常勤医師の採用見通し、約6割が「厳しい」その理由とは─医師採用白書vol.1

医療機関の経営を左右する、医師の採用。しかし、慢性的な医師不足が叫ばれる中、採用活動がうまく進捗していないという声は少なくありません。コロナ禍にも見舞われた2020年度の医師採用は、どのような状況なのでしょうか。

エムスリーキャリアが実施した常勤医師の採用活動に関するアンケート調査では、医師(経営層)を中心に345名が回答、また転職活動について医師409名が回答しました。調査の結果から、医師採用の現状と課題を読み解きます。

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目次

現時点では充足傾向でも、長期的には苦戦

2020年6月時点で、常勤医師の採用活動を「実施している」と答えた医療機関は約半数に上りました(図1)。充足傾向にある医療機関は、「やや足りないが概ね充足している」「最低限の人数は確保できている」も含めると約8割に上ります(図2)。

図1
図2

一方で、2020~2021年度の採用見通しについては、「厳しい」「やや厳しい」「どちらかというと厳しい」が合わせて約6割を占めるなど、悲観的な回答が目立ちました(図3)。

図3

規模別の傾向を見てみましょう。
診療所は、「厳しい」と回答した施設の割合こそ少ないものの、採用活動をしている施設に限ると、苦戦している割合が病院と同程度、あるいはそれ以上に高い結果になりました。また、病院では300床未満の中小病院で、大病院よりも採用活動がうまくいっていないという傾向がみてとれます(図4)。

図4

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「コロナの影響」「適切な人材は不足、不適切な人材は豊富」…なぜ採用がうまくいかないのか

「厳しい」と回答した医療機関に、自由記述で理由を聞きました(※)。コロナ禍による経営難や退職といった今年ならではの理由が多く上がったほか、「求める人材と出会うのが難しい」という声が目立ちました。
※コメントは一部編集しています。

コロナ禍

  • コロナでどうしても辞めていく医師がいるので、その穴埋めが大変
  • コロナウイルスの影響で短期研修が減りそう
  • コロナウイルスの風評被害による外来患者の減少のため
  • コロナの自粛で病院見学が従来通りに行うことが出来なかったため
  • 新型コロナウイルスの影響で人事の動きが滞っている
  • 増員のために、新規採用したいが、コロナの影響で病院経営が悪化しており、病院自体の行き先が不明な状況。採用が経営の立て直しに結びつくか、逆に経営悪化に結びつくか不透明。

マッチング

  • なかなか希望にかなう医師がいない
  • 若手医師は高度な専門医志向が強く、必ずしも地域医療のニーズと一致しない
  • 将来有望な若手や中堅が全く来ない
  • 適切な人材は不足、不適切な人材は豊富。見極めが非常に重要。
  • 要求される給与と仕事量とのバランス

医師不足

  • 医局が人を出さなくなった
  • 地方では、医師そのものが不足している
  • 派遣を求めている医局自体の医師不足。若手の、メジャー科の医師不足

その他

  • まず応募がない。
  • 現場の需要と幹部の医師採用方針がずれている
  • 条件としてまったく良くないので当然の結果だと思います
  • 当院自体の運営や設備面での問題

多くの医師が利用している転職方法とは?

常勤医師の募集背景を尋ねたところ、欠員に伴う募集が1・2位と上位を占めました。欠員による急ぎの採用ニーズが発生していることが伺える一方で、「医師の働き方改革に伴う増員」や「経営改善のための増員」など、経営課題の改善を見据え、中長期的な展望の中で採用の必要性を感じている医療機関が一定数あることがわかります(図5)。

図5(赤は欠員による募集、青は増員目的の募集)

次に、医療機関はどうやって常勤医師を確保しているのか聞きました。大学医局からの派遣以外では、知人紹介が約4割と最多、次いで人材紹介会社・求人媒体といった採用チャネルが利用されていました(図6)。

図6(複数回答)

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それでは、医師はどういった方法で転職先を探しているのでしょうか。転職時に「利用したことがある(するであろう)転職方法」を聞いたところ、以下のような結果となりました。

図7

知人紹介が最多である点は医療機関の動向とも共通しています。また、人材紹介会社や自院サイト、求人媒体など複数媒体を活用している医師が多いことがわかります。4人に1人の医師は、医療機関の採用サイトを利用、また5人に1人以上が求人媒体を活用していることから、無視できない割合の医師が自己応募で転職していることになります(図7)。一定の知名度が必要かもしれませんが、医師が自己応募できるチャネルを用意しておくことも、採用に有効と言えそうです。

次回は、採用活動時の医師と医療機関のコミュニケーションについて、どのようなギャップが生まれているのかをご紹介します。
vol.2:採用選考時のコミュニケーションに注意!医療機関と医師の認識に大きなギャップか

【調査概要】
転職活動に関するアンケート調査:2020年6月16日~27日、m3.com医師会員を対象にエムスリーキャリアが実施。
採用活動に関するアンケート調査:2020年6月27日~7月4日、m3.com医師会員を対象にエムスリーキャリアが実施。

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