「医療機関別係数」とは ~いまさら聞けない医療・介護業界用語Vol.30

いまさら聞けない医療・介護業界用語

医療機関別係数とは?DPC/PDPSの根幹をなす仕組みです

医療機関別係数とは、DPC/PDPS(診断群分類別包括評価支払制度)において、各病院の機能や診療実績に応じて定められる独自の係数です。この数値が、DPCにおける1日あたりの入院料を算出する計算式に用いられるため、病院の収益に直接的な影響を与えます。

DPC/PDPSにおける診療報酬計算の基本

DPC/PDPSにおける1日あたりの包括範囲点数(入院料)は、以下の計算式で算出されます。

1日あたりの包括範囲点数 = 診断群分類点数 × 医療機関別係数

診断群分類点数は、傷病名や手術・処置の有無などによって全国一律で定められています。一方で、医療機関別係数は病院ごとに異なるため、同じ診断群分類の患者さんを診療しても、この係数が高い病院ほど得られる診療報酬も高くなります。

医療機関別係数が病院経営に与えるインパクト

医療機関別係数は、単なる診療報酬計算のためだけの数値ではありません。これは、国が各医療機関の機能をどう評価しているかを示す指標とも言えます。係数の内訳を分析することで、自院の強みや弱みを客観的に把握し、経営改善に向けた具体的な戦略を立てるための重要なデータとなります。

医療機関別係数を構成する4つの係数

医療機関別係数は、以下の4つの係数を足し合わせて構成されています。それぞれの係数が持つ意味を理解することが、制度を理解する第一歩です。

医療機関別係数 = ①基礎係数 + ②機能評価係数Ⅰ + ③機能評価係数Ⅱ + ④激変緩和係数

①基礎係数

基礎係数は、病院の種別(大学病院本院、DPC特定病院、DPC標準病院)に応じて定められる、最も基本的な係数です。これは、各病院が担っている医療機能の基礎的な部分を評価するものです。

②機能評価係数Ⅰ

機能評価係数Ⅰは、医師や看護師の配置、臨床研修の実施といった体制面を評価する係数です。具体的には、人員配置や研修機能などが評価項目となっており、医療の提供体制が充実している病院ほど高い評価を受けます。

③機能評価係数Ⅱ

機能評価係数Ⅱは、診療内容の質や効率性、地域医療への貢献度などを評価する係数で、医療機関別係数の中でも特に重要視されています。この係数は6つの指数から構成されており、病院の努力や工夫が反映されやすい部分です。そのため、病院経営改善を考える上では、この機能評価係数Ⅱをいかに高めるかが鍵となります。

④激変緩和係数

激変緩和係数は、制度改定によって病院の収入が大幅に増減しないように調整するための係数です。前年度の係数と比較し、変動が大きい場合に適用される経過措置的な位置づけとなります。

機能評価係数Ⅱを構成する6つの指数と改善のポイント

病院経営改善の鍵を握る機能評価係数Ⅱは、以下の6つの指数で構成されています。それぞれの指数が何を評価しているのかを理解し、自院の課題に合わせた対策を講じることが重要です。

①保険診療指数

適切な保険診療が行われているかを評価する指数です。レセプト内容の質や、適切なコーディングが求められます。日々のレセプト業務の精度向上が直接的に指数の改善に繋がります。

②効率性指数

在院日数の短縮など、医療資源をいかに効率的に活用しているかを評価する指数です。地域の平均在院日数と比較され、短いほど高く評価されます。クリニカルパスの見直しや、地域連携による早期退院支援などが有効な対策となります。

③複雑性指数

診療している症例の複雑さを評価する指数です。手術や処置の中でも、特に難易度の高い医療を提供している病院が高く評価されます。自院の専門性を高め、より高度な医療を提供できる体制を構築することが求められます。

④カバー率指数

地域の基幹的病院として、どれだけ幅広い症例に対応できているかを評価する指数です。対応している診断群分類の種類が多いほど高く評価されます。地域の医療ニーズを分析し、対応可能な診療科や疾患の幅を広げていくことが重要です。

⑤救急医療指数

救急医療への貢献度を評価する指数です。救急車の受入件数や、入院に繋がった割合などが評価項目となります。救急応需体制の強化や、地域の救急隊との連携促進などがポイントです。

⑥地域医療指数

地域医療計画において、自院がどのような役割を担っているかを評価する指数です。がん診療連携拠点病院や災害拠点病院などの指定を受けていることや、へき地医療への貢献などが評価されます。

自院の係数を確認する方法

自院の医療機関別係数や各指数の値は、厚生労働省から公表される資料で確認できます。

厚生労働省の公表資料から確認する

毎年、次年度のDPC制度改定に関する情報が、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)から公表されます。その中の「DPC導入の影響評価に係る調査」などの関連資料に、全DPC対象病院の医療機関別係数が一覧で掲載されています。これらの資料を確認し、比較することで客観的な現状把握に繋がります。

医療機関別係数を理解し、病院経営の改善へ

医療機関別係数は、DPC病院の経営を左右する重要な指標です。特に改善の余地が大きい機能評価係数Ⅱの各指数に注目することで、自院の強みと弱みが明確になります。 公表データを活用して自院の立ち位置を客観的に分析し、係数改善に向けた具体的なアクションプランを策定・実行することが、持続可能な病院経営を実現するための鍵となるでしょう。

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