医療機器のクラス分類とは
医療機器のクラス分類とは、副作用や機能障害などの不具合が生じた場合に、人の生命や健康に与えるリスクの程度に応じて医療機器を分類する仕組みです。日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律（薬機法）」に基づいて、すべての医療機器が4つのクラスに分類されています。
医療機器を分類する理由は「リスク管理」
クラス分類の最大の目的は、リスクのレベルに応じた適切な安全対策や規制を行うことです。リスクが低い機器と高い機器で、製造販売承認のプロセスや市販後の安全管理方法などを変えることで、合理的かつ効果的な安全確保を目指しています。病院としても、この分類を理解することが、適切な機器管理体制の構築につながります。
4つのクラス分類の概要
クラス分類は、人体へのリスクが最も低い「クラスI」から最も高い「クラスIV」までの4段階に分かれています。
- クラスI: 一般医療機器
- クラスII: 管理医療機器
- クラスIII: 高度管理医療機器
- クラスIV: 高度管理医療機器
クラスII以上の医療機器の一部には、保守点検や修理などに専門的な知識・技能が必要な「特定保守管理医療機器」が指定されており、クラス分類とは別の軸で管理が求められます。
クラスIからクラスIVまでの具体的な分類
各クラスの定義と、該当する医療機器の具体例を解説します。
クラスI（一般医療機器）：不具合が生じても人体への影響は軽微
人体へのリスクが極めて低いと考えられる医療機器です。製造販売にあたっては、届出制がとられています。
- 具体例:
- メス、ピンセットなどの鋼製小物
- X線フィルム
- 聴診器
- 手術台
クラスII（管理医療機器）：不具合が生じた場合のリスクは比較的低い
不具合が生じたとしても、人体へのリスクが比較的低いと考えられる医療機器です。第三者認証機関による認証が必要となります。
- 具体例:
- MRI装置
- 電子体温計
- 消化管用カテーテル
- 家庭用マッサージ器
クラスIII（高度管理医療機器）：生命や健康に重大な影響を与えるおそれ
不具合が生じた場合に、生命や健康に重大な影響を与えるおそれがある医療機器です。厚生労働大臣による承認が必要となります。
- 具体例:
- 透析器
- 人工骨
- 人工呼吸器
クラスIV（高度管理医療機器）：生命の危険に直結するおそれ
患者の身体への侵襲性が高く、不具合が生じた場合に生命の危険に直結するおそれが高い医療機器です。こちらもクラスIIIと同様に、厚生労働大臣の承認が必要です。
- 具体例:
- ペースメーカー
- 冠動脈ステント
- 人工心臓弁
病院経営における医療機器クラス分類の重要性
クラス分類の知識は、日々の医療安全だけでなく、長期的な病院経営の観点からも重要です。
適切な医療機器管理体制の構築
「高度管理医療機器」や「特定保守管理医療機器」に該当する機器については、医療機器安全管理責任者の設置が義務付けられています。また、機器の保守点検計画の策定や、従事者への研修の実施など、リスクレベルに応じた管理体制を構築することが法令で求められています。これらの体制を整備することは、安全な医療提供の基盤となります。
医療安全と訴訟リスクの低減
医療機器の不具合やヒューマンエラーは、医療過誤に直結する可能性があります。クラス分類を正しく理解し、リスクの高い機器を重点的に管理することで、インシデントやアクシデントの発生を未然に防ぐことができます。これは、患者の安全を守ると同時に、病院を訴訟リスクから守ることにもつながります。
クラスに応じた適切な管理体制は病院経営の必須事項
医療機器のクラス分類は、人体へのリスクに応じて定められた、安全管理の根幹をなす仕組みです。各クラスの定義と具体例を理解することは、病院経営者が適切な管理体制を構築し、医療の質と安全性を確保する上で不可欠です。自院の医療機器がどのクラスに該当するのかを常に把握し、法令を遵守した上で、最適な保守管理を行っていくことが求められます。
