「医療法における広告規制」とは ~いまさら聞けない医療・介護業界用語Vol.9

いまさら聞けない医療・介護業界用語

自院を広告するうえで、医療法の「広告規制」は避けて通れないテーマです。「知らなかった」では済まされない罰則につながるケースもあり、正確な知識を持つことが大切です。

医療法における広告規制の目的と対象

医療に関する広告は、患者が適切な医療を選択するために非常に重要です。しかし、不適切な情報が氾濫すると、かえって患者の判断を誤らせる危険性があります。そのため、医療法では患者を守ることを目的に、客観的で正確な情報伝達を促すためのルール(広告規制)を定めています。

規制の対象となる「広告」とは

以下の2つの要件を両方満たすものは、原則としてすべて広告とみなされ、規制の対象となります。院内で配布するパンフレットや院内に掲示するポスターも対象となるため注意が必要です。

  • 誘因性: 患者を誘引する意図があること(例:来院を促す、特定の医療サービスの利用を促す)
  • 特定性: 医療機関名や所在地が特定できること

具体的には、ウェブサイト、SNS、チラシ、看板、新聞広告、交通広告などが対象です。

医療広告で禁止されている表現

特に注意が必要な、禁止されている広告表現の代表例について解説します。自院の広告に同様の表現がないか確認してみましょう。

比較優良広告:他の病院より優れていると誤認させる表現

客観的な事実に基づかない「日本一」「No.1」「最高」といった表現は、比較優良広告として禁止されています。

  • NG例: 日本一の手術実績を誇るクリニック
  • NG例: 地域で最もおすすめの病院

誇大広告:事実を誇張したり、虚偽の内容を伝えたりする表現

科学的な根拠が乏しいにもかかわらず、治療効果を保証するような表現は誇大広告にあたります。

  • NG例: この治療でがんは100%治ります
  • NG例: 厚生労働省が認めた最新の治療法

治療内容や効果に関する患者の体験談

個人の感想である体験談は、他の患者にも同様の効果があるかのような誤解を与える可能性があるため、原則として広告に掲載することはできません。感謝の手紙や口コミの紹介もこれに該当します。

治療前後の写真(ビフォーアフター)

効果を強調しすぎる傾向があるため、治療前後の写真やイラストを並べて掲載することは原則禁止です。ただし、後述する「限定解除の要件」を満たしたウェブサイトなどでは、一定の条件下で掲載が認められる場合があります。

広告規制の例外「限定解除」とは

ウェブサイトのように、患者自身が情報を求めてアクセスする媒体については、以下の要件をすべて満たすことで、広告可能事項以外の情報(例:自由診療の内容、治療前後の写真など)を掲載することが認められています。これを「広告可能事項の限定解除」と呼びます。

  • 医療機関のウェブサイトであること
  • 連絡先(電話番号、問い合わせフォームなど)が明記されていること
  • 自由診療の場合、治療内容、費用、主なリスク、副作用などが明記されていること

この要件を満たすことで、患者がより詳細な情報を得て、主体的に医療を選択できる環境を整えることができます。

医療法に違反した場合のリスク

もし広告規制に違反していると判断された場合、まずは都道府県などから報告命令や立入検査、是正勧告などの行政指導が行われます。これに従わない場合や、悪質なケースでは、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。病院の信頼を大きく損なうことにもつながるため、確実な対応が求められます。

信頼される医療情報を提供するために

医療法の広告規制は、複雑に感じるかもしれませんが、その本質は「患者に不利益を与えない、正確で分かりやすい情報を提供する」という点にあります。今回ご紹介したポイントを参考に、自院の広告表現を今一度見直し、患者から信頼され、選ばれる医療機関を目指しましょう。

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