紹介会社を利用して、医師・看護師などの専門職を雇用する医療機関が増える一方、紹介会社との付き合い方に腐心しているケースも多いようです。そうした現状を踏まえ、9月20日に開かれた全日本病院学会では、「人材紹介会社の活用の実態」と題したシンポジウムが開かれ、医療機関と紹介会社の付き合い方について、双方の当事者を交えたパネルディスカッションが行われました。
7割強の施設が紹介会社を介して雇用 一方で課題も
全日本病院協会(全日病)の医療従事者委員会が昨年集計したアンケートによると、過去3年(2010年4月~2013年6月)で、紹介会社を介した有資格者職員の雇用実績が「ある」と答えた施設は73.3%。どの職種を雇用したかという質問(複数回答)に対しては、「常勤看護師」が55.5%で過半数を超え、「常勤医師」が33.6%、「常勤准看護士」が27.9%などと続きました。
一方、紹介会社のコンサルタントの質にバラつきがあったり、早期退職や問題のある人材が紹介された事例も存在したりしているとして、同委員会では、業界の健全化に向けた紹介会社への対応について、議論を進めてきたといいます。
シンポジウム冒頭のあいさつで、織田正道・同委員会委員長は「多くの病院が紹介会社を活用している。高齢化・少子化が進む中で、地方においても人材を雇用していくことは大きな問題。人材紹介会社とどう向き合い、付き合っていくか皆で一緒に考えていきたい」と話しました。
医療機関と紹介会社が良い関係を築くためには?
シンポジウム(座長=井上健一郎・全日病理事/池上直己・全日病 医療従事者委員会特別委員)では、紹介の質を向上させるための取り組みなどをめぐって講演・意見交換が行われました。
医療機関側のパネリストとして登壇した二口健二・永生会法人本部人事部採用担当課長は、紹介会社に求職者の情報把握の徹底を求める一方で、医療機関側も紹介会社と良好な関係を築く必要があると指摘。
また、同じ紹介会社であってもコンサルタントの個人差によって紹介の質が左右されることが多いと実感を語り、紹介会社と良い関係を築くためのポイントとして、1.紹介会社と医療機関の双方がお互いのメリットをよく考えること、2.医療機関の担当者とコンサルタントが人間関係を構築すること―の2点を挙げました。
医師の人材紹介会社の立場からパネリストを務めたエムスリーキャリアの羽生崇一郎・医師事業部長は、実稼働している医師人材紹介会社が現在100社程度におよぶほか、紹介会社を利用する医師が3年前と比べても増えていることを解説。昨今の動向として、医局に所属する医師が紹介会社を利用するケースが全体の半数以上を占め、増加傾向にあるなど、登録者の属性が変化していることにもふれました。
その上で、紹介の質向上に向けた自社の主な取り組みとして、コンサルタントに対し、独自の教育プログラムを大学教授の監修のもとで構築したり、「医療経営士」の資格取得を義務付けたりしていることなどを紹介しました。
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