づけた1枚の写真

病院事務職が成長する糧は「医療スタッフの生の声」 ― 千葉西総合病院 事務部長 中野 康広氏―これまでのキャリアを教えてください。
新卒で徳洲会グループに入職後、資材管理から始まり、医事担当として6年間を過ごしました。その後、転勤して医事課長を経験。その頃、法人本部の経営指導員も兼任しており、全国の徳洲会系列病院で医事体制の見直し指導を行っていました。そこでの経験が非常に大きく、いろいろな病院を見させてもらえたことは、その後の業務の広がりにつながっています。

―千葉西総合病院にはいつ頃、赴任したのでしょうか。
35歳になった頃に、千葉西総合病院の事務次長として就任します。当時は経営赤字が続き、スタッフのモチベーションも低下している状況でした。カテーテル治療を武器に、「全国の患者様から選ばれる循環器系病院をつくる」というビジョンを明確化するとともに、広報に注力していきました。5年かけて医業収益の向上に腐心した結果、月間で7億円程度から14億円程度へ、大幅な改善につなげることができました。
その後、一旦は徳洲会グループを離れたのですが、昨年、千葉西総合病院の事務部長として再任することになり、後進育成と更なる収益改善に取り組んでいます。

―これまでのキャリアでターニングポイントはありましたか。
新卒で入った福岡徳洲会病院で佐藤耕造院長(現徳洲会専務理事)と出会ったことが大きな転機になりました。わたしは1年目で資材課に配属されたのですが、当時の資材課はわたしを含め2名のみ。数千万円、数億円の取引窓口をいきなり任せられることになったのです。

そんな駆け出し当時、佐藤院長に見せていただいた1枚の写真のことは、今でも忘れられません。病院の忘年会の集合写真だったのですが、佐藤先生はその写真に映るスタッフの名前、所属、業務内容をすべて把握なさっていたのです。それに対してわたしが何も答えられずにいると、「だから医療現場の状況がわからないんだ。すぐに聞いてきなさい」と指示しました。

それ以降、わたしは何度も現場に行き、多くのスタッフに話を聞くようになりました。そのおかげで、医療現場でいかに多くのスタッフが働き、各スタッフが何をしていて、何を知っているのかを把握することの重要性を知ることになります。

今でも、その教えは大切にしていて、医療現場の生の声を聞いてこられることが、わたしにとって大きな強みになっていると思います。

病院事務職をやる気にさせる仕組み

病院事務職が成長する糧は「医療スタッフの生の声」 ― 千葉西総合病院 事務部長 中野 康広氏―新卒1年目にして、事務職としての在り方を学んだわけですね。その後30年間のキャリアを経て、事務職には何が求められていると考えますか。
時代とともに病院事務職の仕事内容が専門化されている部分はあるかもしませんが、本質は何も変わっていないと思います。患者様やスタッフとのコミュニケーションをいかに取れるかが重要です。

それに加えて、病院事務職として更なるスキルアップをしていくためには、ロードマップをつくることが大切だと思っています。やることはシンプルで、スタンプラリーのように回していくこと。千葉西総合病院の医事課では、診療科ごとにローテーションを行い実研修を受け、修了できたら次に進んでいくという体制をつくっています。スタンプを集めることで自分のスキルアップにつながるのだと明確になっているほか、定期的に抜き打ちテストを実施して、自分の力量を振り返る仕組みも取り入れているので、事務職たちも意欲的に業務に励んでくれます。

当院ではこのほか、病院全体のレベルを上げるために、全職員がBLS研修や接遇研修を受講したり、当院へのロイヤリティを高めるために、病院のプロモーションビデオを作成したりと、やる気に火をつける工夫はしています。

経営数字の動きの裏から、医療現場を想像し、現場を確認する

病院事務職が成長する糧は「医療スタッフの生の声」 ― 千葉西総合病院 事務部長 中野 康広氏―これから活躍していく若手事務職にメッセージをお願いします。
病院の経営数字を毎日チェックすること、そして日々動く経営数字の裏で、医療現場で何が起こっているのかを想像することが大切です。数字が変化した要因について、自分なりに仮説を持ち、医療現場に確認しに行く。その作業の繰り返しが、病院全体がどう動いているかの理解につながります。

ぜひ医療現場に足を運び、医療現場で何が起こっているのかを知り、医療現場を支えられる事務職に育ってほしいと思います。

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