適時調査にも徹底対応! 上尾中央医科Gの施設基準管理とは【施設基準管理ケース1】

1都6県に28病院・21介護老人保健施設を展開する上尾中央医科グループ。グループ全体で施設基準の維持・ランクアップを図るため、本部では施設基準管理室を設置、様々な取組みを行っていると言います。本番さながらに実施するという適時調査対策や、実際に指摘の多かった項目など、施設基準管理室課長の浅野聡氏が具体的な事例をもとに語りました。
2019年6月に開催された「第1回 施設基準管理士会員交流会~合格者祝賀会~」(主催:一般社団法人 日本施設基準管理士協会)での発表内容をまとめました。(交流会の開催レポートはコチラ

【発表者】
上尾中央医科グループ協議会
経営管理本部 施設基準管理室 課長
浅野聡氏
【発表テーマ】
施設基準管理室の活動と適時調査
“適時調査による指摘事項の実際”-最近の傾向-

※以下、当日の発表内容をもとに編集しています。

管理の一元化でチェック体制を確保

上尾中央医科グループはおかげさまで、現在1都6県に28病院・21介護老人保健施設を展開しています。当グループの今年度の方針は“躍進”。その柱のひとつ、「継続的質改善の取り組み」の一環として、「施設基準遵守のための体制強化」が盛り込まれています。私が所属する施設基準管理室(3名体制)が音頭をとって、これを推進しています。

AMG経営管理本部組織図(発表資料より抜粋)

ミッション1:法令遵守と健全経営

施設基準管理室のミッション1は「法令遵守と健全経営」です。これを実現するため、当グループでは各病院が統一フォーマットによる自主点検をして、点検結果は施設基準管理室で一元管理しています。各病院から提出されたデータを管理シートに入力し、数値をチェックしていくというやり方です。

看護要員を例にあげると、各病院のデータから人員数や月平均夜勤時間数などの項目が自動計算されるようになっていて、月平均夜勤時間数の「変動が前月比10%以内におさまっているか」「72時間オーバーが2か月以上続いていないか」などをチェックします。経過をみて、もし引っかかりそうな項目があれば該当施設にアラートする、といった具合です。

また、施設基準ごとに「専従・専任」の職員配置も一覧にしています。1枚の表にまとめ増減の推移を追うことで、変化や過不足を発見しやすくなります。確認の中で「大丈夫かな」という項目があれば、たとえば「認知症ケア病棟の看護師の配置が減っているので人員を補充してください」と施設に連絡したり、場合によっては現地調査に行くこともあります。

病院間の比較・共有により課題を見つけ出す

ミッション2:施設基準管理の質向上と人材育成

  • 算定率を高める活動
  • 基準の維持(またはランクアップ)のための活動

続けて、施設基準管理室のミッション2「施設基準管理の質向上と人材育成」についてです。これは「算定率を高める活動」と「基準の維持(またはランクアップ)のための活動」に分けてご説明したいと思います。

まず、「算定率を高める活動」について。当グループでは各病院に施設基準ごとの算定率や重点事項を報告してもらい、病院間の比較を通して課題や改善案の可視化を図っています。たとえば入院時支援加算をみてみると、同じグループで病床規模も近いのに、算定件数にばらつきが生じています。

算定件数比較イメージ(発表資料より抜粋)

なぜこういう事象が起こるのか。算定件数の多い病院に工夫していることなどをヒアリングして、全病院の医事課長が集まる会議で共有しています。このように、他病院との比較を通して各病院の課題や改善策が見えてくることがあります。

次に、「基準の維持のための活動」について。私は施設基準管理室に赴任して1年目に、適時調査のシミュレーションとして27病院(当時)全てに訪問調査しました。

2年前の当時はまだ、適時調査の実施要領が厚労省のWebサイトに公開されていませんでした。そこで過去のデータを集めて、本番さながらに当日準備書類を通知。訪問時は書類をチェックしながら施設基準担当者と面談し、情報交換しました。さらに訪問後は調査結果を各病院にフィードバックし、本番に向けたサポートを行います。2年目には診療録の個別指導も実施しました。

ちなみに、実際の適時調査で指摘された項目は会議で共有するだけでなく、議事録を公開し全職員が見られるようにしています。また、診療報酬改定の年には新設された施設基準が自院で算定可能か、各病院の医事課チーフや施設基準管理室、経営管理本部も含め議論する検証会を実施。このように、病院や部署の垣根を超えた情報共有を推進することで、職員の理解を深め、より発展的な運用へつなげていければと考えています。

意外な盲点…。実際の指摘事例

最後に、適時調査で実際に受けた指摘について、いくつか事例をご紹介したいと思います。当グループではこの2年の間に12病院で適時調査を受け、指摘事項は、口頭指導によるごく小さなものも含めて49項目ございました。。

会場の様子

中でも指摘が多かった項目の1つに、病棟勤務医や看護職員の「負担の軽減及び処遇の改善に資する体制」があります。この「体制」とは、大ざっぱに言えば“責任者の配置”、“委員会の設置”、“計画の策定”の3つに集約されます。“委員会の設置”については、新しく設置せずとも既存の委員会を活用すればOKとされていますが、このとき注意したいのが定期的に開催していたか、具体的な取り組み内容が明示できるか、です。

また、“計画の策定”で指摘されがちなのが取り組み事項の公開についてです。現場からも、「職員と患者さん、どちらに対する“公開”なのか。それによって情報の掲示場所が変わる」という声がありました。この点に関して厚生局の担当者に問い合わせたところ、「公開は“公に開く”という文字通り、全ての人に公開するものなので、対象は職員や患者さんなど一部に制限されるものではない」とのことでした。つまり、医療機関を利用する人すべての目に触れるよう掲示する必要があるということです。

「負担の軽減及び処遇の改善に資する体制」取り組み事項の公開について(発表資料より抜粋)

このように、調査項目を知っていてもその解釈が誤っていれば指摘を受けてしまう可能性があります。数値上の管理だけでは現場での課題や疑問を解消することはできませんから、現場と本部、また病院同士で密な情報共有を促し、全体の施設基準管理の質を高めていきたいと思います。

<文:角田歩樹、写真:塚田大輔>

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