地方の中小病院にとって、医師確保は大きな経営課題。北海道網走市から30キロほど離れた美幌町立国民健康保険病院(99床)も例外ではありませんが、インターネットを活用して2015年度は新たに4人の医師招聘に成功しています。その秘密を、同院における医師採用のキーパーソン・大村英則氏に聞きました。
≪今回インタビューにご協力いただいた方≫
大村英則氏(地域医療連携室 室長/前事務長 [ 2015年の退職に伴い、現職 ] )
ネット活用で自力採用を実現
―貴院の概要を教えてください。
当院は、北海道東部にある総合病院です。人口約23万人(2010年)の2次医療圏で、1次から1.5次救急を担っています。2次―3次救急は当院から車で30分以上先の病院で受けてもらう必要があり、周辺の病院や診療所と連携して地域医療を支えています。
病院を存続させ、地域に医療を提供し続けるためにクリアしなければならないのが医師確保です。
―なるほど。医師採用はどのように行われているのでしょうか。
北海道内に医師が多くない状況下で、大学医局からの派遣を受けていない当院は、医師を自力で採用しなければいけません。そこで2009年から活用しているのが、民間で提供している医師専用のスカウト型求人サイトです。わたしは毎朝、求人サイトに新しく登録された医師をチェックします。そして少しでも可能性がありそうならスカウトメールを送り、反応があれば速やかに返信します。待っていても応募は来ませんから、とにかくこちらから積極的にアプローチしています。
医師のメール返信率は、看護師の25倍
―スカウトメールを使うことで、どの程度の成果が出るのでしょうか。
実は、スカウトメールに対する返信率は、看護師などのパラメディカルに比べて医師の方が圧倒的に高いのです。看護師は300人中2人程度でおよそ0.67%ですが、医師は17%。7人に1人から返信してもらえている計算です。
その結果、直近の約1年半だけでも、28人の医師と連絡が取れました。意外と、道外からの医師も多くいます。
―どのようなメールを送るのでしょうか。
きちんと気持ちを通じ合わせて「こんな採用担当者がいる病院なら安心だ」と思ってもらうことを大事にしています。医師は、入職するとなったら家を畳んで来るわけですから、生半可な気持ちでは通用しません。きちんと人間関係をつくれるかにかかっています。
そこで、気を付けているのが、画一的なメールを送らないことです。医師が登録しているプロフィールや希望条件を踏まえて、希望にどこまでお応えできるかなどをお伝えしています。
それと、せっつくようなメールは送りません。たとえば、「当院はこのままだと地域医療が崩壊してしまうから、ぜひ先生に来ていただきたい」といったメールは絶対に送らないようにしています。スタンスとして、北海道や当院周辺にどんな魅力があるかを紹介し、「こんな魅力のある場所で働きませんか」と提案することを意識しています。
ネット活用で医師ネットワークを構築
―全国に飛び回って医師採用を行っている採用担当者もいます。貴院ではいかがでしょうか。
少なくとも当院は、全国を飛び回っても、なかなか期待通りにいかないと感じています。強力な医師ネットワークを持っているわけではないですし、大学医局のネットワークに頼ろうにも、教授に挨拶に行ったくらいではなかなか医師派遣してもらえないのが実情です。
そんな病院がどうしたら医師とのきっかけづくりをできるか考えたら、インターネットです。インターネット上では紹介会社や求人サイトが医師を集めていますから、ここに触手を伸ばし、医師とのネットワーク構築に利用すればいいのです。これらをいかにうまく利用するかが、わたしたちの仕事でもあります。
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