差額ベッド代の患者トラブルを回避する方法―診療報酬請求最前線

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近頃、特別療養環境室(通称:特別室)、いわゆる“差額ベッド”の入室に対する料金徴収の際、行政機関に病院の不当を訴える患者が増えたように感じます。
そもそも特別療養環境室とは、保険給付に加えて特別な料金(患者の自己負担)を可能とした保険外併用療養費のうち、選定療養と呼ばれるものですが、最近はインターネット上で「差額ベッド代の支払いを上手に逃れる方法」や「入院費用を抑える知識」といったテーマの記事が目につきました。わたしは、少なからずともこうした記事が影響していると考えています。

差額ベッドの基本ルール

特別療養環境室の基本的な病院側のルールは、差額ベッドの部屋に入室を希望する患者を対象に、設備や構造、料金などを懇切丁寧に説明し、その上で同意を取得(署名)することが絶対的な条件です。一方で、治療上の必要がある一定の病態の方からは徴収できないルールになっており、次の5項目が例示されています。

1.救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者。
2.免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者。
3.集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者。
4.後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者
(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
5.クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)

厚生労働省通知(※)より抜粋

医療現場では、特に1及び2の入院が日常的に見られるわけですが、深夜の救急患者で大部屋に入れられない時、さらに感染症の疑いがあるような時には、差額ベッドの選択肢しかないのが正直なところです。この際、医療機関は当該説明をしっかり行って患者から同意書を取得し、差額ベッド代を徴収していますが、患者側からすると「よくわからないうちに同意を取得された」という印象を持つことがあるようです。このような場合、退院時に室料を請求されると、往々にしてその額の大きさに驚き、支払いを拒むことがあります。

医療機関が取るべき対策

わたしは、この特別療養環境室のルールは、あくまでも患者側に有利にできていると考えています。なぜなら、いかに丁寧に説明して同意を得たとしても、のちに説明が不十分であったと言えば、患者側はこれを理由に支払いを拒めるからです。さらに、行政機関に持ち込むことで、医療機関は不利な立場に追い込まれるため、やむなく室料を減免しているのではないかと考えています。

したがって医療機関が取るべき対策は、緊急入院で差額ベッドに入った患者は、入室後も重ねて室料の確認を取るような、特別な体制を整備する必要性があると考えます。しかし、このような体制は業務負担が大きいため、合理的な方法を検討したほうがよいでしょう。例えば、緊急・救急入院患者のデータと特別療養環境室入室データから対象患者を絞り込み、退院支援部門と医事課が連携し、退院支援活動の一環とするのもひとつの方法です。これに看護部も巻き込んで行えると望ましいでしょう。このような体制が整えば、未収金の対策にもつながるのかもしれません。ぜひ、ご検討を!!

※厚生労働省通知『「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について』

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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