DPC基礎係数の複雑性指数は「包括内出来高を評価したもの」ではない?【DPC改定2018(2)】―診療報酬請求最前線

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診療報酬請求最前線

前回に引き続き、DPCの「基礎係数」について解説していきます。前回は、特定病院群の「【実績要件1】診療密度」を取り上げましたが、要件の全体像は次の図の通りです。

中医協総会資料より抜粋(2018年1月24日)

不安定な「実績要件3」基準、僅差でも数億円の収入差

今回は、「【実績要件3】高度な医療技術の実施」の6項目に注目してみましょう。この項目は、手術難易度の評価(外科系)「外保連試案」と重症な内科診療の評価(内科系)「特定内科診療」から、合計6つの項目うち5つ以上を満たすことが条件です。

各項目の基準値は、次の通り改められました。このボーダーラインに使用されているのは、2016年10月から2017年9月の大学病院本院群のDPC調査のデータを基にした、「大学病院の最低値(外れ値は除く)」です。

【実績要件3】医療技術の実施 現在の基準値 改定後の基準値
外保連試案 (3a)手術実施症例1件あたりの外保連手術指数 12.99 14.08
(3b)DPC算定病床あたりの同指数 118.18 119.18
(3c)手術実施症例件数 4695 4837
特定内科診療 (3A)症例割合 0.0101 0.0095
(3B)DPC算定病床あたりの症例件数 0.1940 0.2020
(3C)対象症例件数 115 124

以前は、大学病院の最下位から一つ前の病院の値という表現で説明されていたこともありました。いずれにしても、この基準値は、各大学病院の実績によって変動するため、蓋を開けるまで判らない、極めて不安定な基準になります。

したがって、特定病院群を目指す病院は、前回改定の基準値を目標に、自院の評価を行うことになります。そうなると、改定による各基準値の変動はボーダーライン際にいる病院の明暗を分けることになります。まさにオリンピックの3位銅メダルと4位の差ほど違います。惜しくも筆者の勤務する病院は、わずかに、この3a、3bの基準値が届かず、標準病院群に落ちました。一方で、わずかの差で基準に達した病院もあり、数億円の単位で収入がアップするという喜びの声も聞こえてきて、2年後のメダル取得を固く決意しました。

さて、冷静に解説を続けましょう。外科系評価は「外保連試案9.1版」、内科系評価は「特定内科診療2014版」が今回の改定では用いられています。外保連試案は、改定の度にバージョンアップした試案が使用されているので、手術手技の更新に合わせて難易度や医師数の基準といったところを意識して試算する必要があります。

実績要件4の複雑性指数にある誤解

最後に、「【実績要件4】重症患者に対する診療の実績」があります。これは、機能評価係数Ⅱにおける複雑性指数の算出方法を用いながらも、重症な患者だけを分母において、複雑性指数(重症DPC補正後)を算出するといった補正が行なわれている指数です。基準値は「0.0954」ですが、この数値に対して自院の値をどのように評価するのかは、非常に難しいところです。

なぜなら、複雑性指数(重症DPC補正後。以下同様)を「自院患者の包括内出来高診療点数を評価したもの」と誤解している方が多く、自院の診療密度を上げると複雑性指数が上昇するという勘違いをしていることがあるからです。正確には、DPC分類コード別(点数などが高い分類と低い分類といったように)の評価を指数化したものなので、この実績要件4は、「高い包括内出来高診療点数の分類」と「長い平均在院日数の分類」に絞って複雑性指数を評価したことになります。

筆者は、複雑性指数を上昇させる簡単なテクニックや秘策は無いと考えています。ただし、DPC分類ごとに複雑性指数が高い分類か、低い分類かは、DPC入院期間Ⅱまでの日当点の累計点数によって、「3万点以上の分類が高い」といったように見分けることができ、高低を認識できるだけでも変わります。この実績要件4は、ここに長い平均在院日数という補正がプラスされているので、例えば入院期間Ⅱが13日以上の分類で絞り込むこともできると思います。

さて、基礎係数を2回にわたって解説してきました。次回は機能評価係数Ⅱを見ていきましょう。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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