多いときで年間10名以上の中途医師を採用する社会医療法人大雄会 総合大雄会病院(愛知県一宮市)は、
1924年9月に開設されてから90年にわたり、地域に根差した医療を提供してきました。競合病院がひしめく名古屋市と岐阜市の2つの県庁所在地に挟まれた地域で、医師採用を成功させるノウハウとは何なのでしょうか。
≪今回 インタビューにご協力いただいた方々≫
院長補佐 上田秀吾氏
産婦人科領域の医師採用が急務
-直近で力を入れている分野は何でしょうか。
上田氏
産婦人科です。中途採用はもちろん、当院は産婦人科専攻医指導施設として、若い産婦人科医の育成に力を入れており、愛知医科大学と連携することで教育環境を整えています。また、社会貢献も当法人の理念のひとつであり、産婦人科の取り組みとして、性犯罪被害者をケアするハートフルステーションも展開しています。
当院のある愛知県一宮市は人口39万人ですが、近隣でお産をできる病院は当院を含めて3施設しかありません。2012年の当院の分娩件数は666件ですが、キャパシティの問題で、本来受け入れたい分娩件数には達していないのが現状です。「この地域でお産をしたい」というニーズは非常に強いですし、当院は、前身の岩田医院の開設から90年間、この地域で医療を提供してまいりました。これからも末長く地域の医療ニーズに応え、さらに医療の充実を図るために、産婦人科医の教育のみならず採用にも注力していきたいと考えています。
-多くの医師が活躍できるように、何か工夫していることはありますか。
医師にはできるだけ長く勤務してもらえるように気を遣っています。
たとえば、お子さんのいる女性医師など、ご希望の方には変形労働時間制を採り、上司と相談のうえ業務に支障のない範囲で勤務時間を組むといったフレキシブルな勤務体制を可能にしたり、週32時間勤務で常勤といった勤務体制を可能としたり、365日24時間お子様をお預かり院内保育所を設ける等働きやすい環境を提供できるよう心掛けています。また、大学院進学の支援や、積極的に国内外の学会・研究会に参加できる風土や制度があり、希望するスタッフにはアメリカ短期研修を実施しています。
医師からは、「自身をある程度犠牲にしてでも、みんなが働きやすい環境にしたい」という声も盛んに聞かれ、「働きやすい病院を皆でつくりあげよう」という現場の意識と、病院としても先生方の業務負担を改善しなければという思いより、「勤務医負担軽減委員会」を立ち上げ、さまざまな検討を重ねているところです。
医師採用の成功には、院内医師とのコミュニケーションが必須
「医師の働きやすさ」を整えるために大切なことは、日頃から事務長や採用に関わる担当者が医師とコミュニケーションをとることだと思っています。院長、担当副院長や診療部長をまじえて、年間の売り上げ目標はもちろん、目指すべき医療や必要な医師数などを、毎年2-3か月かけてじっくりと話し合いますし、病院としての理念の共有やビジョンを実現させるための研修会を、毎年開催しています。また、そのほかの勤務医とも、日ごろからコミュニケーションを取るように心掛けています。
院長、診療部長がどんな考えを持っているか分からなければ、採用はままなりませんし、各診療科の勤務医に新しい医師を受け入れようという素地がなければ、せっかく医師が採用できたとしても、定着しません。
逆に言えば、そのコミュニケーションができていれば、医師採用はどの病院でもうまくいくものだと思います。
採用の窓口はわたしですから、医師の入職後、わたしのもとには各診療科の現場から、フィードバックが来ます。「想像以上に頑張ってくれている」「いい人を採用してくれて助かった」という喜びの声もある一方で、時には、「思っていたより求めていた手技の経験が少なかった」「態度をなおしてほしい」と、ネガティブな声もあります。
そうしたやり取りを繰り返すうちに、「当院に必要な医師はどんな医師か」、「医師が長く活躍する上で何が必要なのか」というイメージがわたしの中にも、確立されていったように思います。
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