医師不在5年の診療科で採用を実現~求職中の医師に自らオファー(前編)

医療機関の採用担当者が、求職中の医師の一覧を見て、自らオファーする――。そんな“攻めの採用”を始める医療機関が出てきています。

津田沼中央総合病院(300床=取材当時、千葉県習志野市)は2019年、一覧から自院に合いそうな医師を選び、オファーすることで、5年間医師が不在だった泌尿器科などに2人の入職を実現しました。採用を担当する事務次長の山村圭司氏は「採用の概念が覆った」と話します。山村氏は、毎週届く匿名の求職医師一覧をどのように活用したのでしょうか。

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「採用の概念が覆った」と事務次長が驚き

津田沼中央総合病院の山村圭司事務次長

――医療機関が求職中の医師に自らオファーできるサービスの存在を知ったとき、率直にどう思いましたか。

自分の中で採用の概念が覆りました。紹介会社に依頼すると、コンサルタントから連絡が来るまで待つばかりで、もどかしく思う部分があったんです。

ですが、エムスリーキャリアの新サービスを利用していると、特に募集を強化したい科目の候補者を知ることができます。コンサルタントから提案されなくても、招聘したい医師を自分で探してオファーできるから、能動的に採用できます。しかも求職者の更新が毎週あり、転職意向の強い医師をタイムリーに知られるのがいいですね。

匿名の求職医師一覧が毎週配信される採用管理ツール「ENZiNE」(エンジン)のサンプル画面

――週1回、匿名で求職医師の一覧が更新されますが、どのように活用していますか。

更新日の朝には、届いた一覧にあるすべての情報を見ることをルーチンワークに取り入れています。フレッシュな情報を寝かせたら意味がない、と思っているからです。当院に合いそうな先生が常に掲載されているわけではないですが、その分「掲載されていたら見逃さない」という気持ちでチェックしています。

医師の立場で考えると、転職を始めて最初にアプローチしたのが当院だったら、印象に残るはずです。医師に興味を持ってもらえれば、他院よりも先に面接できるかもしれません。千葉県は大病院が多いため、中規模病院が医師を採用するのは難しく、当院の泌尿器科に至っては医師が5年間も不在でした。うまく印象付けられたのか、2019年は泌尿器科医2人を面接させていただき、1人の入職が決まりました。

採用管理ツール「ENZiNE」では、それぞれの候補者の希望条件などを確認できる(上図はサンプル)

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――一覧はどのような観点でチェックしていますか。

手当たり次第にオファーを出したところで、なかなか見向きされません。そもそも、どんな医師が当院に合うのかを突き詰めて考える必要があります。そのためには、孫子の「彼を知り己を知れば……」ではありませんが、まず自院を知ることから始めました。特色や強み、弱みについて見つめ直し、整理したんです。

当院は300床規模の病院としては忙しい方だと思いますが、医師も業務が終われば帰りやすいなど、ワークライフバランスが強みです。「これまで大学医局で忙しく働いていて、少しペースダウンしたいけどやりがいは求めたい」という先生や、「子育て中でQOLを重視したい」という先生はマッチすると思いました。

「バリバリやりたい」という方よりは少し落ち着いて働きたい方、当院で長く働いてくれそうな方、温厚な性格の方――というように、採用したい医師像を具体的に描いていきました。

こうして自院に合う医師を整理した上で、候補者をチェックして、さまざまな情報から、どんな先生かをイメージしています。例えば、職歴や転職理由から、これまでどのような忙しさや価値観で働いてきた方なのかという予想を立てます。そして自院にマッチしそうなら積極的にアプローチをしています。

自院の条件に合う、求職中の医師のプロフィールや転職理由を見てみる

――候補者の情報から、どんな医師かを具体的にイメージしているのですね。

私の場合は、医事課を経験しているため、医師像をイメージしやすいのかもしれません。

医事課の一番の強みは、臨床に携われることだと思っています。特に入院のレセプトに携わると、患者さんがどういう経緯で入院し、どんな治療をして、どういう過程をたどって退院していくか、保険請求をしながらわかるようになってきます。医師との接点が増えますし、治療についても詳しくなるので、医師とある程度の共通言語を持てるようになったことは自分の強みだと思います。

候補者の情報は1人1冊ファイルを作る

――専用ツール「ENZiNE」(エンジン)の使い勝手はいかがですか。

オファー後の進捗状況を把握できることもいいですね。また、その進捗も「医師に提案しています」「医師から提案がNGになりました」「面接調整中です」など、かなりこまめに通知がきます。その通知もメールで来るので、ツールに張り付かなくて済むのも助かっています。

また、問い合わせをすると、当院の希望に対して、先生の希望やスキルがどれくらい合致しているかを評価して、グラフにしていただけるのは分かりやすいです。

――気になった候補者はどのように管理されていますか。

候補者の先生方にはそれぞれIDがついていますが匿名ですので、候補者が増えれば増えるほど、どの方がどんな先生だったのか覚えられなくなってきます。問い合わせた候補者については、情報を紙に出力し、1人につき1冊ファイルをつくって管理しています。先生によっては、オファーさせていただいてからのアクションの期間が長くなることもありますので、いつでもすぐにどの先生か確認ができるようにしています。

――このサービスを導入して、採用活動の意識に変化はありましたか。

基本料金で閲覧できる求職者の情報は3科目に限定されます。そのため、医師採用の優先度が高い診療科を明確にできたことが一番の収穫でした。医師はあらゆる診療科で欲しい。しかし、「本当に欲しい3科目はどれか」「医師が来ると、一番インパクトが大きい科はどれか」と考える機会を持てたことは非常によかったですね。自院の状況を改めて調べたり、把握したりするきっかけになりました。

後編はこちら:「ゴールは採用でない」医師採用で成果を挙げる事務次長が重視していること(後編)

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