施設基準管理を「医事課任せにしない」茨城県立中央病院【施設基準管理ケース3】

届出記録はひたすら用紙をファイリングするのみ、人事の情報も十分に把握できていない……。そんな現状を打開すべく院内改革に着手したのが、茨城県立中央病院です。公的病院に対する県民の信頼を裏切らないためにも、施設基準の管理体制を整える必要があったと、企画情報室の酒主剛係長は語ります。「病院全体が施設基準を意識するようになった」という取り組みの内容とは?
2019年6月に開催された「第1回施設基準管理士会員交流会~合格者祝賀会~」(主催:一般社団法人 日本施設基準管理士協会)での発表内容をまとめました。(交流会の開催レポートはコチラ

【発表者】
茨城県立中央病院(茨城県、500床)
企画情報室 係長
酒主剛氏
【発表テーマ】
事務局で取り組む施設基準一斉点検

※以下、当日の発表内容をもとに編集しています。

見直しのきっかけは、適時調査

私は2010年に茨城県病院局に入職し、現職に配属となりました。当時、どのように施設基準を管理していたかというと、基本診療料および特掲診療料の届出記録をひたすらファイルにまとめ積み上げていくだけ。現状どの届出が有効なのか一目で分かる資料もなく、変更届や定時報告の際はファイルをめくって過去の記録から必死に探し出すのです。私も入職3日目にして問い合わせを受け、たまたま担当者が不在であったため、血眼でファイルを手繰ったのを今でも覚えています(笑)。

専従・専任者の管理は人事に関する情報、特に医局人事に関する情報がうまく共有されておらず、変更登録が漏れていることもしばしばで問題になっていました。自治体病院は定期異動があるため、施設基準管理の担当者が数年単位で変わることも、混沌を招く要因になっていたようです。

そんな管理体制を見直すきっかけになったのが2013年に実施された適時調査です。調査に対応するため、職員名簿を確認したり関係書類を調べたり、作業は連日深夜にまで及びました。苦労が大きかっただけに、職員の間でもきちんと分かりやすく管理しなければ、という意識が芽生えたのです。まずは院内改革をと、毎年必ず総点検をすることになりました。

施設基準管理を医事課まかせにしない

総点検は、特に人事異動の多い年度初めに実施。マニュアルや規定も含め、ありとあらゆる点検をこのタイミングで行います。ミスがあれば医業収益にも大きく影響しますし、県民の信頼を失うことにもつながりかねません。これまでは医事課のみで担当することが多かったのですが、1部署では負担が大きすぎるため総務課や経理課、企画情報室も含め事務局全体で取り組むことにしました。

点検時のポイントは、必ず作業開始前に説明会を実施することです。診療報酬制度について、仕組みや流れなどをフローチャートで分かりやすく説明し、算定要件などについても理解を深めていただいた上で、点検の作業手順を伝えます。点検整理表の使い方など、「こんな感じでやってくださいね」とお手本を見せ、さらに実際にやりながら、作業に慣れてもらうのです。また、点検には各課の課長にも加わっていただきます。この過程を通して、各職員は自分の日常業務がどのように施設基準管理に影響しているのかを実感することになります。たとえば総務課の職員なら、自分が担当している人事のデータが届出に際してどのように使われているのか知るわけです。施設基準管理が“自分事”になるんですね。結果、各部署が日常的に施設基準を意識するようになり、変更点などが速やかに共有されることになります。

一斉点検に使用するチェック表(発表資料より抜粋)

また、専従者・専任者等の各種要件は、関係部署に個別に確認を依頼するようにしました。その結果、メディカル部門も施設基準を意識するようになり、新規の届出の提案をいただく場面も出てきました。すべての部署が施設基準管理に関わる体制となったことで、結果として病院全体の意識が変わっていったのです。

施設基準が病院経営への参加意識を育む!?

おそらく多くの病院では、施設基準管理は医事課の担当になっていると思います。特に中小病院においては患者への対応も含め業務量が年々増加しており、医事課だけでは管理も厳しくなっているのではないでしょうか。施設基準は1部署1担当で完結できるものは少なく、返還金が発生すれば責任も大きい。特定の担当者にその責任を負わせれば、職員の萎縮にもつながりかねません。

当院では、医事課には診療報酬関係の業務に専念してもらうため、施設基準管理は企画情報室が担当。基本診療料担当・特掲診療料担当各1名に加え、私がフォローに入る形で管理業務を行っています。届出状況の管理の見直し、ファイルを整理したり検索しやすいようエクセルで一覧を作ったりして正確性の向上・効率化を図っています。これまで全く施設基準管理に関わってこなかった部署でもきちんと対応することは可能です。このように、複数の部署、担当者で携わり、さらに上司がバックアップするという体制を組んでいく必要があります。

病院経営は、組織全体で取り組むものです。施設基準管理の取り組みは、全ての職員が何らかの形で病院経営に参加していることを自覚する、いいきっかけになると思います。今後も、職員への研修などの企画を通してよりいっそう意識を高めていければと考えています。

<文:角田歩樹、写真:塚田大輔>

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