がん薬物療法体制充実加算の”よみかた”

『診療報酬のよみかた』表題

がん薬物療法体制充実加算とは

がん薬物療法体制充実加算は、抗悪性腫瘍剤の投与を行う外来化学療法の実施に必要な外来治療体制を評価した「外来腫瘍化学療法診療料1(医学管理料)」に付帯する加算です。加算元となる外来腫瘍化学療法診療料は、2022年診療報酬改定の際に大幅な変更が行われ、それまで注射の部の外来化学療法加算(通則6)として悪性腫瘍及び関節リウマチの2つの主病を加算対象としていたものから、悪性腫瘍のみを切り離し、医学管理料(B001-2-12)へと別建てにして更なる評価を図っています。この様な動きは、これからのがん薬物療法の充実を見据えてのことと考えられ、今回取り上げる「がん薬物療法体制充実加算は、そうした動きを反映し、抗がん剤投与のために薬剤師の専門的な介入を評価したものとなります。

がん薬物療法体制充実加算の概要

がん薬物療法充実加算は、次のB001-2-12外来腫瘍化学療法診療料1に認められた加算「注9」、算定回数には制限があり、月1回に限り100点が加算されます。算定要件(図1)では、「(4)イ及びウに掲げる業務」に対し、投与前にあたる医師の診察前のタイミングで、服薬状況、副作用の有無等の情報を患者から収集し評価した上で診察時の医師へ情報提供、処方提案等を行うことなどが運用上の条件になっています。患者からの情報収集においては直接的に行うこととなっているので、薬剤師による対面診療となります。

1.外来腫瘍化学療法診療料1 イ 抗悪性腫瘍剤を投与した場合 (1)初回から3回目まで           800点 (2)4回目以降           450点 ロ イ以外の必要な治療管理を行った場合              350点 2.外来腫瘍化学療法診療料2 イ 抗悪性腫瘍剤を投与した場合 (1)初回から3回目まで           600点 (2)4回目以降           320点 ロ イ以外の必要な治療管理を行った場合              220点 3.外来腫瘍化学療法診療料3 イ 抗悪性腫瘍剤を投与した場合 (1)初回から3回目まで           540点 (2)4回目以降           280点 ロ イ以外の必要な治療管理を行った場合              180点

図1 注9の告示事項

「注9」に規定するがん薬物療法体制充実加算については、外来腫瘍化学療法診療料1を届け出た保険医療機関において、外来腫瘍化学療法診療料1のイの(1)を算定する患者に対して(4)イ及びウに掲げる業務について、医師の指示を受けた薬剤師による業務のうち、医師の診察前に服薬状況、副作用の有無等の情報を患者から直接収集し、評価を行った上で、当該医師に当該患者に係る情報提供、処方提案等を行った場合は、月1回に限り100点を所定点数に加算する。なお、必要に応じて、医師の診察後においても、抗悪性腫瘍剤、副作用に対する薬剤等の使い方等について、適宜患者に対して説明を行うこと。

がん薬物療法体制充実加算の施設基準

施設基準(図2)には、「患者の薬学的管理を行うにつき必要な体制が整備されていること」となっており、具体的な薬剤師配置の体制としては以下のことが求められています。

  • 施設基準要件を満たす専任の常勤薬剤師の配置
  • プライバシーに配慮した個室
  • 薬剤師による診察前の服薬状況、副作用等の情報収集及び評価と医師への情報提供ならびに処方提案

図2 施設基準の要件

(1)外来腫瘍化学療法診療料1に係る届出を行っていること。 (2)化学療法に係る調剤の経験を5年以上有しており、40時間以上のがんに係る適切な研修を修了し、がん患者に対する薬剤管理指導の実績を50症例(複数のがん種であることが望ましい。)以上有する専任の常勤薬剤師が配置されていること。 (3)患者の希望に応じて、患者の心理状況及びプライバシーに十分配慮した構造の個室を使用できるように備えていること。 (4)薬剤師が、医師の診察前に患者から服薬状況、副作用等の情報収集及び評価を実施し、情報提供や処方提案等を行った上で、医師がそれを踏まえて、より適切な診療方針を立てることができる体制が整備されていること。

がん薬物療法体制充実加算のポイント

がん薬物療法充実加算は、外来化学療法を行っているがん患者の服薬情報や副作用などの薬学的な視点で薬剤師が事前に介入し、医師の診察時に情報提供(処方提案)を行うことによって、より質の高い抗がん剤治療を目指しているものです。がん薬物療法充実加算という名の通り、さらなる充実した外来化学療法の診療体制を構築することを念頭に2024年度の改定で新設されました。まさに薬剤師によるチーム医療の推進が狙いで、患者の投与前の不安の軽減や診察時に支持療法の提案が直接医師へと反映できることなどがメリットに挙げられています。

保険請求の視点では、施設基準に則った運用の構築という点で、化学療法に係る調剤の経験や研修受講等を修了している専任の常勤薬剤師の配置が求められていますが、日々の算定において、施設基準を満たした専任の薬剤師が常に実施しなければ要件を満たせないのかという点が疑義に挙がります。この点については、算定要件に「当該医療機関の医師の指示に基づき薬剤師が、服薬状況、副作用の有無等の情報の収集及び評価を行い」とあることからも分かるように、専任の薬剤師が実施しなければならないとは読めないので、専任薬剤師のもと薬剤師であれば算定可能と読むのが妥当であると考えます。

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