【雇用契約】年俸制の医師における記載の注意点とは


はじめに

医師の働き方改革が始まったことに伴い、医師の賃金規定や労働条件の明確化と適正なルールの設定が必要となっています。働き方改革の開始前後で雇用契約書や就業規則の見直しはされていますか?もし見直しがされていない場合、多くのリスクが潜んでいる可能性があります。
今回は医師の雇用契約書において、特に年俸制の医師の雇用契約書に関する注意点をご紹介いたします。

雇用契約書とは?

雇用契約書とは、雇用者(企業や組織)と労働者(従業員)との間で締結される契約内容を文書化したものです。医師も雇用されていれば労働者に該当し、この雇用契約書が必要となります。この契約書は、雇用関係の基本的な条件やルールを明確にし、双方の権利と義務を定めるための重要な文書です。労働条件の成立において非常に重要な要素です。

労働契約は口頭でも成立する

労働契約は、口頭でも成立することが法律で認められています。労働契約法第6条には「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者および使用者が合意することによって成立する」と記載されています。そして、労働契約の成立は口頭でも可能であるため、これがトラブルの原因になり得ます。

口頭での成立は医師とのトラブルに発展する恐れがある

口頭での契約成立は、医師とのトラブルに発展する恐れがあります。たとえば、年収2,000万円で雇用した医師が、初回給与支給後に「年収3,000万円という話だったと思います」と主張した場合、口頭だけではそれを証明することができません。労働条件の明示義務はもちろんですが、医療機関が自院を守るためにも、しっかりと記載することが必要です。

年俸制の医師の賃金規定におけるリスク

賃金規定におけるリスクとしては、年俸制の医師の雇用契約において、基本給等に残業代を含む場合、その時間数および金額を明記しなければなりません。固定残業代を含む年俸契約としているが必要事項が記載されていない場合は、未払い残業代を請求されるリスクがあります。

年俸制は「残業代を支払わなくて良い」ということではない

年俸制とは、年間の報酬額が最初に決まっている給与制度であり、これによって残業代が免除されるわけではありません。月給制や時給制と同様に、法定労働時間を超えて勤務した場合には、残業代を支払う必要があります。また、固定残業代は法定の割増率で計算した額を下回ってはいけません。

年俸制のおける未払い残業代の発生リスク

未払い残業代の計算例として、雇用契約書に「年俸2,000万円(賞与および残業代含む)」と記載されている場合でも、年間の所定労働時間と残業代を明記していないと、実態との乖離が生じ、未払い残業代が発生します。年俸のうち、何時間分・何万円分が時間外手当になっているのかを明記しましょう。記載されている残業時間を超えて労働した場合は、別途残業代の支払いが必要です。

固定残業は40時間程度に抑えたほうがベスト

固定残業は40時間程度に抑えるのが望ましいです。医師以外の場合、時間外勤務の上限は月45時間(特別条項を締結しても月45時間を超えてよいのは年間6か月のみ)であるため、月45時間以内で設定するのが一般的です。医師についても、可能であれば40時間程度に抑えるのが最適です。最初から月80時間の時間外労働を想定するよりも、月40時間程度に抑えることで、働き方改革を推進し、医師の健康管理に配慮している印象を与えます。

固定残業代に含む残業時間の上限

固定残業代に含む残業時間に上限は設けられていませんが、年間960時間を超える残業時間を設定した場合、時間外労働の上限違反および36協定違反となり、無効になる可能性があります。したがって、A水準の病院であれば、月80時間(年間960時間)が設定できる最大値と考えられます。

医師を採用する際にも非常に大切

雇用契約書は、可能な限り具体的に記載し、勤務医との認識の齟齬がないようにすることが重要です。これは、医師を採用する際にも非常に大切です。医師採用は売り手市場であり、医療機関は選ばれる側になることが多いです。医師の働き方改革への対応が不十分であると、医師は安心して転職を決断できません。

さいごに

働き方改革が始まったことで、人手不足が顕在化することは明白です。限られたリソースの中で長期的な診療体制を維持するためにも、雇用契約に関するトラブルが起こらないよう、改めて見直しを行っていただければと存じます。

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