第197回社会保障審議会医療保険部会 ~資料の要約

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厚生労働省は9月18日、第197回社会保障審議会医療保険部会を開催しました。同会では昨年改定の振り返りが行われました。資料をもとに、今回の改定の要点を解説します。

医療需要の構造変化:入院から在宅へ、目前に迫るピークアウト

日本の人口構造の変化は、医療需要に大きな影響を及ぼします。全国の入院患者数は2040年にピークを迎える見込みですが、多くの二次医療圏ではそれ以前にピークアウトが予測されています 。2035年までには、全医療圏の約7割にあたる236の医療圏で入院患者数が最大となると推計されており、これからの病院経営は、入院患者数の減少を前提とした戦略が不可欠です。

一方で、在宅医療の需要は増加の一途をたどります。特に訪問診療や訪問看護の利用者数は、多くの地域で2040年以降にピークを迎えると見込まれており、高齢者人口の増加に伴い、医療提供の主戦場が在宅へとシフトしていくことが明確に示されています 。この変化に対応し、地域包括ケアシステムの中核を担うための体制構築が、病院経営の持続可能性を左右する鍵となります。

物価・賃金上昇への対応と人材確保

近年続く物価・賃金の上昇は、病院経営に直接的な影響を与えます。特に、医療・介護分野の人材確保は喫緊の課題であり、他産業との賃金格差がその深刻さに拍車をかけています。資料によると、医療関係職種(医師・看護師等を除く)の給与の伸びは、全産業平均と比較して低い水準に留まっています。

今回の診療報酬改定では、こうした状況を踏まえ、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた対応が重点課題の一つとされました。しかし、診療報酬による対応だけでは限界があり、各病院においては、タスク・シフト/シェアの推進や医療DXによる業務効率化など、生産性向上に向けた不断の努力が求められます。

医療DXの推進と今後の医療保険制度改革

医療DXは、生産性向上と医療の質向上の両面から、今後の病院経営に不可欠な要素です。マイナ保険証の利用促進や、電子カルテ情報の共有、そして診療報酬改定の情報を迅速かつ正確にシステムへ反映させる「診療報酬改定DX」などが、政府主導で強力に推進されています 。これらのデジタル技術をいかに有効活用し、業務効率化やデータに基づいた医療の質向上につなげるかが、病院間の競争力を左右する時代になりつつあります。

国民医療費は増加傾向にあり、2023年度には48.0兆円に達する見込みです。高齢化の影響に加え、医療の高度化などが主な要因と考えられています 。こうした中で、医療保険制度の持続可能性を確保するため、給付と負担の見直しに関する議論は今後さらに本格化するでしょう 。

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