第201回社保審医療保険部会 ~資料の要約

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2025年10月23日、第201回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。病院経営に関連が深いポイントをまとめます。

2026年度診療報酬改定の基本認識

次期診療報酬改定に向けた基本方針の議論が開始されました 。基本認識として、物価・賃金の上昇、人材確保の困難性、現役世代の負担抑制の必要性などが挙げられています 。これを踏まえ、以下の4つの基本的視点が示されました 。

  1. 物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応
  2. 2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進
  3. 安心・安全で質の高い医療の推進
  4. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

特に、視点1が重点課題と位置づけられ、物価高騰への対応や医療従事者の賃上げ・人材確保に向けた取り組みが急務であるとされました 。具体的には、人件費、委託費、材料費等の高騰を踏まえた対応や、ICT・AI等を活用した業務効率化・負担軽減、タスクシフト/シェア、チーム医療の推進などが方向性として挙げられています 。

「2040年を見据えた提供体制の構築」では、医療機能の分化・連携、在宅医療や介護との連携強化が重要視されています 。「安心・安全で質の高い医療の推進」では、医療DXの活用や重点分野(救急、小児・周産期、がん、精神医療等)への評価が挙げられています。「効率化・適正化」では、後発医薬品の使用促進や医薬品の適正使用などが示されました。

全世代型社会保障と高齢者医療制度の見直し

後期高齢者の医療費増大に対し、世代内・世代間の公平性を確保し、全世代で支え合う仕組みの構築が引き続き議論されています 。

  • 後期高齢者の負担見直し
    2022年10月から導入された後期高齢者の2割負担 に加え、今後の負担のあり方が継続的な検討課題となっています。特に、3割負担となる「現役並み所得」の基準(課税所得145万円以上等)は2006年以降変更されておらず 、現役世代の収入増や負担増を踏まえた見直しが議論されています 。ただし、見直しにより現役世代の支援金負担が増加する可能性も指摘されており 、慎重な検討が求められています 。
  • 前期高齢者財政調整
    2024年度から、前期高齢者(65~74歳)医療費の保険者間調整において、被用者保険者の報酬水準に応じた調整(報酬調整)が導入されました 。これにより、報酬水準の高い健保組合等の負担が増加しています。
  • 拠出金の動向
    健保組合や協会けんぽの義務的経費(法定給付費+高齢者医療への拠出金)に占める高齢者医療への拠出割合は高く、健保組合で45.0%、協会けんぽで33.8%(いずれも2025年度予算ベース)となっています 。現役世代の負担感は依然として大きな課題です。

出産に関する支援と費用負担の動向

少子化対策の一環として、出産に関する経済的支援の強化と費用の透明化が進められています。

  • 出産育児一時金の増額と費用動向
    2023年4月に出産育児一時金が原則50万円に増額されました 。しかし、正常分娩の平均出産費用はその後も上昇傾向にあり、2024年度上半期は約51.8万円となっています 。地域差・施設差も依然として大きい状況です 。
  • 出産費用の見える化
    2024年5月より、施設ごとの費用やサービス内容を比較できるウェブサイト「出産なび」が厚生労働省により開設・運営されています 。情報の充実や機能改善が今後の課題とされています 。
  • 2026年度目途の保険適用導入検討
    「こども未来戦略」に基づき、2026年度を目途に正常分娩費用の保険適用導入を含めた更なる支援強化が検討されています 。これに関連し、「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」では、標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた制度設計を進めることが整理されました 。保険適用の範囲(「標準」の内容)、窓口負担のあり方、既存の医療保険制度との関係整理、周産期医療提供体制への影響などが今後の論点となります 。産科医療機関からは、保険適用による経営悪化や分娩取扱中止への懸念も表明されています 。

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