医師の働き方改革後の救急医療の現場課題は?医師の業務負担を軽減する好事例をご紹介


今回は医師の働き方変革について、令和5年11月「医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査結果」回答結果から、救急医療の現場と課題についてご紹介です。

医師の働き方改革後の懸念事項

調査結果によると「宿日直体制の維持が困難」ということを懸念事項にあげている医療機関が、全体の30%である1,304施設という結果でした。

医師の働き方改革に伴う労働の制限により夜間の診療体制維持が困難となり、緊急受診や夜間病棟管理の影響が発生。通常外来診療への影響も現れ「いつでも受診できる」環境が崩壊することも懸念されています。

また、宿日直体制の維持が困難となることで、医師の業務負担は軽減されるものの、一方で医師の年収減少が予測され、より効率的な年収になる診療科へ医師が移行するという危惧もあります。

派遣医師の引き上げも伴い、救急医療の診療体制維持が困難になることで、救急医療の縮小・撤退に結びつくのではないか、ということが考えられます。

全国救急搬送件数の推移

全国救急搬送件数は上記の画像のグラフからも読み取れるように、増加しております。さらに今後高齢化が進むことで、2030年には2015年から114%増となると予測されております。

このように、医師の働き方改革による診療体制への影響は様々な部分に出てきます。
医師のタスクシフト・タスクシェアによる業務効率化や、人材確保による労働リソースの確保など、本質的な改革が実施できるような活動を行っていきましょう。

タスクシフトの好事例

ICTロボットへのタスクシェアなど、様々な手法が話題に上がっておりますが、かなりの投資が必要となり、財務状況から実際には取り入れが難しい、というのが現状といえます。

この現状をどのように打開していくか、というひとつの事例として、湘南鎌倉総合病院の救急救命士の活用事例をご紹介します。

湘南鎌倉総合病院では、救急救命士の業務を、情報の一元管理することで、タスクシフトとスマート化を実現しております。

これまでは、医師が対応していた他院・他施設への紹介連絡の多くを救急救命士が担い、医師の対応を5%に留めることに成功しております。

救急救命士の活用による効果

ホットラインや紹介連絡対応、院内調整などの業務を救急救命士が対応することにより、1件あたりの平均対応時間、年間件数から計算し、どれだけ医師の業務負担が軽減されたかの効果検証をした結果、以下のような結果となりました。

ホットライン対応
3分57秒 × 21,804件 = 1,435時間

他院・他施設の紹介連絡対応
11分50秒 × 4,244件 = 837時間

当院ERから他院への転院調整
27分57秒 × 2,801件 = 1,305時間

合算して年間3,577時間の医師業務負担の軽減効果が出ており、年間約9,000人の患者が診察可能になったと予測されます。

救急件数の増加は、高齢化社会において避けられない事実かと思われます。そんな中、救急の業務効率化は重要な要素となることが予測されます。是非今回の事例を参考に、貴院の対応にお役立ていただけますと幸いです。

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