今回は常勤医師の、労働時間管理の具体的イメージについて解説します。
目次
ケース1(A水準医師/宿日直なし)
では早速、具体的な労働時間管理のイメージを見てみましょう。
こちらのY医師はA水準で時間外労働時間の上限が960時間の医師です。
宿日直許可は1時間も取れていない想定でご説明いたします。
Y医師は月に2回当直を行い、月に1回日直を行っています。
そのため、月間の時間外労働時間は38時間となり、単純に年間で換算しても456時間の時間外労働となります。
960時間に収まっていますし、月100時間以内なので面接指導も不要ですね。
ケース2(A水準医師/宿日直なし)
上記Y医師ですが、イレギュラーである特定の月だけ100時間超えの勤務となりました。
この場合、この月のY医師の月間時間外労働時間は100時間を超えているため面接指導実施が必須となります。
ただし、この月だけのイレギュラー勤務であり翌月はまた月間38時間勤務の時間外労働時間となれば、年間の総労働時間は526時間となり、960時間には収まりますので問題ありません。
また、努力義務とはなりますが、28時間以上の勤務が続いている日が何日か見受けられますのでインターバルに関しては健康管理の点から少々考慮したほうが良いかもしれません。
このような形で、月間と年間、両軸で管理していく必要があります。
ケース3(A水準医師/宿日直なし)
ケース2でご紹介した月間時間外労働の108時間が仮に1年間続いた場合、年間の時間外労働時間は1,296時間となり、A水準の基準である960時間を大幅にオーバーしています。
毎月100時間超えという状態ですので、毎月面接指導実施医師による面接指導が必要となりますが、それ以前に上限960時間を超過しているため、
労働基準法違反のリスクがあります。早急に労働時間を抑える対策が必要です。
医師の労働時間というものは抑えようと取り組み始めてすぐに抑えられるものではないため、このような兆候が見えた場合、早い段階で
スピード感ある対処が必要となってきます。
ケース4(A水準医師/宿日直あり)
では、宿日直許可が取れていたらどうでしょうか?
ケース3の状態でも、仮に当直、日直が全時間帯取得できている場合、当直の4回分と日直の2回分はすべて労働時間カウントから外されるため、
通常残業の32時間のみが時間外労働のカウント対象となります。
年間の時間外労働は384時間となり、上限の960時間にしっかり収まっています。
このように、宿日直許可が取れているかどうかは、時間外労働時間の上限を守れるかどうかに大きく影響します。
まだ宿日直許可を未取得の場合、早急に宿日直許可を取得できる時間を確定させましょう。
また今回は、A水準である上限960時間の医師をモデルケースにしましたが、特例水準対象の医師ですと上限が1860時間となります。
もし診療科で異なる水準を申請している場合、それぞれの時間外労働時間の上限に合わせて労働時間を管理していきましょう。
管理のポイント
最後に、労働時間を管理する際のポイントのおさらいです。
- 時間外労働時間は年間での管理ではなく、経過や今後の予測を見るために月間での管理を行うこと
- 宿日直許可が取得できていない場合、早急に宿日直許可の取得時間を確定させること
- 年間時間外労働時間の上限を超過しそうな場合、すぐに労働時間削減の対策を始めること。
労働基準法違反の恐れがあります。
今回ご紹介した労働時間管理のイメージは非常に基本的なものです。
こちらをベースに、管理しやすい自院の管理方法をぜひ模索していってください。