医療監視で指摘される「退院療養計画書」に作成義務はあるのか?―診療報酬請求最前線

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診療報酬請求最前線


病院の立ち入り検査・指導でもっとも身近なものに「医療監視」があります。正確には「医療法(医療法第25条第1項)に基づく立入検査」といい、最近はより細かな指摘も増え、とても厳しい指導が行われています。年1回とはいえ、指摘を受けることは避けなければなりません。なお、前年度の指摘事項が改善されていないと厳重注意(指摘)となり、最悪の場合は行政処分の対象になる可能性もあります。

医療監視では、医療安全や感染対策に関する指摘が多く見られますが、医事管轄の領域で、診療記録や個人情報保護の不備などを指摘されることも少なくありません。

医療監視で指摘されやすい指摘事項

まず、医療監視の区分定義と内容は次の通りです。

区分定義内容
指摘医療法に係る法令不備文書により改善を指示
文書指導法令不備のうち軽微なもの 通知に対する重大な不備
他法令の不備
文書により改善を指導
口頭指導 通知に対する不備等 口頭により改善を指導

東京都の状況報告(平成28年度 医療法第25条第1項に基づく定例立入調査の実施状況 報告書)では、指摘24.6%、文書指導69.2%、口頭指導6.3%と、明らかに「文書指導」が多いことがわかります。この文書指導の約半数は、「個人情報」の取り扱いを指導されているのです。ちなみに「個人情報」の取り扱いは、立入検査を受けた施設のうち、なんと約9割がなんらかの指導を受けているとのこと。よく見られる指導事項は次の通りです。

  1. 教育研修の未実施(従業員の監督)
  2. 業務委託契約書の守秘義務の不備(委託先の監督)
  3. 個人情報保護体制の不備(規程・公表、委員会等組織体制の整備)

「教育研修の未実施」とは、個人情報保護法の概要や個人情報を取り扱うときの注意事項、漏洩問題などを病院スタッフに周知し、個人情報保護体制を維持するための組織教育が行われていないことを意味します。事実、個人情報保護の教育研修は最低でも年1回、定期的に開催すべきとされているので押さえておきましょう。

次の「業務委託契約の守秘義務」とは、一般的に業務委託契約を実施する際に委託職員の個人情報の保護だけでなく、「守秘義務」も誓約させる必要性を意味します。守秘義務とは業務で知り得た情報を外部に漏らさないという約束(義務)のことで、委託業務であっても委託中はもちろん、契約満了後も守秘義務の誓約が必要です。

続いて、「個人情報保護体制の不備」は、法的要件上、基本的な体制の不備があることを指しています。たとえば、個人情報保護規程の整備や公表の義務、電子カルテなどの安全管理措置、開示手数料の院内掲示など、各所に問題が見られるようです。とくに個人情報保護法は改正(2017年5月全面施行)が行われ、医療監視においても個人データの漏洩に対する報告・連絡体制の整備は、必ずチェックされます。

医事課を悩ます退院療養計画書の取り扱い

次に医事関係の中で、気をつけておきたい点に触れておきたいと思います。医療監視が医療法に基づく指導のため、院内のガバナンスや医療安全、院内感染、施設管理に比重があり、医事の領域は小さいと感じていたかもしれません。わたし自身も診療報酬に関わる適時調査や個別指導とは重さが違う印象があります。

しかし、最近は「帳票・諸記録」に対し、指摘・指導されることが意外と多いのです。重要なところでは、入院診療計画書や退院療養計画書の作成と交付、そして、病名・症状やインフォームドコンセント、同意書などの記載や様式の管理をめぐる診療記録の取り扱いなどについて指摘等があります。

ここで、読者の皆さんは上記にある「退院療養計画書」は必ず作成しなければならないのか?という、疑問をお持ちになったのではないでしょうか。

最後は、「退院療養計画書」について詳しく説明したいと思います。そもそも本計画書は、医療法上で次のように定められています。

病院又は診療所の管理者は、患者を退院させるときは、退院後の療養に必要な保健医療サービス又は福祉サービスに関する事項を記載した書面の作成、交付及び適切な説明が行われるよう努めなければならない。(医療法第6条の四第3項)

退院療養計画書は、診療報酬上で「精神科退院指導料」に付帯する計画書と間違いやすく、混同する方が時々見受けられるので注意が必要です。

医療法の一文の末尾にある「努めなければならない」という言葉の意味は、巷で「努力義務」と言われているように、必須ではなく「実施することが望ましい」という意味に見えます。

しかし、過去の資料を見るとほぼ必須のようにも捉えられます。そもそも、この退院療養計画書の作成は、2006年度の診療報酬改定で評価項目(退院指導料)が廃止、その後、第5次医療法改正によって新設された書式です。当時、全件作成すべきかの質問に対する行政側の回答では「退院療養計画書は少なくとも、退院後の在宅療養に当たり保険医療サービス又は福祉サービスの必要が見込まれる患者に対しては、退院療養計画書を作成、交付及び適切な説明を行うべきである」といった説明もされていました。

現在にいたっては、地域医療構想や入退院支援の動きが充実していますので、法的制約だけで時代遅れ感が否めないのも確かです。したがって、実際のところ常に指摘はされるものの、努力義務という一面もあり、作成している医療機関が少ないのが現実なのです。

<編集:塚田大輔>

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