
1.はじめに(概要)
医師事務作業補助体制加算にかかわる改定事項は、主に施設基準上の医師事務作業補助者の業務と配置基準との関係に集約されます。まず、常勤職員の所定労働時間の定義が、従来の週32時間以上に対し、今回の改定では週31時間以上に変更されました。また、デジタル技術を用いて作業の効率化が図られている(ICT機器を活用する医師事務作業補助者)場合、医師事務作業補助者1人の配置を1.2または1.3人に換算して配置人数の計算に算入できるようになりました。
一方、医師事務作業補助者が行う専従の業務範囲においても、検査、クリニカルパス等の電子カルテへの代行入力が新たに追加され、医師事務作業補助者の活用をさらに推進する狙いがあると思われます。では、これら改定の詳細について見ていきましょう。
2.医師事務作業補助体制加算の改定内容
常勤職員の労働時間が32時間から31時間以上へ変更された背景には、これまであった労働条件の不整合の修正があります。国家公務員の勤務時間(7時間45分/日)から計算した1週間の労働時間は、実際のところ32時間ではなく、31時間(7時間45分×4日=31時間)となります。今回の改定では、この不整合が修正されました。また、複数の医師事務作業補助者を合算して算出する常勤換算についても、下記の一文「この場合においては、当該保険医療機関における常勤職員の所定労働時間(32 時間未満の場合は、32 時間)の勤務をもって常勤1名」が新たに追記されました。常勤換算は医療機関ごとに定められているものですが、計算違いを防ぐ意味で明記されたものと思われます。
| 当該医師事務作業補助者は、雇用形態を問わない(派遣職員を含むが、指揮命令権が当該保険医療機関にない請負方式などを除く。)が、当該保険医療機関の常勤職員(週4日以上常態として勤務し、かつ所定労働時間が週 31 時間以上である者をいう。ただし、正職員として勤務する者について、育児・介護休業法第 23 条第1項、同条第3項又は同 法第 24 条の規定による措置が講じられ、当該労働者の所定労働時間が短縮された場合にあっては、所定労働時間が週 30 時間以上であること。)と同じ勤務時間数以上の勤務を行う職員であること。なお、当該職員は、医師事務作業補助に専従する職員の常勤換算による場合であっても差し支えない。この場合においては、当該保険医療機関における常勤職員の所定労働時間(32 時間未満の場合は、32 時間)の勤務をもって常勤1名として換算する。 |
続いて、ICT機器を活用する医師事務作業補助者の配置人数の算入方法は、次の4項目のICT機器活用の内容条件が新たに施設基準に謳われました。医療DXの推進を意識したものと思われます。
- 【生成AI文書作成システム】生成AIを活用し、退院時要約、診断書及び紹介状等の原案作成を自動的に行い、当該業務を大幅に効率化する医療文書等の文書作成補助システム
- 【音声入力システム】診療録、退院時要約、診断書及び紹介状の作成に対応する医療文書等への入力を行う医療文書用の音声入力システム(汎用音声入力機能を除く。)
- 【RPA入力作業システム】救急医療情報システム等への医療データ等の定型的な入力作業等を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)
- 【患者向け説明動画】入退院時の説明、検査・処置、麻酔・鎮静、手術、インフォームド・コンセント及び医療安全・感染対策等に関する 10 種類以上の患者向け説明動画
これら4項目(算入基準の1.2及び1.3人)のいずれの条件においても「生成AI文書作成システムが必須項目(次に掲げるもののうち①を含むものを当該保険医療機関で組織的に導入)」として挙げられています。さらに1.3人の上位基準においては、②から④のうち1つ以上の活用(合計2項目以上)を実施していることが付加されています。
なお、これらICTに関連するシステム導入においては、サービス提供業者が必ず次の基準に準拠していることとされ、安全性が担保されていることが条件となっています。
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」及び総務省・経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドラインへの準拠
- 経済産業省及び総務省が公表する「AI事業者ガイドライン」に基づき、適切なリスク対策等を講じている事業者
また、医師事務作業補助者全員に次の通り「操作方法及び生成AIの適切な利用に関する研修」を受講させ、しっかりとしたICT等利用の体制を構築することが求められています。
- 全ての医師事務作業補助者に対し、操作方法及び生成AIの適切な利用に関する研修を実施し、全ての医師事務作業補助者が、常時、当該ICT機器を用いて、医師事務業務を遂行できる体制を整備していること
3.医師事務作業補助体制加算のポイント
はじめに疑義解釈にICT等活用の実際の具体的な数値まで触れられているので確認してみましょう。

生成AIを活用した文書作成補助システムは、電子カルテに記載された診療記録をもとに生成AIが文書を作成するため、適切な診療記録の記載と標準化が条件となります。導入に向け体制整備が始まっていますが、疑義解釈によると医療文書の音声入力システムも含め、当該医療機関内の医師又は医師事務作業補助者の過半数が毎週使用していることとされています。この疑義解釈を筆者が読み解く限り、医師事務作業補助者の大半が利用するシステムとなるよう整備する必要があると考えます。
RPAはシステム操作や入力などを自動化したものですが、自動化するための手順の標準化や実際のシナリオ作りは大変な作業です。具体的に5業務以上にRPAを設定し、毎年追加することは簡単ではありません。そのため、既存の業務を置き換えるというよりも、RPAを前提に新規業務を展開していく考え方にシフトしていく必要があります。
さらに生成AI等の研修についても、疑義解釈が出ています。生成AIは専門性が強い領域でもあるため、病院職員が深い知識を有していることは難しい側面があります。したがって導入業者に協力を要請することや適性のある新入職員の採用や育成が長期的視点で必要になると思われます。


なお、疑義解釈では、医師事務作業補助体制加算1にある「当該医療機関における3年以上の勤務経験が5割以上いること」という施設基準要件について、配置区分の1.2及び1.3の配置人数の算入においても目が向けられています。この配置区分には特別な計算方法はなく、ICT機器を活用する場合の配置人数の算入方法で算出した配置人数の5割以上が該当します。
最後に、今回の改定においては、施設基準上の届出に対して拙速なシステム導入により上位基準を目指すことに対して楔が打たれています。それは「当該届出を行う直近3月以上の期間において、当該算入方法を用いずに、当該配置区分又はこれを上回る配置区分について、引き続き算定していること」が条件に置かれているためです。ここからも、丁寧に運用を構築し、体制を整えてからのICT導入が求められていることがわかります。










