医療機関の中で、管理職を求める需要が高まっています。前回に続き、その背景を考察したのち、病院管理職のキャリアをめぐる新たな潮流についても紹介したいと思います。
【前回の記事】
「これまで通り」は通用しない?今必要とされる病院管理職とは―病院の管理部門 直面している4つの“異変”【前編】
病院の管理職が直面している異変3
委託化がもたらした功罪
人材派遣や委託業者の増加は、病院経営を大きく変えました。特に影響が大きかったのは、給食業務と医事業務ではないかと思います。医療関連サービス振興会の「医療関連サービス実態調査」(2012年度)によると、給食事業の委託率は67.9%、医療事務業務は35.7%となっています。
委託化のメリットは、労務管理を外部に委託できることにあります。多くのスタッフを抱える給食部門は管理がしづらいですし、医事課にしても、改定のたびに変化する診療報酬請求に対応しながら、職員の労務管理をするのは簡単ではありません。
ただ、委託化には当然デメリットも存在します。労務管理に掛かる労力の削減にはつながるものの、患者に対するサービスの質を向上させるためには、ある程度自院のスタッフが現場で考え、組織としてノウハウを高めていく必要があるでしょう。昨今、特に医療事務が外部委託されたことで、優秀な医事課員や医事課長が大幅に減ったと言われています。医事課長は、診療報酬請求の精度向上や院内の調整といった大きな役割を担っています。いわば医療現場と収入を結びつける重要な存在なのです。
最近、こうした“委託化の功罪”に気付き始めている医療機関が増えてきているように思います。すべてを外部に丸投げするのではなく、自院スタッフの成長を促し、組織としてノウハウを蓄えていこうとする医療機関では当然、スタッフの労務管理を行う管理職の重要性が高まっています。
病院の管理職が直面している異変4
日々進化する情報社会
優れた管理職が求められる背景として、最後にご紹介したいのが最近の情報社会の変化です。
これまでパソコンでしかできなかったことがスマートフォンなどのモバイル端末でできるようになりましたし、LINEやFacebook、TwitterといったSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の発達は、情報伝達のスピードと透明性を飛躍的に高めました。
医療機関によって、こういった環境の変化に対する敏感さはさまざまです。ただ、SNSによって自院の口コミがスピードを増して伝播していくことを理解し、上手な活用方法を考えられるかどうかで、スタッフや患者が集まる病院とそうでない病院がはっきりとしてきているように感じます。SNSに限らず、情報社会が著しい変化の過渡期にある今、医療業界の外にあるテクノロジーや環境の変化を感じ取って、リーダーシップを取っていく人材が必要とされているのではないでしょうか。
優秀な管理職は引き抜きも―高まるキャリアの流動性
ここまでの記事で解説してきたように、医療業界の変化に伴い、事務長や看護部長、医事課長といった管理職を求める声は昨今、特に高まっています。このような流れを受けて最近では、管理職を紹介するサービスも登場しています。
病院の経営が難しくなればなるほど、病院のビジョンを理解した上で経営課題を解決できる管理職が求められる傾向にあります。しかし、そうした求心力を持った管理職は決して多くありません。内部の人材を教育するにしても時間が掛かるため、外部からの採用を通じて解決に当たる医療機関も多いようです。
一般企業では、エグゼクティブサーチという、社長や部門長をヘッドハンティングする会社が存在します。これから医療業界でもそのような企業が増えていくことは間違いないでしょう。そして優秀な管理職のキャリアの流動性は高まり、報酬も上昇していくのではないでしょうか。
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