
地域包括ケアシステムの推進において、病院と介護施設の連携はますます重要になっています。介護保険制度の中核をなす「施設サービス」について、4種類ある各施設の特徴、人員・設備基準、費用構造までを分かりやすく解説します。
介護保険における施設サービスとは?
施設サービスとは、要介護1以上の認定を受けた方が、介護保険施設に入所して受けるサービスの総称です。日常生活上の世話や機能訓練、療養上の管理といったサービスが24時間体制で提供されます。
施設サービスは、利用者の生活の場そのものを提供するという点で、利用者の自宅を訪問する「居宅サービス」や、特定の地域住民を対象とする「地域密着型サービス」とは明確に区別されます。
施設サービスの対象者
施設サービスの対象となるのは、原則として要介護1から要介護5までの認定を受けた方です。ただし、施設の種類によって対象となる要介護度は異なります。例えば、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、原則として要介護3以上の方が入所対象となります。
施設サービスごとの特徴と比較
施設サービスは、目的や機能に応じて以下の3種類に大別されます。それぞれの特徴と、人員・設備基準のポイントを見ていきましょう。
1. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
常に介護が必要で、自宅での生活が困難な高齢者のための生活施設です。食事、入浴、排泄などの身体介護を中心に、看取りまで対応する終身利用を前提とした施設が多く、「終の棲家」としての役割を担います。
- 目的: 日常生活の介護と看取り
- 対象者: 原則、要介護3~5の方
- 人員基準: 介護・看護職員は、利用者3人に対して1人以上の配置が義務付けられています。
- 病院との関連: 医療ニーズの高い利用者の急変時対応や、退院後の入所先として連携するケースが多いです。
2. 介護老人保健施設(老健)
病状が安定期にある要介護者に対し、在宅復帰を目指したリハビリテーションを提供する施設です。医師の管理のもと、看護、介護、理学療法士などによる医療ケアとリハビリが中心となります。
- 目的: 在宅復帰支援
- 対象者: 要介護1~5の方
- 人員基準: 医師、看護・介護職員に加え、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置が必須です。
- 病院との関連: 急性期病院からの退院患者を積極的に受け入れ、在宅や他の施設へつなぐ中間施設(ハブ機能)としての役割が期待されます。
3. 介護医療院
長期的な医療と介護の両方を必要とする要介護者のための施設です。医療法人が運営主体となることが多く、医療提供施設でありながら生活施設としての機能も兼ね備えています。
- 目的: 長期療養と生活支援
- 対象者: 要介護1~5の方
- 人員基準: 利用者の状態に応じ、医師、薬剤師、看護・介護職員、リハビリ専門職などが配置されます。
- 病院との関連: 介護療養病床からの転換先として、また、医療依存度の高い患者の長期的な受け入れ先として、病院との機能分化・連携が不可欠です。
施設サービス計画(ケアプラン)の重要性
施設サービスでは、施設サービス計画(施設ケアプラン)に基づいてサービスが提供されます。これは、利用者が施設でどのような生活を送り、どのようなサービスを受けるかを具体的に定めた計画書です。
ケアマネジャーが利用者の課題を分析して作成する
施設サービス計画は、その施設に所属する**介護支援専門員(ケアマネジャー)**が作成します。利用者本人や家族の意向を踏まえ、多職種(医師、看護師、リハビリ専門職など)と連携しながら、個々の利用者に合わせた最適なプランを策定することが求められます。
施設サービスの費用構造
施設サービスの費用は、主に以下の3つで構成されています。
- 介護サービス費(1割~3割の自己負担): 要介護度や施設の種類、提供されるサービス内容によって定められた介護報酬の自己負担分です。
- 居住費・食費(全額自己負担): 施設の家賃や光熱水費、食費にあたる費用です。所得に応じて負担軽減制度が適用される場合があります。
- 日常生活費(全額自己負担): 理美容代やおむつ代など、個人の選択で利用するサービスや物品にかかる費用です。
病院経営の観点からは、介護報酬の体系を理解し、施設の稼働率や加算の算定状況を管理することが、安定した事業運営の鍵となります。