【社労士が解説】医師の宿日直許可取得ノウハウ


目次


宿日直許可の概要おさらい

「断続的な宿日直」とは

本来の業務の終了後などに宿直や日直の勤務を行う場合、当該宿日直勤務が、行政官庁(労働基準監督署)の許可を受け断続的な労働と認められた場合には、労働時間や休憩に関する規定は適用されないこととなります。

許可のある宿日直は労働時間として扱われず、休憩の規定や割増賃金の発生もありません。

宿日直許可なく宿日直を行っている場合のリスク

宿日直許可を得ず、宿日直を行っている場合、その時間はすべて労働時間としてカウントされます。

常勤で週5日(週40時間)勤務している場合、宿日直時間は週40時間を超えるため残業(割増賃金の対象)となる。

時間外労働時間規制にも注意が必要

外部医師も同様に労働時間にカウントされる

外部の医師も、同様に労働時間としてカウントされるため、以下の場合などは残業扱い(割増賃金が必要)となります。

•本業の病院で日勤をした後、当院で宿直業務を行う場合
•本業の病院で週5日勤務した後、土日に当院で日直業務を行う場合 

断続的宿日直の許可基準

実際の申請代行体験談

提出書類

断続的な宿直又は日直勤務許可申請書

申請代行体験談

ケース①

 宿日直について、一部大学病院から来ていただいているが、複数の医師が来ている場合、「総員数」はどのように算出すべきか。

「総員数」=常勤医師+非常勤医師+外部医師(大学病院等)の合計を記載する。
常勤が少なくても、外部医師の人数が多ければ「総員数」は多くなってしまう。(宿直または日直できる医師がたくさんいるように見えてしまう)なので、別表で内訳(常勤〇名、非常勤〇名、外部医師〇名)を記載する方法で常勤数が少ないことを強調する。

ケース②

宿日直時間帯が複数ある場合(例:土日祝日は明けの時間が異なる、土曜日は午前のみ診療で午後から日直、など)はどのように記載すればよいか。

複数ある場合は別表を作成し、細かく記載します。

ケース③

「1回の手当額」の算出において、外部医師の日額はどのように考えればよいか。

•宿日直手当の最低額(平均日額の1/3)算出のために賃金台帳を提出→監督署では賃金台帳から日額を確認する

•非常勤医師や外部医師についても、本業先での日額を求められる→「他院での給与情報は確認できない」で問題ない

•提出時は常勤のみの日額で計算、もしくは自院で日勤のある非常勤も含めて日額を計算すればよい。→常勤の人数が少ない場合、非常勤や外部医師については、勤続年数に応じた「賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」より日額を算出し最低額を算出する場合もある(監督署判断)

•常勤は「年俸/年間所定労働日数(月給/月所定労働日数)=日額」

ケース④

添付書類として提出したシフトの中に、週2回以上の宿直、月2回以上の日直がある場合は許可してもらえないのか。

宿日直許可基準は満たさないが、週2回目以降の宿直及び月2回目以降の日直を労働時間として取り扱うことを明記して提出すれば問題ありません。

ケース⑤

日直を月2回認めてもらえた例があると聞いたが、どのような要件で認められるのか。

最終的には監督署の判断であるため明確な基準はわからないが、日直が可能が医師が極端に少なく(5名未満)、かつ、へき地のため外部からの医師確保も難しい場合は認められる可能性が高いが、かなりレアケースと考えられます。

ケース⑥

日誌があれば日誌でもOKです。ただし、対応に要した時間がわかるものが望ましいです。

ある病院では日誌のみ(対応に要した時間不明)を提出し、医師のヒアリングにおいて「宿直中は寝る時間がない」と答えた医師がいたため許可できない、という状況になったケースもあります。

対応件数、対応時間、対応内容(診察、投薬等の指示など)を一覧にするとわかりやすいです。

対応件数が、多い日で一晩10件近い病院もあったが、1回の対応時間が10分程度であったため、許可いただけたケースもあります。

ケース⑦

宿直室が複数ある場合はすべての宿直室の情報が必要か。

医師が使用する可能性がある場合は、そのすべての宿直室の場所がわかる平面図と写真を準備してください。睡眠をとるための設備が整っていることを確認されます(ベッド、冷暖房設備、シャワー等)

シャワー室と宿直室が別の場所であっても問題ありません。

ケース⑧

就業規則に医師の勤務時間や宿日直時間帯が記載されていない。また、賃金規程に宿日直手当が記載されていない場合、規程の改定は必要か。

宿日直許可申請のために必ずしも改定する必要はありません。記載されていない事項(医師の勤務時間や宿日直に関する規定)を就業規則に書き込んで提出するとわかりやすいです。

宿日直手当については、常勤医師と外部医師とで手当額が異なるケースも考えられます。最低額を上回っていれば、医師によって手当額が異なることは問題ない。別表として手当額一覧を添付するとよいでしょう。

宿日直許可申請のために急いで改定する必要はないが、医師にも就業規則は適用されるため、今後改定することが望ましいです。

ケース⑨

実地調査は何を聞かれるのか。何を準備しておけばいいか。

提出した資料をもとに調査されるため原則準備するものはないですが、法人の組織図や病院案内など別途資料を準備するように言われる場合もあります。

宿直室の確認、申請内容の確認(事務職員)、医師へのヒアリングが主な内容です。

医師へのヒアリングは、実地調査日に出勤している医師に対して行う。当日ヒアリングできなかった医師に対して、後日電話等でヒアリングすることもあるとのこと(実際にされたケースはない)

医師の回答が提出した資料と異なる内容であった場合、資料に関する追加質問や追加資料の提出を求められるます。

医師に対して「問答集」を作成する病院もあります。ただし虚偽の回答を強制すべきではないです。

ベストな形で取得するためのポイント

監督署は敵ではない

以前は「医師の宿日直は許可できない」というスタンスの時代もありましたが、今は「出来る限り許可を出そう」というスタンスです。
申請にあたり心配なことがあれば正直に相談してみることも手段の一つです。どうすれば許可できるか、相談に乗ってくれる監督官も多いです。
『なんとか許可をいただきたい』という姿勢で関わったほうがうまく進みます。

ルール通りに申請できる病院のほうが少ない

各病院での独自ルールや事情があるため、申請の仕方が重要になってくる場合もあります。

法人として目指す姿を考える

法令遵守は必要であるが、法人として目指す姿、医療体制等も考えたうえで対応していく必要があります。

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