「病院機能評価」とは ~いまさら聞けない医療・介護業界用語Vol.10

いまさら聞けない医療・介護業界用語

医療・介護業界ならではの用語を解説する当シリーズ。今回取り上げるのは、「病院機能評価」です。制度の目的から、認定取得によるメリット、審査のプロセスと費用、評価項目などを網羅的に解説します。

病院機能評価とは?制度の概要と目的

病院機能評価とは、公益財団法人日本医療機能評価機構が、中立的・科学的な第三者の立場で病院の質を評価する仕組みです。国民が安全で安心な医療を受けられるよう、病院が組織的に医療の質向上に取り組んでいるかを評価し、一定の水準を満たした病院を「認定病院」として公表します。
評価を通じて、各病院が現状を客観的に把握し、さらなる医療の質改善に向けた課題を明確にすることを目的としています。

病院機能評価を受審する5つのメリット

認定を取得することは、以下のようなメリットがあります。

1. 医療の質の向上と標準化

審査に向けて院内の業務プロセスや手順を見直すことで、医療の質が体系的に整理され、標準化が進みます。これにより、医療事故のリスク低減や、患者サービスの均てん化が期待できます。

2. 職員の意識改革と組織の活性化

全職員が共通の目標に向かって準備に取り組む過程で、医療の質向上に対する意識が高まります。部門間の連携が促進され、組織全体の活性化にも繋がります。

3. 地域住民や患者からの信頼獲得

認定病院であることは、質の高い医療を提供している証として、患者やその家族、地域住民からの信頼を高める客観的な指標となります。病院のウェブサイトやパンフレットに認定証を掲示することで、広報活動にも活用できます。

4. 診療報酬上の加算

病院機能評価の認定は、診療報酬における「機能評価係数Ⅱ」の評価項目の一つです。認定を受けていることで、DPC/PDPS(診断群分類別包括評価)における評価係数が加算され、病院の収益改善に直接的に貢献します。

5. 各種指定・認定要件としての活用

臨床研修指定病院や専門研修基幹施設など、特定の指定を受けるための要件として、病院機能評価の認定が求められる場合があります。病院の機能を拡充していく上で、認定取得が有利に働く場面は少なくありません。

病院機能評価のデメリットと注意点

多くのメリットがある一方、受審にあたっては費用や職員の負担といった側面も考慮する必要があります。

  • 審査にかかる費用: 審査料や認定後の年間登録料など、一定のコストが発生します。
  • 準備にかかる職員の負担: 膨大な書類準備や院内体制の整備など、審査に向けた準備には多くの時間と労力が必要です。通常業務に加えて大きな負担となる可能性があるため、経営層のリーダーシップとサポート体制の構築が不可欠です。
  • 不認定のリスク: 万が一、審査で認定に至らなかった場合、準備にかけたコストや労力が直接的な成果に結びつかない可能性もあります。

病院機能評価の評価体系と審査項目

評価体系は、病院の特性や医療環境の変化に対応するため、定期的に改定されています。2023年4月からは、医療環境や社会の変化、病院のニーズ等に応じた改定を行い、これまでの病院機能評価をさらに発展・充実させた「機能種別版評価項目<3rdG:Ver.3.0>」の運用を開始しました。

評価は主に以下の4つの領域で行われます。

  1. 患者中心の医療の推進: 患者の権利や安全、療養環境などが評価されます。
  2. 良質な医療の実践1: 病院組織の運営や、医師・看護師などの専門職の役割が適切に機能しているかが評価されます。
  3. 良質な医療の実践2: 診療のプロセスや、チーム医療の実践状況などが評価されます。
  4. 理念達成に向けた組織運営: 病院の理念に基づいた経営方針や、人材育成、リスクマネジメント体制などが評価されます。

病院機能評価の審査プロセスと費用

受審のプロセスは、周到な準備と計画が求められます。

審査の流れとスケジュール

審査は一般的に以下の流れで進みます。

  1. 受審申し込み・契約: 日本医療機能評価機構へ申し込みを行います。
  2. 書面審査: 所定の評価調査票を提出し、書面での審査を受けます。
  3. 訪問審査: サーベイヤー(評価調査者)が実際に病院を訪問し、書類の確認、職員へのヒアリング、院内の視察などを行います。
  4. 評価結果の通知: 審査結果が通知され、認定基準を満たしていれば認定証が交付されます。

申し込みから認定までには、1年以上の期間を見込むのが一般的です。

審査にかかる費用

費用は病院の病床数によって変動します。例えば、200~299床の病院の場合、審査料は約280万円、認定された後の年間登録料は約24万円が一つの目安となります。最新の正確な料金は公式サイトでご確認ください。

病院機能評価はマネジメントツール

病院機能評価は、単なる審査ではなく、自院の医療の質を客観的に見つめ直し、組織全体で改善に取り組むための重要なマネジメントツールです。
認定取得は、診療報酬上のメリットだけでなく、職員の意識向上や患者からの信頼獲得など、病院経営の基盤を強化する多くの効果をもたらします。受審に伴う費用や職員の負担も考慮しつつ、長期的な視点で病院の価値を高めるための戦略的投資として、検討してみてはいかがでしょうか。

<参考>公益財団法人日本医療機能評価機構

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