病院経営を支える「右腕」の魅力と求められるスキル―株式会社LCメディコム 太田祐樹マネージャー

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病院の淘汰が進む今、健全な病院経営を進めるためには理事長・院長の右腕にあたる経営人材が求められています。そのポジションを目指して病院で働く選択肢もあれば、あえて外側から関わり、複数の医療機関を運営するという選択肢もあります。今回取材したのは病院経営のサポート事業を行う株式会社LCメディコム(東京都港区)マネージャーの太田祐樹氏。外部から経営に関わるおもしろさ、そして病院経営を進める中で求められるスキルについても伺いました。

<インタビュイープロフィール>
株式会社LCメディコム メディカル事業部 マネージャー
太田 祐樹 氏

大手医療系コンサルティング会社にて病院を対象にした経営戦略策定、収益改善、事業再生業務等に従事。前職で70病院以上の経営に関与し、トップコンサルタントとして成果を残す。LCグループに入社後、メディカル事業部マネージャーとして事業継承業務や医療法人の経営適正化を図る。

第三者ではなく、右腕になれるプレッシャーとやりがい

-はじめに、病院経営をサポートする事業の魅力について教えてください。

人の命を守る地域医療に関われる、社会的意義が大きい仕事だと思います。

特に最近は、これからの医療には経営の視点が欠かせないと考えています。一方、医師は患者様の診療を第一にしていますし、その他の医療従事者も人を助けたい思いで資格を取っていますので、医師や医療専門職が経営を推進するには限界があるのではないでしょうか。

そのため、医療経営に特化した人材が必要とされます。経営のプロフェッショナルとして医療機関に価値を提供すること、これが日本の医療業界の発展、地域医療の存続のために必要な職種ですし、サービスであると思っています。

-なるほど。今後は病院経営に精通した人材が必要になるということですね。ところで、太田さんは現在に至るまではどのような経験を積んできましたか。

私は医療コンサルティング会社に7年ほど勤めた後、LCグループに入り、現在に至ります。新卒時から医療業界で働いているのは、主に2つの理由があります。

1つは、父の死から命の大切さを学んだからです。私は4歳の頃に父を亡くし、母、姉と3人暮らしの生活でした。我が家の収入源が限られていることもあり、たくさんの方に支援いただきました。この体験から人が亡くなることの大変さを理解し、人の命を救う医療に携わる仕事をしていきたいと思いました。

2つ目は、経営者が社会に与える影響の大きさを感じ、医療経営に関わりたいと思ったからです。医師を目指した時期もあったのですが、大学受験の頃に堀江貴文さんなどが世間を賑わしていて、経営者の社会的インパクトは非常に強いと感じました。その後、現実社会における問題の解決を図る慶應義塾大学の理工学部管理工学科に入学し、経営者を目指そうかなと考え始めたのです。

-医療コンサルティング会社の次のステップとしてLCメディコムを選ばれたのはどのような経緯でしょうか。

結論から言うと、将来、病院を経営したいからです。最初の会社ではコンサルタントという立場で、医師や経営者を助けたいという思いで仕事をしてきました。結果、トップクラスの売り上げ実績を作ってきましたし、「こうすれば病院が良くなる、利益を上げられる」という施策を、自信を持って提案できるようになりました。しかしコンサルタントはどこまでいっても第三者で、クライアントの経営リスクを負いません。私は日々人の命を救うために必死に現場でチャレンジしている医療職の方々を見てきました。そのような方と同じようにリスクをとって経営に関与したい。今後はコンサルタントという第三者的な役割ではなく、当事者として経営したいと考えています。

LCメディコムの事業は、病院に投資をして経営支援をしていくので、現場の経営層とともに意思決定まで関わることができます。私はそこに魅力に感じたので、転職を決めました。

-LCメディコムとコンサルタント時代では、現在の立場の違いをどのように感じますか。

1つは意思決定の仕方が大きく違います。先ほども述べましたが、コンサルタントは第三者なので、理事長・院長に納得してもらうための資料作りやマーケティング調査をして、決めてもらう立場になります。そのため、私が「絶対にこれをやったほうがいい」と思っても、なかなかスムーズにいかない場面をたくさん経験してきました。

ただ、当社であれば「こうしたほうがいい」と思うことは積極的に提案できます。もちろん、理事長や職員の理解を得ることは必要ですが、ある程度の裁量権が委ねられているので、内容によってはこちらが主体性を持って関わることができます。実際に、私は病床のダウンサイジングや職員の給与改定などに関わってきました。

2つ目に、価値提供の仕方に違いがあります。コンサルタントはある程度の時間を費やして、それに対してお金をもらう側面が強いと思っています。一方、当社は、新規事業を立ち上げたり、グループ化によって共同購買の仕組みを整えたり、法人に直接利益をあげて価値を提供できます。

-逆に、意思決定に近い立場だからこそ苦労されることはありますか。

もちろん、あります。当事者だからこそ、リアルな経営に関わらなければいけない点です。そもそも資金繰りがうまくいっていなければ資金調達から責任を持って進めなければいけませんし、医師や職員の退職も大きなリスクです。特に医師の退職は急に発生するので、そのあとの病院運営を棄損させないためにどうすべきかなどは非常に苦しみます。

ただ、背負うリスクが大きい分、リターンも大きいです。それは仕事のやりがいもそうですし、サポートに入った医療機関が再建すれば、自分たちの手で地域医療を守ったことにもなるので充実感があります。

専門性の前に、ヒューマンスキルが試される

-LCメディコムは、どのようなメンバーが集まっているのでしょうか。

2つのパターンがあります。

1つは私のような医療コンサルティング会社から転職してきたメンバー、もう1つは医療法人の課長や事務長など、現場のマネジメントを経験したメンバーです。

ただ、入社後は特定の課題に対して取り組むのではなく、経営全体を考えなければいけません。資金繰りもそうですし、利益改善策の構築や人の採用、組織づくりもしなければならないので、仕事の幅が広がり、最初は苦労されるかもしれません。

-太田さんも、はじめは苦労されましたか。

もちろんです。コンサルタント時代に、戦略策定や利益改善はしてきましたが、LCグループに入社して医療法上の課題や役員交代に伴う事務手続きなど、把握していない業務も多くあると気付きました。とはいえ、私がすべてを把握しておかないと現場の事務長にも助言ができないので、一定の勉強時間が必要でした。

-勉強が必要なのは大前提として、病院経営を進めるためには、どのような能力が求められるのでしょうか。

本当に一番大事だと思うのは、コミュニケーション能力です。専門スキルの前に、人間的なヒューマンスキルがすごく大切です。投資先の法人経営に介入することは、極端な話、はじめは「この人たちは何者だ」と思われている環境に入っていかなければなりません。そこでは、相手の心に入っていくコミュニケーションが求められます。

スキルについては、何かしらの専門性があれば信頼を得られると思います。改善策の立案などは組織としてバックアップできるので、財務会計でも人事でもいいですし、コスト削減、診療材料・医療機器・医薬品等について知見があるなどでもいいのではないでしょうか。

-太田さんが病院経営に関わる中で、医療業界の直近での変化、今後注目したいトピックなどあれば教えてください。

この10年くらいでは制度的な変化はあまりないと思います。ただ、病院経営に関わる中で実感するのは、人口減少に伴ってダウンサイジングをしていかなければいけない医療法人がたくさん出ていることです。特に地域によっては行政の財政難から公立病院は資金援助も期待できず、立ち行かなくなってきているのは大きな課題と感じています。

総じて、これからは、倒産する民間病院が多数出ると思っています。診療報酬改定では年々点数が落ちて病院経営は厳しくなりますし、人材の高齢化が進んでいくので医師の採用も今までと同じやり方では成り立たない。特に都心部は給与単価が高く、地価も高いなど、経営コストが高く深刻です。今後、経営が破綻する病院がどんどん増えていくことになるでしょう。あとは事業承継も問題です。理事長が高齢になって、引き継ぐ医師が誰もいないことが多数起きると懸念されます。ですので、それを我々がどう支えて、立て直していくかが問われていると考えています。

-ありがとうございました。最後に、キャリアに悩む病院事務職の方々へアドバイスをお願いします。

組織に所属していると、どんなに実力や才能を伸ばしてチャレンジしようと思っても、現在の環境に限界を感じてしまうこともあると思います。もし、そう感じていたら、今まで得たノウハウは他の環境でも通用するのかというチャレンジをしていただいたほうが、ご自身の価値を上げることにつながると思います。

現在、病院事務職は世間的にもまだまだ肩身の狭い立場に立たされているのではないでしょうか。しかし、経営に精通した事務方がいないと病院経営は成り立ちません。事務職が優秀な病院は経営もうまくいっていますので、理事長・院長の右腕になり、事務職への注目を集めてほしいと思います。

<取材・文:浅見祐樹、編集:小野茉奈佳>

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