【人事担当者必見】休職に必要な手続きと対策とは?うつ病時の手当から復職対応まで

長時間労働にパワハラ、サービス残業…。ブラック企業という言葉をよく耳にする日本では、精神疾患の患者数も増加傾向にあります。

うつ病を患い、休職制度を利用する会社員も少なくありません。

本記事では、従業員がうつ病で休職する際に人事労務が知っておくべきこと、必要な手続き、復職までの流れなどを解説します。

休職とは

休職とは、労働者が業務を行うことができない何かしらの事情が生じた際、労働契約が維持されながら就業を免除もしくは禁止されることを指します。

休職という制度は、法律で定められているわけではありません。企業が独自に導入する制度であり、休職が適用される条件や期間も異なります。

つまり、休職制度そのものが存在しない職場もあるのです。

近年、うつ病などメンタル系疾患の患者数が増加

休職には様々な種類があります。
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例として、怪我や疾患の療養を目的とした「傷病休職」、業務上・通勤途上で起こった怪我や疾患による「労働災害による休職」、業務外の理由による怪我や疾患の療養目的で労働者側から申し出る「私傷病休職」などがあります。

この中でも近年は、うつ病を理由に「傷病休職」をする労働者が増加傾向にあります。
その理由は、国内でのうつ病患者が増加しているためです。

具体的には、厚生労働省の患者調査において、うつ病など気分障害により医療機関にかかっている患者数は2017年時点で約120万人を超えるとされています。

特に労働者のうつ病の要因に関していえば、長時間労働が当たり前という認識を持つ会社や、残業代未払いの会社が多いこと、さらにそれに対して文句を言えない風土が醸成され、劣悪な労働環境でも頑張ってしまう人が多いことなどが挙げられます。

従業員の健康や命を守るためには、無理をさせないことが何よりも重要です。

うつ病で休職する職員への休職手続きと、人事労務が対応すること

まずは医師の診断書を確認

職員が休職する際には、何よりもまず「医師の診断書が提出されているか」の確認が必要です。
その理由は、会社は医師の判断なしには休職を決めることができないためです。

つまり、本人が辛そうだからといって勝手に会社が休職の判断を下してはいけないのです。

医師の診断書には、病名のほか、休業を要するか、どのくらいの休業期間を要するかについて記載されている必要があります。休職の許可を出すためにも、また本人の症状の悪化を防ぐためにも、早めに受診してもらうことが大切です。

加えて、医療機関への受診については、就業規則に以下の項目を記載しておくと、後々トラブルに発展することを防げます。

  • 医師への受診を従業員の義務にする場合があること
  • 受診する医師・医療機関を指定する場合があること

休職前に確認すべきこと

従業員の休職が決まったら、以下の5つの項目を確認しましょう。

  • 休職期間
  • 給与の支払いについて
  • 社会保険料について
  • 傷病手当金などの給付金について
  • 休職中の連絡手段について

以下で、それぞれのについて詳しく解説していきます。

休職期間の確認

就業規則で認められる休職の期間を就業規則で確認しながら、職員に対して説明しましょう。

医師による診断書には必要な休養期間が記載されていますが、それはあくまで目安となります。会社としては「就業規則において最長いつまで休職が認められるのか」について説明します。

もしも、休職期間が満了する時点で寛解せず、復職して就業するのが困難であると認められた場合には、退職とするのが一般的となります。

給与の支払いについて

次に、休職中の給与について説明します。

原則として、雇用側に休職中の賃金支払い義務はありません。
しかし、就業規則で「休職中も給与を支払う」と定められている場合もあります。

就業規則に基づき、休職中の給与について話しておきましょう。

社会保険料について

給与の説明と併せて、休職中の社会保険料の扱いについても説明しましょう。

休職中であっても、職員には社会保険料の支払い義務が発生します。
また、その負担割合は、雇用側と従業員で半分ずつと法律で定められています。

ただし、休職中に無給となる場合は給与から保険料を差し引くことができないため、徴収方法を事前に話し合って決める必要があります。

例えば毎月従業員から会社に振り込んでもらう、会社が立て替えておき復職時にまとめて徴収するなどの方法が挙げられます。

傷病手当金などの給付金について

従業員に安心して休んでもらえるよう、傷病手当金についての説明は必須です。

傷病手当金とは、病気や怪我のために働けなくなったときに、本人とその家族の生活のためにもらえるお金です。病気が原因で「4日」以上仕事を休んだ場合には、最長で「1年6か月」の間、給与額のおよそ「3分の2」にあたる金額が健康保険から支給されると決められています。

傷病手当金を受け取るための条件は、以下の4つがあります。

  •   社会保険に加入している
  •   怪我や病気で働けない
  •   連続して4日以上仕事を休んでいる
  •   休職中に会社から給料が支払われていない

従業員が休職中に経済的に困窮してしまうと、無理に早期の復職を希望する可能性もあります。
経済的な心配をせずに休んでもらうために、必ず傷病手当制度の案内をしましょう。

また、もしもうつ病などが休職の原因として労災と認められた場合には労災保険を、病気によって生活や仕事などが制限されるようになった場合には障害年金を受けられる可能性もあります。

休職中の連絡方法について

休職中にどのように従業員と連絡を取るか確認しましょう。

具体的には、社内の連絡窓口や連絡の頻度、方法、連絡内容を事前に取り決めます。

例えば「上司との連絡の頻度は月1回程度、タイミングとしては主治医へ受診後、内容は治療経過報告」などです。

休職して間もない頃は、療養に専念してもらうためにも、できるだけメールや書面での必要最低限の連絡など、職員の負担にならないように配慮するとよいでしょう。

休職期間中の関わり方

職員が休職期間中に入った後は、ゆっくり休んでもらうためにも適切な距離をとることが大切です。
しかし、完全に放っておくのではなく、定期的に連絡を取ることも必要です。

休職している職員は、仕事から離れることで、会社からの疎外感や孤独感を感じやすくなります。
休職中に会社とコンタクトを取っていると、「会社とのつながり」「会社に支援してもらっている」といった安心感が醸成され、復職を見据えた療養に専念してもらえます。

また、休職中の傷病手当金や給与など、手続き上の連絡をすることで、休職中の経済的、将来的な不安を軽減することができます。

事前に取り決めた範囲で、職員の負担にならない程度に連絡を取りましょう。

復職準備期間に行うこと

休職期間を経て職員が復職を希望した場合、スムーズに仕事に戻れるように準備が必要です。

復職可能かを見極め、復帰後の働き方を提案

職員が復職を希望した場合、主治医もしくは産業医との面談を行います。
一人ひとりの状態をきちんと見極め、復職可能かの判断を下します。

メンタルヘルス不調による休職は、人によって症状の経過や回復状態が異なるためです。

復職の判断は休職の判断と同様に、産業医・主治医の判断のもと、事業主が決定します。
特に、以下の条件を満たしていると復職可能と認められやすい傾向にあります。

  •   主治医の『復職可能』の診断書
  •   最低2週間の安定した状態が保たれていることが示された生活記録表
  •   体調悪化の原因を本人が理解している
  •   体調悪化に至らない予防方法を具体的に決めている
  •   体調悪化してしまったときの具体的対応を明確に決めている

復職面談で確認しておきたいこと

職員が復職を希望した場合には、産業医も含めて面談を行います。
復職面談において確認すべきポイントは以下の5点があります。

  •   就業意欲はあるか
  •   規則正しい生活を送れているか
  •   体力は回復しているか
  •   職場への適応力がありそうか
  •   通勤できそうか

以下で詳しく解説していきます。

就業意欲はあるか

就業意欲の有無は、復職時において最も重要なチェック項目となります。

その理由は、本人が「働きたくない」と感じているのであれば、働くことはできないためです。

就業意欲というのは、「少しだけ働く意欲が湧いてきた」という程度であってはいけません。
「働きたい、やらせて下さい」という声が上がって、初めて復職の検討となります。

人事による復職面談時には、「調子はどうか、辛かったと思うが、休んで働きたい気持ちは湧いてきたか」と、職員の気持ちに寄り添いながら優しく質問してみましょう。

規則正しい生活を送れているか

復職して元の生活に戻れるかを判断するため、規則正しく生活しているかをチェックしましょう。
メンタル不調者は生活リズムが不規則であることが多い傾向にありますが、復職にあたっては、休職中に生活リズムを整える必要があります。

具体的には、「生活記録表」をつけてもらい食事や外出、読書などの活動ができるかチェックしましょう。
ぶり返しを防ぐためにも、生活リズムチェックは復職後も3〜6ヶ月続けます。

体力は回復しているか

通勤できるだけの体力が回復しているかについても確認します。
体力は、睡眠時間を目安に判断できます。

生活リズムのチェックと併せて、通勤に間に合う起床時間、就寝時間、起床時の疲れの残り具合などについて記録をつけ、客観的に把握してもらいます。

もし、寝られない日もあるというような場合は、休職の延長が必要となります。

職場への適応力がありそうか

次に、元の職場へ適応できるかどうかをチェックします。

休職に至ったケースの原因の多くは職員が適応障害を発症したこと、つまりその職員がその職場環境に適応できなかったことによります。

このようなケースにおいては、従業員のマインド、もしくは職場の環境が変わらなければならないでしょう。
休職をするだけでマインドを変えることは難しいため、人事がその人に適した職場環境を考える必要があります。

通勤できそうか

物理的に通勤が可能であるかの確認も大切です。
うつ病やパニック障害、不安障害の人は「人混みが苦手」、「人と話すのが億劫」という症状があるためです。

「前までできていただから大丈夫だろう」と安易に決めつけず、復職許可を出す前には、自宅から会社まで今までと同じ時間に来られるかを改めて確認しましょう。

うつ病で復職した職員に対して、配慮すべきこと

うつ病で休職した職員が無事復職したとしても、復職直後から前と同じように働いてもらうことは難しいものです。

次に、復職した職員に対して配慮すべきことについて紹介します。

就業上、配慮したいこと

復職時には、原則として「元の慣れた職場」へ復帰させることになります。
ただし、異動を誘因としてうつ病などを発症したケースでは、配置転換や業務転換を検討すべきです。

一人ひとりの症状や意向を汲んだうえで、最適な職場へ復帰させましょう。

また、どの職場への復帰であっても、復職直後は従業員の労働負荷を軽減し、段階的に元の業務へ戻すなどの配慮が必要になります。具体的配慮の例としては、以下が挙げられます。

  •   短時間勤務
  •   軽作業や定型業務への従事
  •   残業・深夜業務の禁止
  •   出張制限
  •   交替勤務制限限
  •   フレックスタイム制度の制限または適用

上記の工夫をしながら、徐々に元の業務を行ってもらいます。

職員の復職には、産業医の協力が必要不可欠

うつ病で休職した職員の復職には、産業医の協力が必須となります。

具体的には、職員の休職前・休職中の面談、復職可否の診断の場面において産業医の意見が重要になります。

産業医は、組織としての会社の仕組みや体質を知りながら、かつ医師として症状も見ることができるため、様々な視点から見て従業員に最も適した治療方法を提案してくれるでしょう。

例えば「問題ない、働きたい」と従業員が言っても、医師の目から見ると休ませるべきだと判断されることもあります。

本人に無理をさせて大事に至らせないためにも、産業医の協力は必要不可欠と言えます。
また、そもそも休職者を出さないためにも、日頃から産業医と連携し、従業員のメンタルヘルスに気を配ることが何より重要です。

【記事提供:エムスリーキャリア「産業医トータルサポート」】

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