コロナ禍による医療経営ひっ迫、どう対応する?【ケース編】─病院経営ケーススタディvol.9

A病院の概要
    1. 病床数:180床(急性期一般入院料4)の民間病院
    2. 場所:地方都市(県庁所在地)
    3. 職員数:約250名

院内感染を起こさず第1波を乗り切るも…

A病院は地方都市にある180床の2次救急医療機関である。救急の受け入れ件数は年間2000件にのぼり、地域の医療を支える、なくてはならない病院として患者からの信頼も厚かった。

2020年の年明け早々、新型コロナウイルス感染症が日本に上陸すると、全国の医療機関に衝撃を与えた。初めは対岸の火事だったが、その後に国内でも感染が爆発的に増加。4月頃から医療機関内でのクラスターが頻繁に報道されるようになり、医療従事者の間でも、新型コロナウイルス感染症に対する恐怖が一気に広がっていった。

A病院も例外ではなかった。特に4月に入り、発熱患者の救急受け入れ要請件数が増加。当初は受け入れを断っていたが、地域医療への影響を考慮して、院内の体制を整備することに。救急・外来対応のほか、3月下旬〜5月末の間に合計12人の軽〜中等症の陽性患者の入院を受け入れた。

救急外来の現場ではいつ何時、新型コロナウイルス感染者が一般患者にまざって来院するか神経をすり減らしていた。陽性患者を入院治療する病棟では、院内アウトブレイクや自身への感染に細心の注意を払わねばならず、職員の心身の疲弊が見てとれた。
また、事務部門でも品薄で高騰し続けるマスクやガウンなどの感染防護具の確保に奔走する日々が続いた。

一方で、感染制御のための受け入れ制限に加え、院内感染への不安による受診控えから、入院・外来患者数は減少し続けていた。

6月の経営会議の会話

O事務長:
コロナの影響で減収に歯止めがかかりません。
I院長:
例年に比べると、どのくらい影響が出ていますか?
O事務長:
3月はさほど影響なかったのですが、4月は昨年同月比で11%減、5月に至っては18%減になっています。病床稼働率が10ポイントほど下がったほか、外来患者数は25ポイントも低下しました。電話再診で対応していますが、各種検査ができないので、外来単価も下がっています。
I院長:
地域医療を守るためと、職員たちが踏ん張ってくれたおかげで院内感染を起こさずにここまでやってこられた。しかし、夏のボーナスはなんとか支給できたが冬は支払える見込みがない。この経営状況では、補助金などの支援を受けなければ到底やっていけないだろう。第2波なんてきたら、うちだけでなく、日本中で体力の持たない病院が続出するはず……。
O事務長:
職員の疲労とストレスも心配です。もしこのタイミングで大量離職などが起きてしまったら、とうてい第2波を乗り切れません。

会議は重苦しい空気に包まれてしまった。一体、この危機をどう乗り越えればよいのだろうか。

【設問】
  1. 新型コロナウイルス感染症関連の行政支援策にはどのようなものがあるのか?
  2. 不安やストレスを抱える職員に対し、事務長・リーダーがマネジメントで心がけるべき点とは?

【解説】はこちら

網代祐介(あじろ・ゆうすけ)
社会医療法人社団光仁会 第一病院(東京都葛飾区、一般病床101床(うち、地域包括ケア病床12床)・医療療養病床35床)にて医療福祉連携室室長と経営企画室を兼務。医療ソーシャルワーカー(MSW)として亀田総合病院で経験を積んだ後、医療課題は社会経済、経営、マーケティングの視点からも解決していく重要性を実感し、経営学修士(MBA)を取得。その他、医療経営士1級、介護福祉経営士1級などを取得し、講師業などにも取り組む。(過去のインタビュー記事

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