救急医療管理加算の厳格査定を乗り切るには―診療報酬請求最前線

平成28年(2016年)度の診療報酬改定以降、救急医療管理加算の査定は一層厳しくなり、最近は特にその勢いが増しています。しかし、その一方で、恐れず再審査請求を行うと、復活するものも少なくありません。保険請求事務を担当する側としては、適切な保険診療に努めることは第一であるとしても、査定を恐れて萎縮し過ぎてしまっては、経営面に影響が出るのも正直なところです。

いつから「重症な状態」なら算定可能?

この救急医療管理加算は、1と2の2種類の構造になっており、加算1(900点/日で7日限度)は次のアからケの9項目に指定された重症者の状態が条件になっています。加算2(300点/日で7日限度)は、これらの状態に準ずる状態という条件の下、算定が可能となります。

いずれも、算定期間中に常時これらの重症な状態である必要はありません。重要なことは、入院時に既にこれらの重篤な状態にあることが絶対条件となることです。したがって、入院時にこれらに該当する病態にあっても「◯◯になる恐れ」といった、入院後に悪化の可能性があるといったような記載が症状詳記に見られると査定されます。

救急医療管理加算1の対象になる状態
ア. 吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態
イ. 意識障害又は昏睡
ウ. 呼吸不全又は心不全で重篤な状態
エ. 急性薬物中毒
オ. ショック
カ. 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
キ. 広範囲熱傷
ク. 外傷、破傷風等で重篤な状態
ケ. 緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態

また、「ケ 緊急手術」のケースでは、緊急手術が入院時に実施されるような状態を指しており、骨折で数日後に手術が予定されるような入院は認められません。
「ク 外傷」も同様です。しかし医師の中には、かなり軽い外傷で加算1を取ろうとするケースが多く見られています。本当に加算1の対象になると考えるなら、多発外傷や挫滅など、かなりの重篤な状態を表すことを証明する病名や症状詳記の記載が必要になってきます。

曖昧な算定要件に対処

多くの医療機関では、この状態を説明した様式などを用いて、医師から医事算定係に連絡するような体制が見られますが、あまり振り返る機会がありません。そのため、査定された事例の検証やDPCデータを用いて算定患者の病名を集計し、可視化することは効果的でおすすめです。

算定要件としての「重症患者の状態」に曖昧なところがある以上、過少も過剰も防止できるような体制を整備し、適切な請求を維持したいものです。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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