【医師の働き方改革】52病院の対応進捗と攻略すべき対策ポイント(2023年9月)

施行まで半年を切った医師の働き方改革。2024年4月前後は、医局人事を含めた通常の年度末・年度初めの対応、2024年6月には診療報酬改定が続きます。そのため、今から準備ができる「医師の働き方改革」は早めの対策を進めておきたいところです。
今回はエムスリーキャリアが9月29日に実施した「【超有料級】他院の対応状況や体験談をまとめてご紹介セミナー」から、医師の働き方改革の医療機関の進捗や悩み、攻略すべきポイントを改めてお伝えします。

目次

講師:中川加菜(なかがわ・かな)
エムスリーキャリア株式会社 事業開発部

エムスリーキャリアにて主に医療機関向けのサービス開発に従事。今期より医師の働き方改革関連を担当し、医師の働き方改革.comのサービス開発を行う。ほっとらいん(相談窓口)の受付対応も担当。

52病院の生の声が集結

※記事は抜粋しています。
雇用契約書の見直し、労働時間管理、自己研鑚ルールの整備などについても解説した
全編は「医師の働き方改革.com」にて記事・動画でご紹介予定です。

セミナーでは、52の病院から回答を得たアンケート(※)をもとに進められました。統計データだけでなく、リアルな生の声もたくさんいただきました。
(※)2023年8月7日~9月16日にかけて、エムスリーキャリアと取引のある医療機関を対象にエムスリーキャリアが実施

回答病院属性は次の通りです。

また、働き方改革を推進しているのは事務長が41.5%、労務担当が37.7%となりました。一部ではチームで取り組んでいる医療機関もあるようです。

宿日直許可申請は「作業」でなく「交渉」

まずは、医師の働き方改革で真っ先に取り組みたい「宿日直許可」についてです。
すでに取得済みの医療機関も増えてきましたが、セミナー講師の中川は、宿日直許可は「いますぐに1時間でも多く」取得することを推奨しています。なぜなら、宿日直許可が取得できないと経営悪化の可能性があるからです。

具体的には、3つのリスクがあります。

  • リスク1:労働時間としてカウントされてしまう
  • リスク2:時間外割増賃金(残業代)が発生してしまう
  • リスク3:医師採用の難易度が上がってしまう
  • そもそも宿日直許可申請は「申請作業」ではなく「スキルを用いた交渉」です。労働基準監督署(以下、労基署)の担当者によって見解が異なると認識をした上で、自院が得たい結果を捉えに行く交渉力が求められます。

    エムスリーキャリアに寄せられた事例の中でも、救急車の年間受け入れ台数が同じくらいの2病院のうち、A病院は「全時間帯を取得できた」のに、B病院は「一部時間帯のみ」という差が生まれているケースがありました。

    宿日直許可基準は8割の病院がクリア

    アンケートに回答いただいた52病院に、宿日直許可申請する(している)中で、一番苦労した点を尋ねたところ、「1.シフト調整(月1回/週1回の勤務調整)」「2.労基署対応(実際の業務内容の説明や実施調査前の医師との合意形成)」「3.添付書類の作成」という結果が得られました。

    特に苦労が多かった「1.シフト調整」について、宿日直許可基準となる「宿直は週1日、日直は月1回」という条件をクリアしている医療機関は80%でした。

    条件をクリアしていなくても「数ヶ月以内に医師を補充して適正なシフトになることを約束する」「医師のスキルの偏りを説明し、スキル上必要なシフトだと説明する」ことで、特例で認めてもらえた事例がありました。

    また、宿日直許可を取得するには、労基署との協力が欠かせません。
    申請にあたって、少なくとも1回は足を運ぶことでしょう。
    医療機関担当者が労基署に足を運んだ回数について「2回以内」と回答したのは64.0%です。16.0%は「3回~4回」訪問し、「5回以上」も4.0%いました。

    また、申請から取得までにかかった期間は「1ヶ月」という医療機関が多く、回答医療機関のうち最短は2週間、最長は3ヶ月でした。

    7割の医療機関で医師への説明が不足

    医師の働き方改革は、医療機関の取り決めに医師が合意しなければ、絵に描いた餅に終わります。ただ、医師は通常の業務で忙しいため、話し合いの時間を設けるのに苦労されているのではないでしょうか。

    アンケートでも、医師への説明の機会を設けたかの質問に対して、「(医師)全体に説明した」と答えたのは22.2%にとどまりました。51.9%は「まだ」と回答しており、医師への説明ができていない・不足している医療機関が多いことがうかがえます。

    働き方改革に対して、医療機関担当者が医師から受ける質問・意見としては、「時間管理への不安や不満」、次いで「給与への不安」が多いようです。

    具体的には「時間管理の申請業務が増えて面倒」「副業が制限されるのか」「当直明けの扱いはどうなるのか」「業務内容と給与に変更があるのか知りたい」などです。
    ひとつひとつへの質問に対し、医療機関側の考えを伝えていくことが重要です。

    医師からの意見例(クリックで全文表示)
    医師からの質問例(クリックで全文表示)

    漠然とした不安を解消するには課題の洗い出しから

    他院の状況を見る中で新たな気付きはありましたでしょうか。
    「対応が漏れていた」「思ったよりも自院の対応が進んでいない」という場合は、改めて対策を進めてみてください。

    また、もし医師の働き方改革に関して漠然とした不安があるのであれば、課題の洗い出しができていないのかもしれません。
    最寄りの医療勤務環境改善支援センターにご相談いただくほか、エムスリーキャリアでも対応すべきことを整理し、ベストな対応方法の実行に至るまでをサポートする各種サービスを展開しています。ご興味がありましたらお問い合わせいただけますと幸いです。

    ※記事は抜粋しています。
    雇用契約書の見直し、労働時間管理、自己研鑚ルールの整備などについても解説した
    全編は「医師の働き方改革.com」にて記事・動画でご紹介予定です。

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