衛生委員会をオンライン化する際の注意点とポイントを解説

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新型コロナウイルス感染拡大を受けて、さまざまな業務のさらなるオンライン化が求められています。
この記事では、衛生委員会をオンラインで開催する際の注意点やポイントについて解説しています。基礎的なところから解説していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

衛生委員会のオンライン開催についての要件が厚生労働省により定められた

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年8月27日に厚生労働省から衛生委員会のオンライン開催についての要件が発表されました。オンラインの開催では3密を避けることができる、在宅勤務でも容易に参加できるという大きなメリットがあります。
オンラインでの衛生委員会の開催にあたって、守らなければいけない要件や注意点も同時に発表されていますので確認していきましょう。

衛生委員会について確認

衛生委員会は、常時使用する労働者が50人以上の事業場で、従業員の健康の保持や増進のために設置するものです。事業場とは、支社や営業所、店舗、工場のようにある程度独立して業務が行われている場所のことを言います。50人以上の事業場であれば、業種に関係なく衛生委員会を設置する必要があります。衛生委員会での主な議題は、長時間労働の有無や対応状況、健康診断実施状況や結果の共有、労働災害事例、職場での危険な箇所や問題点などが挙げられます。

衛生委員会は総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等(1名)、衛生管理者、産業医、労働者(安全に関する経験がある者)で構成され、審議の内容は従業員への周知がしっかりとされなければいけません。衛生委員会のメンバーとなる衛生管理者、産業医、労働者は人数の上限はないため、複数いても構いません。

衛生委員会をオンラインで開催するための要件とは

衛生委員会を開催する際には、労働者と使用者(雇用する側)が十分に調査や審議を行える状況を作ることが重要です。そのため、対面で行う場合と変わりなく行える環境を作れなければ、オンラインで衛生委員会を開催することはできません。
厚生労働省が発表したガイドラインには、「すべて満たす必要がある要件」と「いずれかを満たす必要がある要件」、「その他の留意事項」の3つに分けて記載されています。それぞれについてポイントをまとめて解説していきます。

すべて満たす必要がある要件

  • 衛生委員が容易に利用できること。
  • ネットワーク回線が安定していて委員同士の意見交換が円滑にできること。
  • 個人情報の漏洩や外部からの不正アクセスが防止できるセキュリティ対策をとっていること。

オンラインならではの留意点として、セキュリティ対策が重要となります。web会議ツールの選択をする際には、回線スピードだけでなくツールの安全性も確認した上での利用が必須です。

いずれかを満たす必要がある要件

こちらの要件はオンラインでリアルタイムに衛生委員会を開催する場合と、何らかの事情によりリアルタイムで開催できない場合に分けて提示されています。リアルタイムで開催しないオンラインの衛生委員会とは、たとえばメールで意見交換や審議を行うスタイルのものを言います。

衛生委員会を、オンラインでリアルタイムに開催する場合の要件

  • 対面で衛生委員会を行うときと同様に委員同士の意見交換が即時に行えること。

※映像を用いずに音声やチャットで意見交換をする際には、資料の確認などが十分にできる状況をつくる。

衛生委員会を、リアルタイムで開催できない場合の要件

  • 資料の送付から委員が意見を出すまでの十分な期間も設けること。
  • 委員からの質問や意見が他の委員に速やかに共有されて円滑に意見交換できること。
  • 委員全員が質問や意見の内容も含めた議論の経緯を確認できるようにすること
  • 委員からの意見表明がない場合は、その委員に対して資料の確認状況や意見提出の意思を確認すること。
  • たくさんの意見が出た場合に調査審議に支障をきたさないようにするため、各委員から出された意見のとりまとめをする担当者を設けること。

リアルタイムでなくとも衛生委員会を開催することは可能ですが、意見の交換にどうしてもタイムラグが生まれます。そのため審議や調査がまとまるまでの時間が、かえってかかりやすいといった課題があります。
さらには意見を集約する担当者の負担が大きくなることも懸念されます。
これらをふまえると、可能な限りリアルタイムで開催するのが望ましいと言えるでしょう。

その他の留意事項

オンラインで開催する衛生委員会であっても、今後実施する施策の内容や、意見交換があった中で重要性の高いものは書面に記録して保存するようにしましょう。また、データで保存する場合には、すぐに写しが提出できる状態にしておきましょう。

【出典】厚生労働省 情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について

衛生委員会のオンライン開催が推進される背景

衛生委員会は、従来はメンバーが同じ場に集い、直接対面して開催されるものでした。オンラインでの開催が推進されるようになった背景としては、大きく分けて、(1)新型コロナウイルス感染症の流行、(2)急速なデジタル技術の進展、(3)働き方の多様化の3つが挙げられます。

新型コロナウイルス感染症の流行

衛生委員会は、月に1度以上の開催が義務づけられています。しかし新型コロナウイルス感染症の流行による外出自粛や自宅待機が余儀なくされている状況で直接対面して衛生委員会を開催することは、従業員の健康の保持や増進を目的に設置される衛生委員会の存在意義から離れるものです。オンラインを推進する以前に、オンラインで開催せざるを得ない状況にもあったと言えるでしょう。衛生委員会のオンライン推進の動きは、一時的なものではなく、しばらくは続くと考えられます。将来的にはオンラインでの開催が通常となるのではないでしょうか。

働き方の多様化

新型コロナウイルス感染症だけでなく、働き方改革推進の影響もあり、特にホワイトカラーでは、企業で勤めながらも自宅などでテレワークをする働き方が行えるようになってきました。働き方の変化に合わせて衛生委員会もオンラインでできるようするのは、自然な流れと言えます。
日本ではすでに人口減少が始まっていますが、これはそのまま将来的な労働人口の減少につながります。労働人口が減少するなかで組織が成長を続けるためには、従来の型にはまった働き方や業務改善では追いつけなくなります。そのため今後ますますテレワークなどの柔軟な働き方の推進が求められるでしょう。

急速なデジタル技術の進展

インターネットの登場から、情報通信技術は発展し続けています。それに伴い通信の高速化も進んできました。直接対面せずともweb会議ツールなどのデジタルツールを使って、リアルタイムにコミュニケーションが取れる状況にあることも、衛生委員会のオンライン化が認められる理由となっています。
耳にする機会が多くなった5Gは、現在の通信技術として主流の4Gと比べると、通信速度は20倍、同時接続数は10倍、遅延速度は10分の1と大幅に進化したものとなっています。衛生委員会を開催する場合のメンバーの最少人数は、総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等、衛生管理者、産業医、労働者の4名ですが、メンバーの総数に上限はないため、人数が増えれば増えるほど通信速度には留意する必要があります。

近年では、デジタル技術を使って生活や働き方に変革をもたらすデジタルトランスフォーメーションに注目が集まっています。デジタルトランスフォーメーションは一足飛びに達成できるものではなく、ツールのデジタル化をステップとして徐々に実現していくものです。
衛生委員会のオンライン化といったところから、職場内のデジタルトランスフォーメーションが少しずつ行われていくことになるのかもしれません。

その他オンラインでの実施が可能な産業保健活動

衛生委員会に付属するものとして、産業医による面接指導についてもオンラインで可能な場合があります。そちらの要件についても確認していきましょう。

産業医の役割

衛生委員会の構成メンバーでもある産業医は、就業環境や健康全般に対する指導やアドバイスを行うのが仕事です。診断・治療を行うのではなく、労働者の就労制限や労働者が就労可能な状態かどうかなどの判断を担当します。就労制限とは、労働時間の短縮や出張・時間外労働の制限などのことを指します。就労制限や就労可能かどうかの判断を行う際には、相手の表情や顔色などが分かるように直接対面して行うのが望ましいとされています。
しかし、厚生労働省が発表している条件を満たすことで、オンラインでも面接指導を行うことが認められています。

産業医の面接指導

産業医は、月80時間の時間外・休日労働を行っている長時間労働者や、職場で年1回実施するストレスチェックで高ストレス者と判定された人から申し出があった場合、面接指導を行うことが義務付けられています。長時間労働者に行う「長時間労働者面談」と、高ストレス者に行う「高ストレス者面談」に限っては、産業医とオンライン環境のそれぞれについて一定の条件を満たすことでオンラインでの実施が認められています。

面接指導をする産業医に課せられる条件(いずれかを満たす必要あり)

  • 対象の労働者が所属する事業場の産業医であること。
  • 契約によって少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象の労働者が所属する事業場の健康管理に関する業務を担当していること。
  • 過去1年以内に対象の労働者が所属する事業場の視察をしていること。
  • 過去1年以内に対象の労働者と直接対面して指導を実施していること。

オンライン環境に課せられる条件(すべてを満たす必要あり)

  • 産業医と労働者が相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであること。
  • 映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること(映像のない音声のみの面接指導は不可)。
  • 情報セキュリティが確保されていること。
  • 面接指導を受ける際の機器の操作が、労働者にとって簡単なものであること。
  • オンラインで面接指導することについて衛生委員会で審議をし、労働者にも事前に周知していること。
  • 面接指導の内容が第三者に知られることがないよう、労働者のプライバシーに配慮された環境で面接指導を実施すること。
  • 面接指導で緊急で対応すべき兆候などが発覚した場合は、事業場などの近隣の医師と連携して対応したり、事業場の産業保健スタッフが対応したりできる環境が整備されていること。

オンラインでの産業保健活動には産業医との連携が必須

組織の産業保健活動は、衛生委員会の開催や面接指導でオンライン化が進んでいます。

感染対策だけでなく業務効率化やコスト面でもメリットがありますが、オンラインで産業保健活動を行う際には、これまで以上に産業医との連携をしっかり行うことが重要です。オンラインで衛生委員会を開催する場合は、委員が同じ空間で顔を合わせることなく、テレビ会議システムなどで議題を協議することになります。そのことにより、職場によっては、委員が活発な意見を出しにくくなったり、職場訪問する機会が減ることで、委員に現場の課題が伝わらなくなったりすることが起きるかもしれません。また、産業医による面接指導についても、産業医が相手のしぐさや表情などをキャッチしにくくなる可能性があります。

産業保健活動のオンライン化を進める際は、要件だけに注視せず、本来の目的である「従業員の健康の保持や増進」をしっかり意識して、産業医と連携、情報共有をしていきましょう。

【記事提供:エムスリーキャリア「産業医トータルサポート」】

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