第618回中医協総会~資料の要約

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2025年10月1日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協) 第618回総会において、入院・外来医療等の調査・評価分科会による検討結果のとりまとめが報告されました 。本記事では、資料のポイントを抜粋して解説します。

急性期入院医療の動向と経営課題

急性期入院医療については、病床機能の分化と経営のあり方が大きな焦点です 。
2024年度改定の影響として、看護配置7対1の急性期一般入院料1の病床数が2024年に大きく減少した一方、急性期一般入院料2~6の病床数は2024年に増加に転じました 。これは、多くの病院が病床機能の見直しを迫られている実態を反映しています。

特に注目すべきは、急性期一般入院料1算定病院の経営実態です。データによれば、救急搬送の受入件数が多い病院ほど医業費用も増加し、結果として医業利益率が低い傾向にあることが示されました 。これを受け、分科会では「救急搬送件数が増加するほど医業利益が悪化するため、抜本的な見直しや施設維持のための評価が必要」との意見が挙がっています 。

また、急性期の一般病棟はDPC制度に参画することが、医療の標準化の観点から望ましいとの意見も出ており 、今後のDPC算定のあり方も経営戦略上、重要となります。

新設「地域包括医療病棟」への移行と課題

2024年度改定で新設された「地域包括医療病棟入院料」は、高齢者救急の受け皿として注目されています 。調査によれば、同病棟を届け出た理由として「高齢者の救急搬送の増加に伴いニーズに沿った対応が可能」 、「経営が安定すると考えた」 に加え、「急性期一般病棟の重症度、医療・看護必要度の基準を満たすことが困難」 が多く挙げられました。これは、従来の急性期病棟の維持が困難になった医療機関の、新たな戦略的選択肢となっていることを示しています。

一方で、急性期病棟から移行する際の障壁も明らかになりました。特に「休日を含めすべての日にリハビリテーションを提供できる体制の整備」が困難な基準として挙げられており 、人員体制の確保が移行の鍵となります。

DPC/PDPS制度の主な論点

DPC/PDPSについても、次期改定に向けた複数の重要な見直しが議論されています 。

まず、2024年度改定後、DPC対象病院数は減少傾向にあります 。2024年度中には23件の退出があったことが報告されており(より)、その多くが地域包括医療病棟などへの病棟再編を伴うものです 。

制度運営上の論点としては、「再入院・再転棟ルール」が挙げられます。DPC病棟からの転棟後、ルールが適用されなくなる8日目に再転棟する件数が突出して多い実態が示され 、「同一傷病による再転棟は7日間を超えても一連の入院として扱うべき」との意見が出ています 。

さらに、「点数設定方式」について、入院期間IIの決定方法を従来の「平均在院日数」から「在院日数の中央値」に移行すべきとの意見が提示されました 。これが実現すれば、DPCの収益構造に大きな影響を与える可能性があります。

運営体制と処遇改善の方向性

医療現場の体制に関する議論も進んでいます。「重症度、医療・看護必要度」については、特に内科系症例の評価が課題となっています。内科系症例はA・C項目が低くB項目が高い傾向がデータで示され 、現状の評価票では診療実態を適切に反映しきれていない可能性が指摘されています 。

また、「医師の働き方改革・タスクシフト」に関しては、診療録の入力やバイタルサイン測定などで進展が見られるものの 、一層の推進が求められています 。

2024年度に導入された「ベースアップ評価料」については、9割以上の施設が賃上げに活用している実態が報告されました 。一方で、現行制度の複雑さも指摘されており、2026年度改定に向けて引き続き検討される見通しです 。

今回の総会では、病床機能の再編、DPC制度の最適化、人員配置と働き方改革など、病院経営の根幹を成すテーマが網羅されました。各医療機関におかれては、これらの議論の動向を注視し、自院の機能と地域における役割を踏まえた上で、次期改定に向けた戦略的な準備を進めることが求められます。

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