「電子カルテ3原則」とは ~いまさら聞けない医療・介護業界用語Vol.25

いまさら聞けない医療・介護業界用語

電子カルテを導入・運用する上で、すべての医療機関が遵守すべき「電子カルテの3原則」があります。これは、電子データで診療録を保存するための根本的なルールです。3原則の具体的な内容と、その法的背景、そして病院経営の観点からなぜこれらが重要なのかを解説します。

電子カルテの3原則とは

電子カルテの3原則とは、厚生労働省が定める電子保存の基本要件のことです。診療録などを電子データとして保存するために、「真正性」「見読性」「保存性」の3つの要件を満たす必要があります。これらは、紙カルテが果たしてきた役割を電子データで同等以上に実現するための、いわば大前提となるルールです。

真正性:信頼できる情報であること

真正性とは、記録された情報に「虚偽の入力、書換え、消去、混同が防止されていること」であり、「作成の責任の所在が明確であること」を意味します。つまり、「いつ、誰が、何を記録・更新したか」が正確に証明でき、後から不正に改ざんできない状態を確保することです。

  • 具体的な対策例
    • IDとパスワードによる厳格な利用者認証
    • 操作履歴(アクセスログ)の保存
    • 確定された情報の上書き・削除ができない仕組み
    • タイムスタンプの付与

見読性:いつでも読めること

見読性とは、電子媒体に保存された内容を、必要に応じて権限を持つ人がすぐに確認できる状態を指します。紙カルテのように、誰もが読める形で表示・印刷できなければなりません。

  • 具体的な対策例
    • 一般的なPCやモニターで明瞭に表示できること
    • 必要時に速やかに印刷できるフォーマットであること
    • システム障害や災害時にも情報を確認できるバックアップ体制

保存性:安全に保管されること

保存性とは、定められた法定保存期間(診療録は5年間)中、記録が劣化したり消失したりすることなく、安全に保管され続けることを指します。

  • 具体的な対策例
    • 定期的なバックアップの実施
    • 不正アクセスやサイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策
    • 記録媒体の経年劣化対策
    • 法令やガイドラインに準拠したデータセンターでの保管

なぜ電子カルテの3原則が重要なのか?法的背景を解説

これら3つの原則は、単なる努力目標ではなく、法律やガイドラインによって定められた要件です。遵守しなければ、法的な問題に発展する可能性があります。

根拠となる法律「e-文書法」

正式名称を「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」といいます。従来、法律で紙での保存が義務付けられていた文書について、電子データでの保存を容認する法律です。この法律によって、診療録などの電子保存が法的に可能になりましたが、そのための条件として先述の3原則が求められています。

厚生労働省のガイドライン

厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を発行しており、この中で電子カルテの3原則を満たすための具体的な技術要件や運用方法が示されています。電子カルテを提供するベンダーはもちろん、導入する医療機関もこのガイドラインに沿った運用が求められます。

病院経営の視点で見る電子カルテ3原則のポイント

3原則の遵守は、法令対応という側面だけでなく、病院経営の安定化に直結する重要な要素です。

リスク管理と医療訴訟への備え

万が一、医療訴訟が発生した場合、診療録は最も重要な証拠となります。3原則が満たされていないカルテは、証拠としての能力が疑われる可能性があります。特に真正性が確保されていないと、「記録が後から改ざんされたのではないか」と指摘され、病院側に著しく不利な状況を招きかねません。適切なカルテ管理は、職員と病院を守るための生命線です。

医療の質の向上と業務効率化

見読性が確保されていれば、医師や看護師など複数のスタッフが、いつでもどこでも正確な患者情報にアクセスでき、チーム医療の質向上に貢献します。また、保存性が担保された安全なシステムは、情報漏洩などのインシデントを防ぎ、患者からの信頼を維持する基盤となります。

3原則を満たす電子カルテの選び方

電子カルテを選定する際は、機能や価格だけでなく、以下の点を確認することが重要です。

  • ガイドラインへの準拠: 厚生労働省のガイドラインに準拠しているか。
  • セキュリティ対策: 不正アクセスや情報漏洩に対する具体的な対策が講じられているか。
  • サポート体制: 障害発生時や災害時のデータ復旧・閲覧に関するサポート体制が整っているか。

これらの観点から製品を比較検討し、自院の規模や特性に合った、信頼できる電子カルテを選ぶことが安定した病院経営につながります。

まとめ

電子カルテの3原則(真正性・見読性・保存性)は、電子データを法的に有効な診療録として扱うための絶対条件です。これらは、e-文書法や厚生労働省のガイドラインで定められており、遵守することは医療機関の義務といえます。 3原則を満たすことは、法令遵守にとどまらず、医療訴訟のリスク軽減、医療の質の担保、そして患者からの信頼獲得という、病院経営の根幹を支える重要な取り組みです。電子カルテの導入・更新を検討される際は、この3原則を判断基準の中心に据えることをお勧めします。

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