前回までの基礎係数の解説に続き、機能評価係数Ⅱを見ていきましょう。この機能評価係数Ⅱは今回のDPC改定の目玉の1つです。
2018年度のDPC改定では、調整係数が全面廃止されます。これまでは、病院が出来高制からDPC制度に切り替わった際に、前年度の出来高収入を補填するような意味で、調整係数が設定されていました。その補填された係数が調整される係数として、初回以降の改定においても保証されている仕組みはおかしいということで調整係数の段階的な廃止が始まり、2012年度以降、6年をかけて調整係数が低減され、その間は「暫定調整係数」と呼ばれながら、機能評価係数Ⅱへと置き換えられてきました。これを中医協では「調整係数の機能評価係数Ⅱへの置き換えを完了する」という表現で言及しています。
今回の改定で調整係数が全面廃止となることを受け、DPC病院は「機能評価係数Ⅱだけで存続できるのか」と、本当に気が気でなかったのです。
後発医薬品係数と重症度係数は廃止
ここからは機能評価係数Ⅱに含まれる各項目を見ていきましょう。係数の全体像は次の評価の考え方で構成されています。
機能評価係数Ⅱの6項目 | |
保険診療係数 | 提出するデータの質や医療の透明化、保険診療の質的向上等、医療の質的な向上を目指す取組を評価 |
効率性係数 | 各医療機関における在院日数短縮の努力を評価 |
救急医療係数 | 救急診療において発生する診療と診断群分類点数表との乖離を評価 |
カバー率係数 | さまざまな疾患に対応できる総合的な体制について評価 |
地域医療係数 | 体制評価指数:5疾病5事業等における急性期入院医療を評価 定量評価指数:地域における医療機関の患者数のシェアを評価 |
複雑性係数 | 1入院当たり医療資源投入の観点から見た患者構成への評価 |
今回の改定で、機能評価係数Ⅱは8項目から6項目に改められ、「後発医薬品係数」及び「重症度係数」が廃止となりました。
後発医薬品係数は、「A243 後発医薬品使用体制加算」の評価に置きかわり、機能評価係数Ⅰに“外出し”されています。後発薬導入に関する改定ポイントは、入院診療だけの係数評価が加算に代わることで、「当該医療機関において調剤した後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品を合算した規格単位数量に占める後発医薬品の規格単位数量の割合」が85%以上(加算1の場合)となり、更にこれまで除外されていたDPC対象病棟の入院患者を含めることが追加され、DPC病院では、使用割合の算出に四苦八苦していることと思います。
注目はカバー率係数と地域医療係数
さて、機能評価係数Ⅱの6項目に目を移していきますが、この中で注目するところは、カバー率係数と地域医療係数です。
まずカバー率は、前回の改定で分かったのが、Ⅲ群の診療科数とカバー率指数に強い相関関係があることでした。そのため、診療科数の少ない専門病院に配慮して下限値を30%tile値とする処置が行われてきました(下記の図)。
しかし、今回の改定では、それがむしろ不平等であるとして撤廃されています。これにより、標準病院群(Ⅲ群)では、診療科が多い大規模な病院と専門病院との間で、当然ながら係数の開きが出ています。また、カバー率の底上げとは意味は異なりますが、効率性・複雑性係数においても、係数の分散を均一にする処理を実施しないため、係数の分散は広がり、明らかにわずかなポイント差で係数の点数差が出ています。
このような「DPC病院を同じフィールドで評価すべき」という考え方は、今後も主流になると思われ、ついていけない病院をふるいにかける様な対応が増えていくのではないかと筆者は感じます。
では、次回は、保険診療係数の改定部分を詳しく見ていきたいと思います。
【vol.26】保険診療係数が大幅改定、そのポイントと理由【DPC改定2018(4)】≫≫
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国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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