山梨県のケアミックス病院が、東京で働きたい常勤医を採用できた理由─地方独立行政法人 大月市立中央病院

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地方独立行政法人 大月市立中央病院は地域密着型のケアミックス病院(一般64床、地域包括ケア24床、療養37床の計125床※)として、山梨県の地域医療を支えています。しかし、慢性的な常勤医不足から経営は悪化の一途をたどり、市からの赤字補填額は一時5億円以上に。所属医師の高齢化が進んでいたこともあり、佐藤二郎理事長は「経営再建には常勤医の確保が不可欠」と、新たな採用手法を取り入れました。コロナ禍の影響も懸念される中、積極的な採用活動を続け、5カ月で2名の医師の採用に成功します。それも30-40代の働き盛りです。
短期間で、しかも他エリア勤務希望の医師を採用できた理由とは? 佐藤理事長が、採用にかける思いを語りました。
※稼働病床数

目次

病院外観(提供:大月市立中央病院)
佐藤二郎理事長 (提供:大月市立中央病院)

赤字体質からの脱却を図るも、常勤医が退職

──貴院は長い間、常勤医不足に悩まされてきたと伺いました。具体的な経緯について教えていただけますか。

以前は関連病院からの派遣で医師を確保していましたが、2004年に初期臨床研修制度が始まって大学医局も医師不足に陥り、派遣が右肩下がりで減っていったのです。その結果、入院患者の受け入れや外来の診療日数が減少。経営は大きな打撃を受けました。地域包括ケア病棟の新設など、経営改善に取り組んだものの、慢性的な常勤医不足により経営は悪化の一途をたどり、2016年度の市の赤字補填額は5億5000万円に上りました。

私は2017年に副院長に就任してから、「断らない救急」を掲げ救急応需率の向上を図るなど、経営再建に着手してきました。しかし、病院運営を非常勤医師に依存している現状では、入院医療の充実が不可能です。5年後、10年後も安定的に地域の医療ニーズに応えるには、なんとしても医師体制を強化する必要があります。 そんな中、2019年度いっぱいで常勤医2名が退職することになり、常勤医は内科5名、外科1名、眼科1名、麻酔科1名の計8名体制に。うち4名が65歳以上と高齢なこともあり、常勤医確保は一刻を争う状況でした。

──どうやって医師を確保しようとされたのですか。

関連病院にお願いしたり、個人的な伝手をたどったりしましたが、限界があります。紹介会社とも契約しましたが、山梨県を希望される先生は少ないのかなかなか面接には至らず、2019年の面接数は0件でした。そもそも求職中の先生にアプローチできる機会がない中で「他に手段はないのか」と、もどかしい思いを抱えていました。医療機関が医師にオファーを出すことのできるツールがあると聞き、藁にもすがる思いで『M3 Career プライム』(以下、プライム)を導入したのです。

オファー・オンラインを取り入れた採用活動、その成果は

──派遣や紹介を待つのではなく、能動的に求職者にアプローチできるようになったのですね。採用活動はどのように変化しましたか。

これまでは、当院がどんな病院で、どんな先生が必要なのか、どんな思いで医師採用に取り組んでいるのか、私たちの熱意を先生に伝えることができませんでした。プライムは、求職中の先生の一覧(※)を見て、病院からオファーを出せます。だから、当院の状況や思いなど、求人票では伝えきれない熱意を伝えることができます。

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その結果、紹介会社のコンサルタントが当院のことを理解してくれるようになりました。彼らとも連携しやすくなり、面接につながる確率が格段に上がりました。新型コロナウイルス感染症の影響も懸念しましたが、積極的にオファーを続けた結果、プライム導入から5カ月で、40代の呼吸器内科の先生と、30代の一般内科の先生の2名を採用できました。
※求職者の同意が得られた情報を配信しています

──コロナ禍のさなか、採用活動に変化はありましたか。

面接に一部オンラインを取り入れました。紹介会社経由の場合、コンサルタントさんも面接に同席し3者対面で行いますが、今回はウェブ会議ツールを使って参加してもらいました。本来は全員対面が望ましいですが、感染防止とスムーズな進行を両立する上では、オンラインの活用も有効と感じましたね。オンラインとはいえ、同席してもらったことで先生も安心されたようですし、事前に打ち合わせた内容をふまえ第三者の立場から随時質問を挟んでもらうことで、先生の気になる点に照準を絞って面接を進行できたのではと思います。表情が見えるので、電話よりコミュニケーションが取りやすいのもよかったです。

東京希望30代の内科医が山梨県に

──自らアプローチできるようになったとはいえ、山梨県勤務を希望する求職者が少ないことは変わりません。5か月で30-40代の2名を採用できた要因は何でしょうか。

オファー機能を有効活用すべく、対象と内容を工夫しています。

まず、オファー対象は県内の求職者数をふまえ検討します。
毎週配信される求職者の情報を見て、医師は東京を中心とした大都市圏に集中しており、山梨県を希望する先生が少ないことを改めて痛感しました。しかし、当院は新宿から特急で1時間と、都内からのアクセスは悪くありません。実際に、常勤医の多くは東京から通勤しています。東京都や神奈川県在住でも、山梨県寄りの場所にお住まい・お勤めの先生ならば検討していただけるかもしれない。こう考え、勤務希望地が近隣県の先生でも条件面などが当院の希望とマッチしていれば、幅広くオファーを出しています。

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大月市立中央病院が位置する、山梨県大月市

次にオファー内容は、いかに先生と当院の希望が重なるところを見つけ、魅力的に伝えるか、を意識しました。
たとえば、内科医と一口にいっても「総合診療的な医療がやりたい」「急性期よりも、回復期や慢性期で負担を軽減して働きたい」など、診療内容や働き方に対するニーズは様々です。まずは、求職者データやコンサルタントからの情報をもとに、先生がどんな働き方・医療をしたいのか想像します。そして、当院がどういった形でその希望を叶えられるか、を明示するよう心がけています。また当院の場合、立地がネックになりやすいので、通勤時間などのアクセス情報や、特急代支給の有無といった福利厚生・待遇面は手厚く記載しています。

毎週配信される求職者情報。「転職によって叶えたいこと」が記載されている(画像はイメージ)

──求職者のニーズに合わせたオファーが、エリアを超えた採用に結びついたのですね。

そうですね。今回入職が決まった一般内科の先生は、はじめ東京勤務を希望されていました。しかし山梨県のご出身で、ゆくゆくは地元に貢献したいという思いをお持ちだったこと、また、リウマチ膠原病というご自身の専門性を活かせる環境を希望されていたことを受け、「山梨県の地域医療に貢献できる」「人口8万人規模ながら医療圏内にリウマチの専門家が不在で、先生の専門性をフルに活かした仕事ができる」といったポイントを重点的に伝えました。コンサルタントと一緒に、先生の希望と当院の希望をすり合わせ、何をどう伝えるか戦略を練ったことも、勝因の一つだと思います。

医師だからこそわかる苦労やこだわりも多いので、オファー内容は事務職まかせにせず、全て自分で作成しています。最初は「この先生にはどういう伝え方をすれば響くだろう」と熟考して時間がかかりましたが、2か月もすると、「〇〇な先生にはこういう伝え方」とある程度パターンができました。

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なぜ、医師不足でも働き方改革に取り組むのか

──貴院では、勤務日数や当直・オンコールの有無なども求職者の希望に応じて調整されていると伺いました。

現在所属している常勤医も、勤務形態は様々です。たとえば週4.5日+当直月1~2回、週3日+当直月4回、週3日+遅番週3回など、各医師の希望に応じた働き方をとっています。
きっかけは、2019年4月に地方独立行政法人へ移行したことです。大月市が運営していた頃は、市職員の規程により週5日勤務でなければ常勤医として社会保険を適応できませんでした。病院の裁量が大きくなったことで、フレキシブルな勤務形態が可能になったのです。また、給与体系もそれまでの年功・勤務歴序列型から、実績に応じて設定することができるようになりました。こうした変化が、医師採用の追い風になっています。

他にも、チーム体制の病棟管理や、医療クラークの導入など、人数が少ないからこそ医師の負担を軽減し、本来業務に集中できるような環境づくりに取り組んでいます。

ウェブ会議ツールでのインタビューに応じる佐藤理事長

──経営の効率化が求められる中、あえて医師の働き方整備に注力されているのはなぜなのでしょうか。

たしかに週3日勤務の先生を2名採用するのは、週5日勤務の先生を1名採用するよりもコスト効率は悪いかもしれません。ただ、先生方が働きやすい病院にすることが、長い目で見れば安定的な医療提供体制につながると思うのです。

週5日勤務で、当直・オンコール対応可の先生に来ていただけたら、という気持ちがないといえば嘘になります。しかし、現在は若い先生に限らずワークライフバランスを重視する先生が増えています。病院としては、地域のためになんとか持続的に運営していくことが至上命題。先生方の希望に合わせた働き方を提示して、足りない部分は非常勤の先生方に担っていただけば良いのではないか。そう割り切って非常勤医の募集をかけたところ順調に集まり、常勤医からも協力してもらえることになりました。「全てをお願いすることはできない」と諦めたことで、かえって体制が整いつつあります。

“人”を活かすことが経営再建につながる

──今後も採用活動を継続予定とのことですが、どんな先生と働きたいですか。

医師の仕事は一人では完結しないので、やはりコミュニケーション力が重要だと考えています。当院は主治医制をとっているものの、1名の患者さんに対して2名の先生で診療にあたります。いわゆるワークシェアです。前述の通り多様な勤務形態をとっているため、ご自身の強みを活かしつつ、チームワークを大切にしていただける先生が理想ですね。今後の採用計画としては、整形外科2名、外科1名、消化器内科1名と計4名の先生を増員したいと考えているので、引き続きオファーをかけていくつもりです。

──今後の展望を教えてください。

当院では、救急外来経由で入院する患者さんが70%近くに上ります。肺炎やCOPD急性増悪、急性心不全や急性腎不全など、虚弱高齢者が体力を落とされて救急外来を受診、入院するケースが非常に多い。人口減少と高齢化の著しい地域を支えるための医療を展開していくことが、私たちの使命だと考えています。今後は、医療・介護の両方を必要とする患者さんが増えるため、介護医療院の創設を検討しています。急性期~慢性期まで、高度急性期以外はシームレスに対応できるような体制を構築していきたいです。

当院は地域の中核病院としていわゆる不採算領域も担います。大きな黒字を出すことは難しいかもしれません。しかし、職員一人ひとりがやりがいを持って、しっかり働いてくれれば持続的に運営していくことは可能です。病院の経営を支えているのは“人”なんです。だからこそ、今後も採用には注力していかなければと考えています。

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