医師の働き方改革のおさらい
2024年4月以降、 「医師も雇用されていれば労働者である」という考え方の下、賃金・労働時間・休日等について、医療機関も一般企業と同じように明確な取り決めが必要になりました。
追加された医療法第25条第1項に基づく立入検査項目
医師の働き方改革開始に伴い、医療法第25条第1項に基づく立入検査において確認される検査項目に4項目が追加されています。
面接指導に関する確認項目について
面接指導のおさらい
すべての医療機関には、勤務医の健康の状況を把握し、状況に応じて対策を講じる「面接指導」を実施する義務があります。労働時間が月100時間を超える前に、疲労や睡眠状況を確認し、事前に実施する必要があります。目安として80時間前後での疲労確認を行うことが推奨されています。
面接指導は「面接指導実施医師」が実施します(産業医と混同されがちですが別です)。
面接指導の実施と就業上の措置について確認されること
面接指導対象医師について、確実に面接指導を実施していること、必要に応じた措置がなされているかを確認されます。立入検査としては労働基準監督署(根拠法令:労働基準法、労働安全衛生法)が行うもの、厚生局(根拠法令:医療法)が行うものが想定されており、労働基準監督署の調査のほうが勤怠情報の記録の仕方等も含めて細かく確認される可能性は高いです。
また、どちらの場合も客観的に記録された勤怠情報やリスト化した労働時間により確認されると考えられます。
医療法に基づく立入検査について、面接指導の実施(法第108条第1項)で提示が必要になる資料
・直近1年間における月別の時間外・休日労働時間数が100時間以上となった医師の一覧
・長時間労働医師面接指導結果及び意見書
・面接指導実施医師養成講習会の修了証書
医療法に基づく立入検査について、就業上の措置(時間外・休日労働月100時間以上見込み)(法第108条第5項)で提示が必要になる資料
・直近1年間における月別の時間外・休日労働時間数が100時間以上となった医師の一覧
・措置の要否や措置の内容について記載された記録
医療法に基づく立入検査について、就業上の措置(時間外・休日労働月155時間超)(法第108条第6項)で提示が必要になる資料
・直近1年間における月別の時間外・休日労働時間数が155時間超となった医師の一覧
・労働時間短縮のための必要な措置の内容について記載された記録
勤務間インターバルに関する確認項目について
勤務間インターバルのおさらい
特例水準の医療機関は、休息時間の確保が義務とされています (A水準は努力義務)。通常の日勤及び宿日直許可のある宿日直に従事する場合は、始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間の確保が必要、宿日直許可のない宿日直に従事する場合は、始業から46時間以内に18時間の連続した休息時間の確保が必要です。
勤務間インターバルの代償休息のおさらい
勤務間インターバルとして休息時間の確保ができなかった場合、「代償休息」として代償休息時間の取得か、勤務間インターバルの延長が必要であり、「所定労働時間中に時間休を与えるまたは休息時間を延長する」ことが原則です。「あらかじめ付与するものが決まっていたものであっても代償休息として充当することができる」とされておりますが、できる限り休日以外で代償休息がとれるように運用することを推奨しております。
勤務間インターバル・代償休息について確認されること
勤務間インターバル・代償休息について、法令どおり運用されているか確認されます。
基本的には、「勤務予定開始・終了」と実際の「勤務開始・終了時間の実績」があれば問題ないかと思います。
副業・兼業をしている場合、主たる勤務先が副業・兼業先の労働も含めて、事前にこれらを遵守できるシフトを組むことにより対応することとなります。なお、代償休息をどちらの医療機関で取得させるかについては、常勤・非常勤といった雇用形態も踏まえ、医療機関間で調整する必要があります(この場合においても、実際の「勤務開始・終了時間の実績」が必要かと思います)。
医療法に基づく立入検査について、.勤務間インターバル・代償休息(法第123条第1項及び第2項)で提示が必要になる資料
・特定対象医師の名簿
・直近1年間のうち任意の1か月分の勤務予定及び勤務時間の実績等の勤務状況が分かる資料
医療法第25条第1項に基づく立入検査項目のポイント
医師の働き方改革によって定められた「面接指導」や「インターバル確保・代償休息」が正しく実施されているか追加項目として確認されるようになります。
どの項目においても勤怠管理が重要であり、打刻管理がしっかりなされているかがポイントです(逆に打刻管理さえしっかりしていれば、大きな問題にはならないかと思います)。
ただし、管理は自院だけでなく、副業・兼業については通算するとされているので、自己申告のルールや医師への呼びかけも必要です。
- 「面接指導」や「インターバル確保・代償休息」に関する確認項目が4つ追加された
- 「面接指導」や「インターバル確保・代償休息」を正しく実施しているかを確認される
- どの項目においても、勤怠管理が重要であり、打刻管理がしっかりなされているかがポイント
- 管理は自院だけでなく、副業・兼業については通算するとされているので、自己申告のルールや医師への呼びかけも必要