「あの病院はどうしてる?」施設基準管理の先進事例とは─施設基準管理士会員交流会レポート

多くの病院を悩ませる施設基準の管理・運用。理解不足が多額の返還金につながるリスクもある一方で、施設基準に精通する人材は不足しています。現場からは、「相談できる相手がいない」「管理フロー・体制の構築に苦慮している」という声も。
そんな中、注目を集めているのが2018年に創設された「施設基準管理士」です。第1回の認定試験では受験者549名中371名が合格。2019年6月には“1期生”約140名が、全国から都内で開かれた「会員交流会」(主催:一般社団法人 日本施設基準管理士協会)に集まりました。当日は先進事例の発表のほか、地域別の交流会などを実施。参加者からは「担当者同士のつながりができた」「視野が広がった」といった声が寄せられました。(施設基準管理士についてはコチラ

「維持だけが目的ではない」担当者へ呼びかけ

事例発表では、施設基準管理の担当者3名が登壇。取り組みの内容は三者三様ながら、現場を巻き込み、病院あるいはグループ全体で施設基準管理に取り組むことの重要性を語りました。

上尾中央医科グループ・施設基準管理室の浅野聡氏は、部署のミッションを、(1)法令遵守と健全経営、(2)施設基準管理の質向上と人材育成―の2つにわけて解説。各病院のデータを漏れなくチェックするための体制づくりや、本番さながらの適時調査対策、実際に指摘を受けた項目などについて語りました。

上尾中央医科グループ 浅野聡氏

印象的だったのは、「病院や部署の垣根を超えた情報共有を推進することで、職員の理解を深め、より発展的な運用へつなげたい」という言葉です。グループ全体で施設基準管理の精度を高めるべく、算定率の高い病院の事例を共有したり、実際に調査で指摘された項目は全職員に公開したりと各現場の意識を高める仕組みづくりから、成長・拡大を続けるグループならではの工夫が垣間見えました。(具体的な発表内容はコチラ

また、松下記念病院・経営企画課の荻野一樹氏は「病院経営が厳しさを増す今、施設基準を維持する『守り』の業務だけでなく、増収につなげる『攻め』の施設基準管理も重要」と力説。

松下記念病院 荻野一樹氏

他院とのベンチマークを通し“意図せずして漏れている”施設基準を見つけ出す方法などを紹介し、「きちんと届け出れば、増収につながる可能性が大きい」と定期的に漏れがないかチェックすることの重要性を語りました。
さらに、運用面まで現場と一緒につくりあげるため、「フェーズごとに“誰が”“何を”しないと要件を満たせないのか明示する」などイメージ共有のコツも紹介。なるべく現場の負担を軽減できるよう工夫することで、現場の理解が深まるだけでなく信頼関係の構築にも効果的、と呼びかけました。(具体的な発表内容はコチラ

茨城県立中央病院 酒主剛氏

最後に登壇したのは茨城県立中央病院・企画情報室の酒主剛氏。2010年の入職当時を振り返り、混沌としていた管理体制を立て直していった背景には、「県民の信頼を裏切ることはできない」という自治体病院としての矜持もあったと語りました。取り組みのカギは「施設基準管理を医事課まかせにしない」こと。「施設基準管理は1つの部署で完結できるものではない」と、企画情報室が管理業務を担い、他部署も巻き込んで総点検を実施。結果的に、職員一人一人の参画意識が育まれたと締めくくりました。(具体的な発表内容はコチラ

「同じ悩み共有できた」参加者の声

地域別のグループ交流会では、参加者たちが日ごろの疑問や悩みを語りあったり、情報共有しあったりする姿が見られました。主催者は「皆さん非常に意識が高く、すぐ実務的な話に花を咲かせていた。こうしたコミュニティづくりに今後も力を入れていきたい」(協会理事)と述べました。

参加者の声

  • 「施設基準管理は医事課がやっているところもあれば専門部署が担っているところもあり、病院によってフローや管理・運用手法もまちまち。他院の情報を知りたくてもなかなか機会がなかったので、交流会でいろいろ具体的な話を聞けて参考になった」
  • 「同じような環境で、同じ業務をしている人の意見を聞ける機会は貴重。自分が迷っているところを他の人はどうしているのか聞けて良かった」
  • 「『施設基準って何ですか?』という職員もいる。現場に役割や重要性理解してもらうのかはなかなか大変。同じ立場の方々と悩みを共有できて良かった」
  • 「施設基準は『維持することが目的』と考えがちだったが、事例発表を聞いて視野が広がった」
  • 「施設基準について、近隣病院に相談したくても誰が詳しいのか、担当しているのかがわからなかった。事務長でも精通している人とそうでない人がいる。施設基準管理士の資格ができたことで、そのあたりも見えやすくなって良かった」

<文:角田歩樹、写真:塚田大輔>

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