増える転院・退院困難事例に、患者・家族の拒否も―診療報酬請求最前線

前回から診療報酬改定について書いていますが、先日、なかなか退院できない患者さんのことが印象に残りましたので、番外編で、最近の転院・退院事情をお伝えしたいと思います。

困難を伴う、救急患者の保証人確保

筆者は高度急性期の医療機関に勤務していますが、退院支援加算1を取得してソーシャルワーカーを病棟に配置していても、転院や退院の困難な事例に出くわすことが増えてきました。

先日は救急車で運ばれて緊急入院した患者さんから転院を拒まれたケースがありました。その方は入院時の保証人欄を空欄にしたまま診療を優先し、脳梗塞から一命を取り留めたという経緯があります。その後、回復傾向に至ったため、回復期リハビリテーション病院へ転院してもらおうとした時、「保証人が立てられない」と転院を拒まれてしまったのです。
この患者さんにはご親族がいましたが、本人が保証人依頼を拒んでおり、代わりに友人・知人への依頼を望んでいましたが、それもなかなか上手くいきませんでした。最近の転院困難な事例では、意外とこのようなケースが多く見られています。

高度急性期の救急搬送では、拒まれない限り、全面的に患者を受け入れます。地域医療構想の考え方を踏まえ、病床の機能分化を優先すれば、当然、次の医療機関へ転院させることが必要です。しかし、現実は先ほど紹介した例のように、多くの困難事例に直面します。多くの事例は、単身世帯で身寄りがなく保証人を立てられないようなケースですが、単身世帯でも生活保護受給者の方は順調に進むこともあります。

患者家族が故意に転院を拒むことも

また、慢性疾患や治療経過が良くないケースでは、家族が極度に転院を拒むことも増えています。「まだ治療が終わっていないのだから転院は受け入れられない」「経過が良くないのは病院の治療が悪い」といったような理由をつけて、転院を拒むのです。そもそも転院では、転院先病院ごとに必要な手続きを経なければならないため、行く先々でトラブルを起こせば転院の手続きは成立しません。考え方によっては、転院を拒む患者家族側にとって極めて有利な状況にあるといえます。

このように高度急性期、特に救急医療からの患者の転院・退院支援は困難を伴います。今回の診療報酬改定においても退院支援や入退院関係に、てこ入れされる方向性が見えてきていますが、病院事務職はいかに早く手続き困難事例を見つけられるかが鍵となります。最終的にこじれた段階で介入しても全く手が出せないので、あらゆる手を施すための時間を確保し、その得られた時間の中できめ細やかな対応にあたることが求められています。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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