入院支援がもたらす効果とは~周術期管理チームに熱視線~―診療報酬請求最前線


入退院支援センターについては今回が3回目で、最終回です。今回は、センターの心臓部ともいえる、入院時のコーディネート(支援)業務について解説します。

多職種連携による入院支援の効果

入退院支援センターの入院に対する活動は、「入院時の煩雑な業務をいかに適切かつ合理的に、医師に代わって運用するか」が基本になります。具体的に説明すると、入院説明や入院時の術前検査、合併症の他科診察など、すべてを医師に任せるのではなく、多職種が連携し、外来の段階で役割分担を決め、段取り良く進めていくことに着眼点を置いた活動です。

この効果は、適切な対応が合理的に進むという点で、医療の質の向上にも病院経営的にも期待される部分です。例えば、これまで入院してから病棟で行われてきた術前検査は、徹底して外来で実施されるため、DPC制度上の在院日数短縮や包括請求への対応にも効果的です。また、術前診察や糖尿病の合併症への対応を速やかに外来で済ませ、看護においては入院時看護記録作成に関わる情報収集(アナムネ等)を入院前に済ませることができ、計画的な診療と病棟看護師の負担軽減にもつながります。

周術期管理チームに熱視線

最近、特に話題にのぼっているのは、手術目的の入院に対する周術期管理チームの導入です。これは、手術前に済ませなければならない、術前の検査や麻酔科の診察、合併症の診断など複雑な管理を医師に代わって医師事務作業補助者がオーダーし、手術までに必要な医療提供を多職種協同で組織的に効率よく行なっていくチーム医療です。

こうした入院時の介入は、周術期の管理における一部分に過ぎませんが、周術期管理に関するチーム医療については、日本麻酔科学会が積極的に推し進めています。近年では、麻酔科診療の質の向上を目的に、「周術期管理チーム認定制度」という専門資格も立ち上げています。この制度では、麻酔科医のほか、看護師、薬剤師、臨床工学技士などの医療専門職に対し、周術期管理の専門教育をおこなっています。2018年度の診療報酬改定では、この周術期管理チームにかなり注目が集まると思われますので、意識しておいてください。

周術期に関する準備を、入院前に外来で行うことの効果は、前述したように、在院日数の短縮や病床稼働に繋がる経済的なメリットも期待できますが、やはり一番のメリットは、患者満足度です。というのも、チーム医療で取り組むことによって、患者への対応が向上し、患者側も安心して入院に向けた準備ができるといった効果が現れるからです。持参薬に関して薬剤師がかかわることや栄養面で心配な患者に栄養相談を受けていただく――。さらには、口腔ケアが必要で、誤嚥性肺炎の予防をかねて歯科の診察なども積極的に計画するといったように、これまで主治医の指示待ちでは得られなかった入院前の高いレベルの診療プロセスが実現されます。

さて、これで入退院支援センターの解説は終わりです。退院支援の解説を残して終了しますが、こちらは極めて重要なテーマですので、改めて取り上げます。ぜひ、ご期待ください。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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