自己研鑽の定義が曖昧な場合は危険!判断の基本的考え方を確認しましょう


今回は医師の働き方改革における自己研鑽の定義の重要性についてご紹介します。

これまで自己研鑽として労働時間にカウントしていなかった作業時間も、 「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とみなされれば、それは労働時間となります。

自己研鑽の定義が曖昧な場合のリスクや、注意点を確認しましょう。

自己研鑽の定義が曖昧な場合、違反や未払い残業代発生リスクがある

「自分の病院は残業がないから、医師の働き方改革で特に困っていることはないよ」とお考えの医療機関様もいらっしゃるかと思います。
しかし、残業がないと思っていても自己研鑽か労働時間か曖昧な作業時間があり、それらを厳密に計算した結果残業代が発生し、最悪の場合違反や未払い残業代の発生リスクがあります。

自己研鑽と労働の切り分けが曖昧な医療機関も依然として多く存在

2024年5月20日から5月29日の期間のアンケート調査結果では、自己研鑽と労働の切り分けが曖昧な状態である医療機関が40.9%も存在しておりました。

厚労省が示している、自己研鑽の考え方の指針

厚労省から自己研鑽を内容によって類型化した上で、類型ごとの考え方の指針が示されています。(令和元年7月1日基発0701号第9号労働基準局通達 医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について)

所定労働時間内の研鑽の取扱い

所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場合については、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となる。

令和元年7月1日基発0701号第9号労働基準局通達 医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について

所定労働時間外の研鑽の取扱い

所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(以下「上司」という。)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しない。 他方、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等1 の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当するものである 。 所定労働時間外において医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明示・黙示の指示によらずに自発的に行われるものも少なくないと考えられる。このため、その労働時間該当性の判断が、当該研鑽の実態に応じて適切に行われるよう、また、医療機関等における医師の労働時間管理の実務に資する観点から、以下のとおり、研鑽の類型ごとに、その判断の基本的考え方を示すこととする。

令和元年7月1日基発0701号第9号労働基準局通達 医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について

研鑽の類型ごとの、その判断の基本的考え方

一般診療における新たな知識、技能の取得のための学習

例:診療ガイドラインの勉強、治療法や新薬についての勉強、自らが術者等である手術や処置についての勉強

業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。
ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。

博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成

例:学会や外部の勉強会への参加・準備、院内勉強会への参加・準備、本来業務とは区別された臨床研究に係る診療データの整理・症例報告の作成・論文執筆等

上司や先輩から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須でなく、自由な意思に基づいて所定労働時間外に自ら行っていれば労働時間には該当しない。
大学付属病院等に勤務する医師については、注意が必要(基本的に、学生の教育や研究は労働時間に含まれる)。

手技を向上させるための手術の見学

例:手術・処置等の見学の機会の確保や症例経験を蓄積するために、所定労働時間外に見学を行うこと等

上司や先輩から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須でなく、自由な意思に基づいて所定労働時間外に自ら行っていれば労働時間には該当しない。
但し、実際に診療(その補助)に関わった時間は労働時間となる。

手続き・環境の整備を行いリスクを回避しましょう

自己研鑽か労働時間か曖昧な状態なまま月日が経ち、医師と給与に関してトラブルになったとき、多額の未払い残業代が発生した、というパターンも起こりえます。

自己研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続き・環境の整備を行い、リスク回避をしましょう。

もし判断に迷われるポイントがありましたら、お気軽に相談窓口ほっとらいんからお問い合わせください。

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