【第24回】職員の愚痴・不平不満は「改善の宝庫」!―事務長の悩みは99%解決できる

本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。

あきらめていた蛍を見て感じた、ささやかな幸せ

今年は、例年よりも早く梅雨入りしましたね。いつも5月の中頃から梅雨入りまでの束の間の間、家の近くの川で飛び交う蛍を楽しみにしていましたが、「梅雨入りが早い今年は見られないかも」と諦めていました。

雨が上がったので、少し肌寒さを感じながら、久しぶりに夜空の中を歩いてみたら、数匹の蛍が飛んでいるではありませんか。「ああ、今年も見られてよかった」。些細なことにとても幸せを感じたのでした。

「世の中不公平だ」「自分は不幸せだ」と感じることもあるかもしれませんが、私は、幸せ・不幸せの量は誰しも平等だと思っています。ただ、幸せの基準、同じことでも「幸せ」と感じられるかどうかは自分次第です。気持ちが落ち込んだ時こそ、些細なできごとが嬉しく感じることもあります。不幸を嘆くよりも、自分が持つ幸せの基準をいかに柔軟に調整し、「幸せ」に近づけられるかが大事です。

職員が入職早々に愚痴ばかり…。どう対処する?

ある事務長が「最近、職場で愚痴を耳にすることが多くて困る」とこぼしました。詳しく聞くと、新入職員が入職早々に愚痴や職場の不平不満を口にしており、他の職員も少なからず影響を受けているとのことで、雰囲気もやや悪くなっているとか。皆さんの職場でも、同じようなことは起きていないでしょうか。

前回のコラムも人材がテーマでしたが、事務長やリーダーは「人」の問題で、心休まる日が少ないものです。「愚痴の内容は他愛もないが、放っておく訳にもいかないので、正直言って面倒です」。その事務長から出た本音に同感するところもあり、笑ってしまいました。

とはいえ、確かにこのまま放置しておく訳にはいきません。対策が必要です。こういうとき「こういう理由で愚痴を言っているんだろうから、こうしよう」「きっと、こうしたら改善するだろう」という「思いつき対策」「~だろう対策」をされる方が実に多いです。「思い込み対策」と言っていいかもしれません。しかし、対策を講じるには、やはり原因追及が不可欠です。

蛇口が水漏れしていたら、どうしますか?

リーダーには、ハプニングへの対応能力が求められます。

例えば……。

・蛇口が水漏れしている

この場合、まずはさしあたりの対策を講じた後、漏れの原因にアプローチし、根本的な対策を取りますよね。そうでなければ、水漏れは永久に続くことになります。

水漏れの例だと当たり前に感じられるかもしれません。しかし、人に関する問題だと日常茶飯事で面倒だと思うからか、つい応急処置として「思いつき対策」「~だろう対策」になりがちです。その後も根本的な対策まで行きつかない場合もあります。

では、先程の事務長が悩んでいた「職場に愚痴が多い環境」には、どのように対応していけばいいでしょうか。実際の対応をご紹介します。

職場の雰囲気が少し悪くなっているということでしたので、まずは応急処置。その職員の不平不満の原因を探る面談を実施しました。その面談で、上司や先輩、同僚からの指導や情報の共有・伝達がうまくいっておらず、「自分だけ知らないことがある」「聞いたことの答えが返ってこない」などへの不満が募っていたことが愚痴の原因だと分かってきました。

さらに、その職員のパーソナリティに関連する問題もありました。「自分はきちんとやれる」という自尊心と承認欲求が強いために、職場から蔑ろにされた印象を受け、「自分だったらもっときちんとやるのに」「そんな対応は許せない」という感情で不平不満を口にしていたようです。

また、影響を受けてしまった職員のフォローのための面談も速やかに実施しました。

どんなに多忙でも、トラブルが起きたときに原因追及と対策ができる余裕を

この愚痴問題のおかげで、新しく入った職員への指導、職場の情報共有や伝達に課題があることが判明しました。愚痴・不平不満は改善の宝庫です。クレーム対策とも同じですね。(私も事務長の愚痴から、コラムのネタをいただくことができました(笑))

事務長が職場の愚痴を聞いたときに、「よしよし、今度はどんな改善のヒントが見つけられるのか」という思考にできれば、職場の幸せの量は増えるかもしれません。まず大事なことは、事務長がどんなに多忙でも、問題が起きたときに、原因追及と対策ができる余裕を持つことです。

そして「愚痴は改善の宝庫」とは言いましたが、そのまま改善しなければ、愚痴を聞かされた他の職員たちへ同じような思考が広がってしまい、職場全体がネガティブな雰囲気になってしまいます。時間は、誰しも平等に1日24時間。職員が愚痴を言っているとき、患者さんや利用者さん、他の職員の時間を奪っていることも忘れないでください。

私たちの仕事は、内ではなく外へ、患者さんをはじめとする顧客に向かうべきものです。外に向かって仕事をしたときにこそ、達成感や満足感が得られるということを、事務長の態度や言葉で示していただきたいです。

このコラムを仕上げている今日は梅雨の晴れ間。朝は爽やかな気持ちいい風が吹いています。「雨降って地固まる」職場がたくさん生まれますように。

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