今回解説するのは「慢性腎臓病透析予防指導管理料」です。慢性腎臓病透析予防指導管理料は、透析予防が必要な患者に対し、慢性腎臓病の透析予防診療チームが指導を実施した場合に算定できる医学管理料です。施設基準や算定できる患者像について正しく理解しておきましょう。わかりづらい疑義解釈もありますので、併せてご紹介します。
医学管理料について
医学管理料は、医師による患者指導や医学的管理そのものを評価する診療報酬項目です。それぞれに算定要件や算定回数の制限など、請求上留意すべき点が多いです。適時調査や個別指導対策を考慮し、第一に医学管理のための体制整備をしっかりと行い、第二には医学管理を実施したことを証明する診療録への記載が大切です。
慢性腎臓病透析予防指導管理料の概要
慢性透析患者数の急激な増加による加算の新設
2024年度診療報酬改定により新設された「慢性腎臓病透析予防指導管理料」。これは、通院する慢性腎臓病で透析のリスクが高い患者を対象に、多職種が生活習慣に介入し重症化を予防することを評価した医学管理料です。なお、糖尿病患者、透析中の患者は除外されます。その理由は、すでに糖尿病透析予防指導管理料によって評価されているためです。
この管理料が新設された背景には、慢性透析患者数の急激な増加があります(図表1)。
慢性腎臓病は、腎臓のろ過機能が低下またはタンパク尿が3カ月以上持続した状態で、腎障害が慢性的に続く病態の全てを捉えたものです。代表的なのは、糖尿病性腎症の代謝性疾患や腎盂腎炎などの感染性疾患です。また、先天性疾患の多発性のう胞腎、動脈硬化や持続した高血圧による高血圧性腎硬化症、そして腎がんも原疾患に挙げられます。
慢性腎臓病はCKD(Chronic Kidney Disease)の略語が用いられ、腎機能「推算糸球体ろ過量(eGFR)」と「タンパク尿」の関係で進行度が表されます。厚労省での議論の際には、CKD重症度分類(緑色;正常、黄色:軽度、オレンジ色:中等度、赤色:高度)と進行度別の患者数の割合も示されています(図表2)。今回、多職種による透析予防効果を慢性腎臓病透析予防指導管理料が設計されました。
図表1 慢性透析患者数と有病率の推移(中医協総会 令和5年12月8日)
図表2 慢性腎臓病の重症度及び患者の分布(中医協総会 令和5年12月8日)
【慢性腎臓病透析予防指導管理料の算定要件】
資料1 診療報酬の算定方法(点数表)の要約
下記のイ、ロに対し月1回に限り算定
イ 初回の指導管理を行った日から起算して1年以内の期間に行った場合300点
ロ 初回の指導管理を行った日から起算して1年を超えた期間に行った場合250点
注2 区分番号B001の9に掲げる外来栄養食事指導料及び区分番号B001の11に掲げる集団栄養食事指導料は、所定点数に含まれるものとする。
注3 情報通信機器を用いて行った場合は、イ又はロの所定点数に代えて、261点(イ)又は218点(ロ)を算定する。
透析予防診療チームに必要な人材の経験年数と職種に注意
慢性腎臓病透析予防指導管理料は、透析予防が必要な患者(医師が透析予防に関する指導の必要性があると認めた外来患者)に対し、慢性腎臓病の透析予防診療チーム(医師、看護師<もしくは保健師>、管理栄養士)が、患者の病期分類、食塩制限、蛋白制限等の食事指導、運動指導、その他生活習慣に関する指導等を実施した場合に算定できる医学管理料です。指導上の要件には、個別に指導を行うことや日本腎臓学会のガイドライン等(エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン)に基づく指導となるよう定められています。また、運用上には次のことが指示されています。
- 慢性腎臓病のリスク要因に関する評価を行い、その結果に基づく指導計画書を作成する
- 慢性腎臓病のリスク要因に関する評価結果、指導計画、実施した指導内容を診療録、療養指導記録、栄養指導記録に添付又は記載する
【慢性腎臓病透析予防指導管理料の施設基準】
資料2 施設基準の要約
○透析予防診療チームの構成
・慢性腎臓病指導の経験(5年以上)を有する専任の医師
・慢性腎臓病指導の経験(看護師3年以上、保健師2年以上)を有する専任の看護師又は保健師
・慢性腎臓病指導の経験(3年以上)を有する専任の管理栄養士
※上記のうち少なくとも1名以上は常勤である<その他の要件>
・透析予防診療チームに薬剤師、理学療法士を配置することが望ましい
・透析予防診療チームの構成員は慢性腎臓病の予防に係る適切な研修を修了していることが望ましい
・腎臓病教室を定期的に実施すること等により、腎臓病について患者及び家族に対して説明が行われていること(腎臓病の内容を含む場合に限り糖尿病透析予防指導管理料に規定する糖尿病教室を代えることが可能)
施設基準上の留意点は、透析予防診療チームの構成と慢性腎臓病指導の経験年数です。医師、看護師(保健師)、管理栄養士は必須で、薬剤師や理学療法士の配置も望ましい。つまり、医療職のチーム医療の光景が描かれる方向性にあります。
また、各職種は専任で1名は常勤としている点もポイントです。慢性腎臓病の予防指導に係る研修の要件も「望ましい」であり、必須ではありません。指導内容としては、腎臓病教室を定期的に開催し患者・家族に説明していること、また、すでに行っている糖尿病教室に腎臓病教室の機能を持たせることで、定期的開催の要件を満たすことができることとしています。
ただし「指導にあたり医師、看護師(保健師)、管理栄養士が同席して指導は行う必要はないが複数の患者に同時に指導を行った場合には算定できない」という複雑な言い回しの疑義解釈が出ています。そのため、同日に個別指導を行う必要があります。腎臓病教室で指導する場合は、患者ごとに個別指導の場を設けるなどの工夫が必要です。
慢性腎臓病透析予防指導管理料のポイント
算定のポイントは「透析予防が必要な患者」の把握
同管理料の算定では、まず「透析予防が必要な患者」の条件をおさえることが大切です。疑義解釈で具体的に対象患者のCKDステージスコアが示されているので解説します。
(問)
「B001」の「37」慢性腎臓病透析予防指導管理料について、「慢性腎臓病の患者のうち慢性腎臓病の重症度分類で透析のリスクが高い患者」が対象とされているが、具体的にはどのような患者が対象になるのか。
(答)
具体的には、日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」に記載されている尿蛋白及び糸球体濾過量で判断される慢性腎臓病の重症度分類において、CKDステージ G3aA3、G3bA2-3、G4A1-3、又は G5A1-3 と分類される患者が対象となる。
疑義解釈に記載されたG3aA3、G3bA2-3、G4A1-3、G5A1-3は図表2の赤色の範囲です。このCKDの重症度分類は、縦軸のGFR(糸球体濾過量)は血液検査から横軸のACR(アルブミン/クレアチニン比)は尿検査によって評価されます。疑義解釈ではG3bA2とG3bA3を「G3bA2-3」と標記されています。また、例えば「慢性腎炎G3bA2」という場合に「慢性腎臓病ステージG3b」という傷病名(傷病名マスター)がありますが、電子カルテ上の登録病名は原疾患を探索することも重要です。
指導内容を証明できる診療録を残すことが重要
一方、算定上は初回の指導管理を行った日から起算して1年を境に月1回算定の点数が二段階になっています。診療報酬請求書の記載事項に「初回算定年月日を記載する」とあるので、電子カルテ上で初回の療養指導日が分かるような工夫が必要です。また注3には、情報通信機器を用いた場合、別のビデオ通話が可能な情報数新機器の運用上の対応が求められています。いずれにしても透析予防診療チームが患者に対し慢性腎臓病のリスク要因の評価及び指導計画の作成と評価といった指導内容がわかる記録が診療録で証明できることが最も重要になります。
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