【医療機関向け】具体的な時間外労働時間管理のイメージ(非常勤医師)


今回は非常勤医師の、労働時間管理の具体的イメージについて解説します。

目次


ケース1(A水準/常勤先&非常勤先宿日直許可なし)

では早速、具体的な労働時間管理のイメージを見てみましょう。


勤務体系の一例を出してみました。

こちらのY医師は常勤先の病院の水準はA水準で、時間外労働時間の上限が960時間の医師です。
まずは、非常勤先常勤先どちらも宿日直許可は1時間も取れていない想定でご説明いたします。

Y医師は外勤先で月2回当直と日直を行っています。合計すると月間46時間の勤務です。
しかし、労働時間管理はいち医師が常勤先の勤務と合わせて合算で何時間時間外労働があるか把握する必要があるため、
この情報だけでは判断できません。

常勤先での勤務を合わせるとこのY医師が月間どのぐらい時間外労働時間があるのかみてみましょう。

Y医師の、常勤先での時間外労働時間を合わせるとこのようになりました。

当直は常勤先、非常勤先合わせて月間5回勤務があり合計75時間、
日直は月3回の勤務があり合計24時間です。当直と日直を合わせると、月間の時間外労働時間は99時間となりました。

月100時間は超えていないため、面接指導は必須ではありませんが、
この勤務を12ヶ月続けると年間の時間外労働時間が1,188時間となり、960時間をオーバーしてしまいます。

このような状況になった場合、Y医師は常勤先の病院より「外勤先の勤務を減らして960時間以内に抑えるように」との指示が出てしまう可能性が考えられます。

ケース2(A水準/非常勤先宿日直許可あり)

では続いて、非常勤先の病院でのみ宿日直許可が取得できていたパターンで考えてみましょう。
非常勤先では当直、日直ともに全時間帯、宿日直許可が取得できていたと仮定します。

もともとY医師の非常勤先病院での勤務は当直月2回、日直月2回でしたので、
当直月2回分の30時間と、日直月2回分の16時間が労働時間カウント外となります。

その結果、当直は月5回ですが、労働時間カウントになるのは合計45時間、日直は月3回で労働時間カウントになるのは8時間のみです。
合計の月間時間外労働時間は53時間となりました。

この勤務が12ヶ月間続いても月間の時間外労働時間は636時間です。
そのため、常勤先と合わせてY医師は非常勤先での勤務を継続できそうです。

このように、非常勤医師を多数受け入れている場合、自院が宿日直許可を取得しているかどうかは継続勤務の可否に大きくかかわります。

宿日直許可をまだ取得できていない場合、早急に自院での許可時間帯を確定させましょう。

ケース3(A水準/常勤先宿日直あり)

ケース2でご紹介した月間時間外労働の108時間が仮に1年間続いた場合、年間の時間外労働時間は1,296時間となり、A水準の基準である960時間を大幅にオーバーしています。
毎月100時間超えという状態ですので、毎月面接指導実施医師による面接指導が必要となりますが、それ以前に上限960時間を超過しているため、労働基準法違反のリスクがあります。早急に労働時間を抑える対策が必要です。

医師の労働時間というものは抑えようと取り組み始めてすぐに抑えられるものではないため、このような兆候が見えた場合、早い段階でスピード感ある対処が必要となってきます。

ケース4(B水準/常勤先&非常勤先宿日直許可なし)

では最後に、別のZ医師のケースを見てみましょう。
常勤先、非常勤先を合わせた勤務例です。
分かりやすいよう最初のケースに戻り、常勤先でも非常勤先でも宿日直許可がないパターンでご説明します。

当直は常勤先、非常勤先合わせて月間5回勤務があり合計75時間、日直は月5回の勤務があり合計32時間です。当直と日直を合わせると、月間の時間外労働時間は107時間となりました。

月100時間を超えており、常勤先での面接指導が必須となります。
また、この勤務を12ヶ月続けると年間の時間外労働時間が1,284時間となり、960時間をオーバーしてしまいます。

しかし、このZ医師がB水準対象の医師だった場合はどうでしょうか。
特例水準の場合、時間外労働時間の上限が1860時間となりますので、時間外労働時間の範囲内に収まっています。
外勤先での勤務も継続できる可能性が高いですね。


管理のポイント

では今までのケースを振り返り、自院に来ている非常勤医師の労働時間把握のために、抑えるべき3点をおさらいしましょう。

本日はご説明のモデルケースとして外勤先が1つの例をご紹介しましたが、実際は働き方ももっと様々で外勤先も1つとは限りません。
自院に所属する常勤医師と比べ、非常勤医師は把握が難しい傾向にありますが、大事なポイントしては「継続勤務ができるかどうか判断すること」です。

詳細な労働時間把握ができずとも、自院での継続勤務が確認できれば問題ありませんので、各非常勤医師に合わせたヒアリングを行ってください。

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