著者:野末睦(あい太田クリニック院長)
庄内余目病院で導入したコンサルティングで最も成功し、また10年近く継続しているものは、(株)ミレニアメディカル(以下、ミレニア社)による「創傷ケアセンター」に対するコンサルティングです。
そもそも、創傷ケアセンターを作りませんかというダイレクトメールが、2006年4月にミレニア社から届き、すぐに導入を決断。同年の10月1日に開設することにし、さっそく準備に入りました。準備期間に入ったミレニアからのコンサルティングは、すべてがマニュアル化されていて、それに沿って、4か月間で組織づくりをし、そして足りない臨床分野を研修し、広報していきました。
職員4人を米国研修に派遣
組織づくりでは、当初わたしが想像していた以上の構成で、院長、事務長、看護部長を巻き込み、その下に創傷ケアセンター長、そして各スタッフが連なりました。その中には、総務や医事課といった事務系、そして広報担当も入り、全員が同じコンセプトを持ち、その進行状況を何度かの会議で共有していきました。また重要な研修として、医師のわたしと看護師2人。そして広報担当の事務職員一人の計4人が参加した1週間の米国研修がありました。
講師は米国の足病外科専門医の李家中豪(りのいえ・ちゅうごう)医師。ミレニア社の臨床最高責任者です。足病外科という分野は日本にはなかったため、消化器外科医のわたしが知識を総動員し、さらに新しい知識を吸収してきました。また看護師2人が、創の評価や処置の方法を学び、また事務職員は、広報関係を主体に学びました。そして全員で、日本にはほとんど存在しない「創傷ケアセンター」の全体像を肌で感じて帰国したのです。
そして開設が近づくと、広報活動を本格化させ、新聞記事はもちろん、テレビ局の取材にも来てもらうように手配しました。このようにして、無事に開設した創傷ケアセンターですが、その後も、ミレニア社の指導の下に、定期的に地域に対しての広報活動として、講演会や勉強会を頻繁に開催していきました。
受け手の実力が上がればコンサルティングの質も上がる
また臨床面では、月に1回、テレフォン・カンファランスと銘打たれたカンファランスを行っていきました。これは患者さんの患部の写真をインターネットで共有しながら、米国の李家先生と電話で治療法を討議するものです。これは開設当初よりも、当院での臨床レベルが上がった最近の方がより役に立っているような気がします。まさに大リーガーのコーチを受けているような気分です。こちらの実力が上がったからこそ、そのアドバイスの意味を深く理解し、実践に結び付けていけるのだと思います。臨床の内容にまで踏み込んだコンサルティングは、まだ日本ではほとんどありませんが、このような体験から、わたしはとても大切なものだと感じています。
「病院の発展にコンサルティングは不要でしょうか?」への私的結論
コンサルティングは決して不要ではなく、プロ野球選手がプロのコーチにアドバイスをもらってレベルアップしていくように、病院もコンサルタントの力を得ることで発展できます。特に、診療報酬改定などで病院の経営環境が厳しさを増すにつれて、病院経営者が的確な判断を下すためには、経営分析や戦略提案をしてくれるコンサルティングが必要になってきています。さらに言えば、病院の状況に応じた適切なコンサルティングこそ、病院を飛躍的に変化、発展させます。
野末睦(のずえ・むつみ)
筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。